雅代の間借り鮨、今回は悩める若者たちの前に登場。雅代が彼らに伝えたい思いとは……
見た目はぽっちゃり丸顔のほほんおばちゃん、その正体は凄腕の鮨職人。全国各地の飲食店に間借りして鮨屋「鮨まさよ」を開き、そこで出会った悩める人々の胃袋と心を満たしていくシリーズの第3弾だ。
今回は3篇が収録されている。料理学校でフレンチを学んでいるがそのフレンチが肌に合わず、雅代に弟子入りしたいと考える女子学生・玲菜。山形県酒田市で実家が営むラーメン屋が、あるきっかけで暴走していることを知って悩む大学4年生の息子・謙吾。父が急死し、祖父の代からの鮨屋をどうするか岐路に立たされるアパレル勤務の娘・野乃花。
これまで第1巻では経営者や経営者候補の物語、第2巻では客の物語が中心に展開されてきた。そして今回は後継者のターンだ。それも、最初から後継者の話というわけではなく、主人公はどれも別の進路に向かっていた若者たちだ。彼女たちが何に出会い、何を感じ、何を考え、何を決意するのか。その過程に本書の読みどころがある。
そんななか登場するのが雅代だ。フレンチよりも鮨、雅代さんみたいなカッコイイ職人になる、と張り切る玲菜に雅代が課した条件。父の弟子が独立して開いたラーメン屋が好評で、その代わりのように父の店が凋落していく様子を目の当たりにした謙吾に、雅代がかけた言葉。そして他人に任せた店が父の頃の店とはまったく違うものに変化したことに憤る野乃花に、雅代が出した提案と手助け。
最終的に決めるのは若者たちだが、雅代は彼らをそっと後押しする。それはただの親切ではなく、自分もまたそうやって多くの先達に導かれ、応援され、背中を押されて今日があるからだ。本書にはそんな雅代の思いが滲み出ている。
受け継がれていくのは店や味だけではない。助けられ、導かれ、応援された者が、また次の世代の誰かを助け、導き、応援するのだ。そんな恩送りでこの世はできている。それを思い出させる第3巻である。
書誌情報
- のほほん人生
- 著者:原宏一
- 発売日:2026年02月
- 発行所:双葉社
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784575248692
■シリーズ1作目
- 間借り鮨まさよ
- 著者:原宏一
- 発売日:2026年01月
- 発行所:双葉社
- 価格:935円(税込)
- ISBNコード:9784575528978
■シリーズ2作目
- 同居鮨
- 著者:原宏一
- 発売日:2024年05月
- 発行所:双葉社
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784575247435
著者プロフィール
原宏一(はら・こういち)
1954年長野県生まれ。茨城県育ち。早稲田大学創業後、コピーライターを経て、1997年『かつどん協議会』でデビュー。書店員の熱心な応援により、2001年に文庫化された『床下仙人』が、2007年にベストセラーに。同書は啓文堂書店おすすめ文庫大賞にも選ばれた。2016年「ヤッさん」シリーズがテレビドラマ化。その他の作品に「佳代のキッチン」「閉店屋五郎」の各シリーズ、『握る男』『星をつける女』『ねじれびと』『うたかた姫』などがある。



