恋の話なのか牛の話なのか
『牛山さん』はヤンマガWebで人気のラブコメで、つまりそれは読者が期待するエロとコメディが存分に発揮されている作品ということなのだが、みんなに教えたくなる「いい話」もちょいちょいカットインされる。すごいことだと思う。
“河守くん”のクラスには“牛山さん”という女の子がいる。

背が高くて一生懸命で学校の人気者。美人で胸も大きくて吐息が湿っぽい。尻尾や耳の感じもフェティッシュだ。うん、ヤンマガっぽい。で、牛山さんをじっと見つめる河守くんは、このとき何を考えていたのか。

牛のリアルな特性から牛山さんがどんな状態なのかを読み取っていた。そう、牛山さんは牛の女の子。

真面目で頑張り屋な牛山さんが授業中にモグモグしているのも、牛の事情によるもの。エモーショナルな尻尾といい、モグモグ顔といい、とてもかわいい。
本作の人たちは全員人間のような感じだけど、動物のリアルな特性も備えている。では河守くんは何の動物なのかというと……。

コウモリ! 彼の名字「河守」は「こうもり」と読む。わかりやすい。で、河守くんは牛がどういう生き物なのかをとてもよく知っているから、コウモリの特技を使って、牛山さんのモグモグが早弁ではないことを羊の先生にだけに聞こえる周波数でコッソリ教えようとしたが……?

教室中のいろいろな動物にも聞こえていたようで、残念ながら河守くんの必死の作戦は失敗。

しかも牛も聞き取れる周波数だった! そしてなんだか吐息が熱そう。ということで生き物の諸事情とラブコメを行ったり来たりする作品だ。

コメツキムシの習性にへぇ~と思っていたら次のページでは牛山さんの乳房がぶるんぶるん揺れるので油断できない。中高生の青くスケベな日常と国立科学博物館ばりのインテリジェンスとの交代浴みたいなマンガだ。しかも1巻には24話も収められており、その24話すべてに「動物うんちく」が入っている。なんて贅沢なんだ。

パンチラと死後のカメレオンの話を同じページで味わう日が来るなんて。
どうしてそんなに近寄ってくるの?
コウモリはいろいろなウイルスの宿主でもある。新型コロナウイルスのニュースでもよく取り上げられていた。残念ながらネガティブなイメージで語られがちな存在で、河守くんもそのことを自覚している。だから河守くんは、クラスの人気者の牛山さんのことを「自分なんかとは無縁の女の子」と思っていた。「キモいと思われているだろうな。まあ、慣れてるし、嫌われてなければいいや」とすら考えていたのだ。
でも牛山さんの距離感は、相手をキモいと思っている人のそれではない。いつのまにか彼女は河守くんのすぐ隣に立っていたりする。しかもものすごく近い。

今にもベロベロと舐め回せそうな距離まで近寄り、ふうふう興奮している。湿っぽいが牛っぽい。そういえば牛の体ってこういうホカホカの湯気が立っているなあ。で、この世で起きるすべてのことをエロと結びつけてしまいそうなティーンエイジャー男子であるにも関わらず、河守くんは「自分と牛山さんなんて一生関わることがない」と思い込んで生きてきたから、ここまで高湿度なシチュエーションを牛の視力の事情で片づけている。
このとき牛山さんは「お礼をしたい」と言っていた。河守くんは牛山さんにとても親切なのだ。コウモリの特性を生かして消しゴムをキャッチしてあげたり、落とし物を見つけてあげたり。つまり牛山さんは河守くんの優しさに気づいている。

近いというか濃厚だ。病原菌のイメージなんて一切おかまいなし。牛山さんがこんななのは、牛の事情だけじゃないと思うよ! ところで、これはベロンベロンでグショグショな濡れ場だが、同時に牛がベロンベロンに舐め回している絵でもあるわけで、ついニッコリしてしまう。
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(レビュアー:花森リド)
- 牛山さん volume 1
- 著者:相沢春芳
- 発売日:2026年03月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784065425053
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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年4月24日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。

