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「会う」と「合う」が重なる奇跡―― 思い出の動画を辿り、失われた絆を築き直す再生とミステリ|『君が失くした「恋」の相手』伴田音

『君が失くした「恋」の相手』伴田音

大切なひとと「会い」、「合う」ことによって築いていく唯一無二の関係性

仕事やプライベートで初めて会った相手と、なかなか話が合わないときがある。逆に気が合うにもかかわらず、何らかの事情で会えない相手がいる。そう思うと、現実で親密な人間関係を結ぶのは難しい。この広い地球で会うことができた、その偶然を経たうえで、気が合わなければいけないのだから。「会う」と「合う」、2つの「あう」を達成できるのは、奇跡といってもいい。

日比谷純の恋人、北條あゆみが山奥で発見されたのは、同棲をはじめて2年が経ったころ。純が会社の企画コンペのコンテを彼女に見せて、コンテ中に書かれている〈いま合いたい〉の「合う」は誤字だと指摘された、その翌日だった。純はあゆみのいる病院にすぐさま駆けつけるものの、あゆみは記憶を失っていると医師から告げられる。

記憶を失ってしまった恋人が、もういちど自分を好きになることはあるのだろうか――ふたたび気が「合う」ことはできるのだろうか? 純は記憶を失ったあゆみとの交流を通して、ふたたび関係を築いていく。鍵となるのはあゆみが撮っていた、純と2人の思い出を記録した動画だ。純とあゆみは動画の場所を訪れて、当時のデートコースをなるべく再現することで、記憶を取り戻すための手掛かりを摑もうとする。

ここで2人が頼る動画は、親密な関係を築いてきた記録といえるだろう。しかし、それだけではない。2人にとって動画とは、過去の自分と会うための手段でもあるのだ。そして2人は過去の自分たちがとった行動をなぞって、合うかどうかを確かめていく。それは会う/合うを通じて過去の自分を見つめなおし、親密な関係を結ぼうとする行為でもあるだろう。純はあゆみと関係を築いていくだけでなく、過去に囚われた自分とも向き合い、成長していくのだ。

また、この物語は2人が会う/合うを達成していく記録でありつつ、なぜあゆみが記憶を失ったのかをめぐるミステリでもある。最後まで気が抜けない物語と、ぜひ出合ってほしい。

 

書誌情報

君が失くした「恋」の相手
著者:伴田音
発売日:2026年01月
発行所:双葉社
価格:847円(税込)
ISBNコード:9784575528992

 

試し読み

双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」にて、『君が失くした「恋」の相手』の試し読みが公開されています。

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著者プロフィール

伴田音(はんだ・おと)

1993年生まれ。神奈川県出身。別名義でラノベ文芸の作品を複数刊行している。第6回双葉文庫ルーキー大賞を『彼女が遺したミステリ』で受賞した。

 
『小説推理』(双葉社)2026年3月号より転載