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【編集長雑記】「LEE」編集長:読者に寄り添い歩んだ、創刊40周年!

LEE

各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。

今回エッセイをお寄せいただいたのは、1983年に創刊し、今年で40周年を迎えた「LEE」編集長の喜多佳子さんです。

「日々のおしゃれも暮らしも心地よく」をキャッチコピーに、悩める読者に寄り添った企画を提案し続けている「LEE」。そんな「LEE」に、入社以来、長年携わっている喜多さんに、新人時代の苦悩や現在までの歴史を振り返るとともに、読者への想いについても綴っていただきました。

 

LEE 2023年8.9月合併号
発売日:2023年7月7日
発行所:集英社
価格:790円(税込)
JANコード:4910013810939

 

暮らしのスターもヒット企画もすべて読者の声から!「LEE」創刊40周年に思うこと。

1998年、憧れの映画雑誌に関わりたくて集英社に入社しました。配属されたのは、20代前半の新人にはまだまだ遠い存在だった「LEE」。その頃の「LEE」は、20代後半からの既婚女性たちに「上質で丁寧なおしゃれと暮らし」を提言していました。大学を卒業したばかりで、右も左も分からない新人に、その読者層が掴めるはずもなく戸惑いばかり。特に難解だったのが、先輩やスタイリストさんが言う「それって、LEEっぽいよね」というフレーズでした。「LEEっぽい」、「LEEらしさ」……。「LEE」という雑誌名は、なぜかそれが暗黙の了解のように、形容詞的に使われていました。ファッションでは、ボーダーやデニムに代表されるフレンチカジュアルが定番化。私も先輩たちのように早く“LEEっぽく”ならなければ!と焦り、初めて「セントジェームス」のボーダーを着たとき、少し大人になれた気がしました(笑)。

暮らしでは食卓に花を飾り、子どもにおやつを作り、整理収納もこまめにして、好きな雑貨に囲まれて……。2000年前後は専業主婦の読者が多く、家時間を素敵に楽しみたいというニーズに応えて、少し余裕を感じさせるライフスタイルを体現していたかもしれません。

1983年に「ライフ・エンジョイング・マガジン」として創刊した「LEE」は、今年40周年。振り返るとその歴史は常に読者からの声で人気に火がついた、「暮らしのスター」たちとともにありました。

創刊3年目の1985年は、栗原はるみさんが登場。それまでの料理レシピといえば、専門的に学んだ人ばかりのレシピが主流だった頃に、栗原さんが家族のために作っている家庭料理が読者に支持され、それ以来38年にわたって登場していただいています。

1999年には、モデルでデザイナーの雅姫さんの暮らしが初登場。その時の読者からいただいた問い合わせの多さも、忘れられない出来事の一つです。自宅のインテリアやガーデニング、手作りのおやつなど毎号のようにその暮らしを特集。「雅姫さんが紹介する雑貨がどこで買えるのか……?」読者からの電話に応対する日々でした。雅姫さんの著書も、「LEE」から何冊も刊行されました。『「スローな暮らし」の小さな幸せ』(2004年刊 ※現在は販売されていません)では、編集担当として雅姫さんのイギリス旅に同行。蚤の市で、雅姫さんを真似してアンティークの缶やリネン、ハンガーなどの雑貨を購入し、なんとなく自分も“LEEっぽさ”を習得していくような気持ちになったのを覚えています。

ほかにも料理家のケンタロウさん、スタイリストの伊藤まさこさんなど、読者の「もっと見たい!」という声から生まれたスターたちがたくさんいました。伊藤さんは、最初に娘さんと登場した小さなインテリアのルポページに問い合わせが相次ぎ、連載につながりました。入社数年目でまだまだ経験の浅い頃、そんなスターたちとたくさん仕事をさせていただき、彼らが読者に支持される理由を目の当たりにし、多くを学ばせてもらったことは編集者として大きな糧になったように思います。

「読者からいただいた問い合わせの電話の際、子どもの泣き声が後ろから聞こえてきた」――子育てに忙しく、自分の時間がなかなか持てないママたちの実情に気づき、自宅で買い物が楽しめるようにと、誌面に掲載されたアイテムが通販で購入できるシステムを導入した先駆けとなりました。2006年には“LEEのプチデパート”として、「LEEマルシェ」をオープン。現在では、「12closet」というオリジナルブランドの売り上げも絶好調です。

2007年には読者ブロガー組織「LEE100人隊」が立ち上がったことで、読者発信の等身大のおしゃれと暮らしに焦点があたるようになりました。「LEEweb」での彼女たちの「お買い物日記」からヒットが生まれることも多数あり、今では月間3,454万PV(2023年5月・集英社調べ)を誇るサイトへと成長しました。100人隊の声は、企画を考える上でなくてはならない存在です。

読者のライフスタイルが多様化する今、ヒアリングからわかったのは、「LEE」に求めるのは、妻でも母でもない肩書きを超えた心地良さ。“好き”を共感できたり、1日の終わりにホッとできる場所であること。「年齢やライフスタイルに関わらず一生愛せる」を基本方針に企画を考えています。

新人の頃からの問いである「LEEっぽさって何?」の答えは一口では表現できないけど、おしゃれも暮らしも他人と比べることなく「心地いいこと」が軸。これまでがそうであったように、読者の声に寄り添っていれば自ずとスターも生まれるし、ヒット企画も生まれる。そう信じて、今後も邁進していきます!

 

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集英社 LEEブランド統括・本誌編集長
喜多佳子 KITA Yoshiko
京都出身。1998年LEEに配属後、料理、インテリア、暮らし等、主にライフページを担当。2021年6月にLEE編集長就任。中学生の息子の母。