役満、ではなくヤクザのマンガ家、略して……
加瀬あつし大先生の新作である。週刊少年マガジンで連載された『カメレオン』や『ジゴロ次五郎』から、前作『くろアゲハ』(月刊少年マガジン)まで、常に第一線で描き続け、「マガジン」ブランドの不良性感度を支えてきたヤンキー漫画界の大黒柱! そんな加瀬先生がペンから液タブ、フルデジタルに移行し、挑むのがこの『ヤクマン』だ。
主人公は飛猿組の看板にして若頭補佐、花咲楓。

今宵もチンピラを左手一本でぶっ飛ばし、助けた女に「どっかでシャワー浴びたいな(ハートマーク)」なんて言われても、袖にする、裏社会では武闘派の女嫌いで通ったヤクザ。なぜなら……


……というわけだ。
大学で漫研の部長をしている従兄弟の宮島恋鳥をアシスタントに、今日もキツい〆切りを乗り越え入稿完了!
なぜ楓(=めいぷる先生)は萌え漫画を描くのか?
曰く、「極道は、暴力とゆすりたかりの汚れた稼業。だから暴力もエロもイヤなヤツもいない無垢な天使達のやさしい世界を描くことが、オレを人の道から外さねぇ命綱」と、精進している。しかし、もし自分が人気萌え漫画家だと知られたら、組に泥を塗ったも同然。二度と漫画を描けないように両手を潰されるか、石を抱かされて没ダム宣言。
冗談じゃねー
原稿落とす前に命落としてたまっか~~~!
ぜってーヘタは踏まねー!
なのだ! そんな彼が、いかに身バレしないようにヤクザ稼業を続けるかを描いた、ドッタンバッタンのギャグコメディ。それが『ヤクマン』なのだ。
立ちすぎキャラとギャグの応酬
そんな事情を抱えた楓のまわりは、ヤバい人が渋滞を起こしている状態だ。
一番ヤバいのは猿飛組の若頭、西田春樹アニィ。

オヤジギャグ連打、なにかと無理難題を楓に押し付ける厄介なヤクザだ。
そして猿飛組の組長・飛猿龍雪は、息子のシュン君を溺愛する任侠ヤクザ。その愛するシュン君が、こともあろうか、めいぷる先生の漫画にハマって“萌えブタの引き籠もりオタク”(原文ママ)になってしまい、組長は怒り心頭!

しかも、シュン君は同人活動もしていて、めぐりんの二次創作を描いているのだが……

容赦ないワンパンをシュン君にぶち込んで
親の気持ちも知らねー外道が
生まれ直してこい!
組長の心と、漫画の生みの親の心。ダブルの意味で魂の咆哮!
(ちなみに組長は事あるごとに、人生最後の懲役と引き換えに、めいぷるに天誅を下そうとする)
ほかにも、ヘタレの二人組舎弟・真琴とペドロなど、(加瀬あつし先生にはいつものことだが)立ちすぎたキャラが次から次へと現れる。
そして加瀬あつし先生といえば、ギャグ! この令和のコンプラはびこる時代に、徹底して下品でエロなギャグを振りまいて、とっくに蓋をしたはずの中坊スピリッツを疼かせる! たとえば、こんな小さな吹き出しにも、

なにしろ、劇中でめいぷる先生が描いている漫画のタイトルが『転生したら屁負い比丘尼だった件』なのである。この漫画の主人公めぐりん(目黒凛)は、田原坂46(←超・血なまぐさいアイドルグループ名!)のアイドル。野外フェスで雷が直撃して江戸時代風異世界に転生し、屁負い比丘尼となる。屁負い比丘尼とは、姫が放屁したときに「私がコキました」と身代わりになって面子を守るという(恐るべきことに実在した)職業である。数々の恥辱にまみれながら、めぐりんは異世界で生きていく……って、最低で最高な話だな、オイ!
また組長の号令一下、なかなか正体がつかめないめいぷる先生の評判を下げようと、SNSで拡散させようとするのが、楓が新年会で見せた隠し芸の画像!

ボッ◯ザロックって!
ファンが怖くて、迂闊に突っ込めねぇ!
さて物語は、これまで人前に姿を出してこなかっためいぷる先生が、頓珍漢な担当編集・河﨑花蓮さんの勘違いによりサイン会を開催することになってしまう。「これぞ好機」と組長が、めいぷる先生のタマを狙うのだが……、と早くも大きな盛り上がりを見せている。そうだった! 加瀬あつし先生の漫画は、危機一髪の状況から天井知らずのインフレスパイラル展開が面白いのだ。ここからが真骨頂! さて、どうなる!?
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(レビュアー:嶋津善之)
- ヤクマン 1
- 著者:加瀬あつし
- 発売日:2025年12月
- 発行所:講談社
- 価格:594円(税込)
- ISBNコード:9784065415283
※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年1月28日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。

