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知念実希人、初のバイオ・ホラー!謎の生物“ヨモツイクサ”の正体とは?!|『ヨモツイクサ』

知念実希人 ヨモツイクサ

黄泉の森には気をつけろ。“ヨモツイクサ”と呼ばれる何かがいる。人気作家・知念実希人が初めて挑んだバイオ・ホラーは、恐怖と驚きに満ちている。


天才医師を探偵役にした「天久鷹央」シリーズ、映画化された『仮面病棟』、「新本格」への愛を爆発させた『硝子の塔の殺人』などの作品で、知念実希人は何度も読者を驚かせてきた。作者初のバイオ・ホラーである本書も、恐怖だけでなく、ミステリーの驚きに満ちている。新たな領域に挑みながら、作者らしさの発揮された秀作といえるだろう。

北海道の大雪山国立公園に近い山奥で、リゾート施設の工事をしていた6人の作業員が消えた。現場は“ヨモツイクサ”と呼ばれる『何か』がいるという禁域・黄泉の森だ。道央大学医学部付属病院の外科医局に所属している佐原茜は、この事件のことを、旭川東警察署の小此木劉生から知らされる。それには理由があった。今回の神隠し事件の近場で、7年前に『美瑛町一家神隠し事件』が起きていたのだ。消えたのは茜の家族である。そして家族のひとりで、茜の姉で警官の椿は、小此木の婚約者であったのだ。

警察は、今回の神隠し事件を羆の仕業と考え、猟友会と刑事を派遣。その中に、茜と縁の深い、羆猟を生業とする鍛冶誠司もいた。アサヒと呼ばれるヒグマを追う鍛冶も、重い過去を抱えているらしい。やがて小此木と鍛冶は、黄泉の森で、思いもかけない事態に遭遇する。

というストーリーは、ここから予想外の連続になる。何も知らないで読むのが一番いいので詳しく書かないが、第2章で病院がメインの舞台になると、一気にバイオ・ホラー度が増す。新たな科学や医学の知識を使って、正体不明のヨモツイクサに迫っていく過程は、心の底からワクワクさせられる。一方で、物語に流れる不気味な圧迫感と、物理的な脅威は特筆もの。これは怖い、怖すぎる。まさに新時代のバイオ・ホラーなのだ。

さらに第3章で、再び黄泉の森がメインになると、茜・鍛冶・小此木の3人と、ヨモツイクサの激しい戦いに突入する。羆よりも凶悪な相手と、死闘を繰り広げるのだ。驚くべきは、その合間に、謎解きが行われること。ああ、本書はバイオ・ホラーであると同時に、特殊設定ミステリーでもあったのか。ホラーとミステリー、どちらのジャンル読者も満足できる、ハイブリッドな作品なのだ。

と感心していたら、最後の最後に、特大のサプライズが控えていた。実は途中の展開に、ちょっと引っ掛かる部分があったのだが、きちんとした理由があったとは! 知念実希人、やはりとんでもない作家である。


ヨモツイクサ
著者:知念実希人
発売日:2023年5月
発行所:双葉社
価格:1,848円(税込)
ISBN:9784575246315


双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」にて著者・知念実希人さんのインタビューと、『ヨモツイクサ』の試し読みが公開されています。

著者・知念実希人さんのインタビュー記事はこちら

『ヨモツイクサ』の試し読みはこちら

『小説推理』(双葉社)2023年7月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載