奇祭で町を救う? 勢いで突き進む神社再生エンタメ
不死鳥は、本来“死なない鳥”です。
炎の中で灰となり、そこから再びよみがえる――そんな再生の象徴として語られてきました。
では、その不死鳥を「殺す」祭りがあるとしたら、一体どんな祭りなのでしょうか。
2026年2月20日に第1巻が発売された、須賀晶先生の最新作『不死鳥殺し』。本作は、そんな強烈な名前の奇祭をめぐる物語です。
主人公は、東京で保険外交員として働くバリキャリの宮本飛鳥。祖父・繁から「兄の聡一が失踪した」と連絡を受け、久しぶりに地元へ戻ることになります。すると祖父から、実家の神社を継いでほしいと懇願されるのでした。


しかし、飛鳥は「地元に自分の居場所はない」と家を出た身。神社を継ぐつもりなどまったくありません。ところが祖父の「神社の様子がおかしい」という言葉に引っかかり、ひとまず様子を見ることにします。

神社に行ってみると、シロアリの被害が広がっているうえ、宗教法人格を譲るよう迫る怪しい不動産業者まで現れます。想像していた以上に、状況は深刻でした。

祖父の教え子である亜川十三と対抗策を探る中で、飛鳥はこの地でかつて行われていた奇祭「不死鳥殺し」の存在を知ります。そして、衰退していく神社と町を立て直す起爆剤として、その祭りを復活させることを宣言するのでした。


実写ドラマのようなテンポの良さ
この作品の魅力のひとつは、なんといってもそのテンポの良さです。
飛鳥の勢いに引っ張られるように物語はぐんぐん前へ進み、読者もその流れに乗って一気に読み進めてしまいます。神社の存続問題や不動産業者との対立など、扱っているテーマは決して軽くありません。
それでも物語が重くなりすぎないのは、要所要所に挟まれるコミカルなやり取りや“ずっこけ”のようなオチのおかげ。緊張と笑いのバランスが心地よく、肩の力を抜いて楽しめるエンタメになっています。


作者コメントにある
人生を賭けて描いておりますので、面白おかしく読んでもらえましたら、そんなに嬉しいことはございません!
という言葉も、この作品の空気そのものだと感じました。
“三河武士”の血を引く主人公・飛鳥
もうひとつ大きな魅力なのが、主人公・飛鳥のキャラクターです。
彼女は作中でも「超生粋の三河武士の末裔」と語られています。三河武士といえば、粘り強く、気性が強く、そして一度決めたら突き進む武士たち。その気質をそのまま受け継いだかのように、飛鳥は勢いと男気で次々と問題に立ち向かっていきます。

神社を守るため、町を盛り上げるため、真正面から突き進んでいく姿はとても頼もしい。人情味もあり、読んでいるうちに自然と「頑張れ」と応援したくなる主人公です。

結末が見えているからこそ面白い
個人的に面白いと感じたのは、この物語が“結末が見えているタイプの作品”だということです。奇祭「不死鳥殺し」が復活し、人が集まり、寂れた町が再び賑わいを取り戻す。そんな未来が、読んでいると自然と想像できます。
けれど、この作品の面白さはまさにそこにあります。ゴールが見えているからこそ、その場所にどうたどり着くのかが気になって仕方がない。飛鳥たちがどんな困難に立ち向かい、どんな方法で神社と町を再生させていくのか。その過程を見守りたくなるのです。
ちなみに「奇祭」とは、珍しい儀式や強いインパクトを持つ祭りを指す言葉。日本にも裸祭りや火祭りなど、独特な風習を持つ祭りは数多く存在します。
作中で「老若男女が踊り狂い 夜明けとともに神を斬る」と表現される「不死鳥殺し」。この祭りが現代によみがえったとき、どんな“奇祭”として描かれるのか、想像するだけで楽しみになってしまいます。
「不死鳥」という名前が示すものとは
タイトルにもなっている「不死鳥」は、言うまでもなく“再生”の象徴です。
神社の再生。
町の再生。
そして飛鳥自身の人生の再出発。
そのすべてが、奇祭「不死鳥殺し」の復活とともに動き出していく予感があります。
まだ物語は始まったばかりですが、飛鳥が宣言した奇祭復活のその瞬間を、ぜひこの目で見届けたい。祭りが立ち上がり、人が集まり、町に再び活気が戻る――そんな光景を想像するだけで、続きが楽しみになってしまいます。
勢いと人情で突き進む神社再生エンタメ『不死鳥殺し』。
奇祭がよみがえるその瞬間を、ぜひこの目で見届けたい一作です。
*
(レビュアー:Micha)
- 不死鳥殺し 1
- 著者:須賀晶
- 発売日:2026年02月
- 発行所:講談社
- 価格:869円(税込)
- ISBNコード:9784065423257
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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(書籍)に2026年3月22日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。

