8月12日(金)より順次、全国約600書店にて配布が開始されたBLコミックガイド「B+LIBRARY(ビープラスライブラリー)」vol.12。
表紙は、8月19日(金)に最新8巻が発売される人気BLコミック『ブルースカイコンプレックス』の豪華描き下ろしイラストが飾りました。
巻頭には、『ブルースカイコンプレックス』の著者・市川けいさんのインタビュー記事を掲載。ご自身の作品への想いや描き下ろしイラスト、市川さんのこれまでの作品を紹介しています。
「ほんのひきだし」では、「B+LIBRARY」vol.12に掲載しきれなかった内容も含めて紹介します。
市川けい
2010年『Citron Vol.5』(リブレ)にてデビュー。2012年には、初の単行本『スロースターター』(リブレ)を発売。その後も精力的に執筆活動を続け、2014年発売の『ブルースカイコンプレックス』(東京漫画社)で人気を不動のものにする。
2021年に第7巻が発売された「ブルースカイコンプレックス」シリーズは、英語・中国語・韓国語・スペイン語などに翻訳され、世界中のBLファンに愛されている。
商業BLは「じゃあいっちょ挑戦してみるか!」が始まり
――商業BL作家としてデビューするに至った経緯や、そのときの心境をお聞かせください。
元々は趣味として二次創作同人誌の制作をしていて、その同人誌を手に取ってくださった出版社の編集者さんから、メールで「オリジナルのBL漫画を描いてみないか」と誘われたことがきっかけです。
それまではオリジナルキャラの漫画をしっかり真剣に考えて描いたことが一度もありませんでしたので、そんなことが自分に可能なのか、と戸惑いました。さらに漫画を仕事にしてしまうと漫画を描くという行為が苦しくなったり、嫌いになったりする可能性があるのではないか、などとしばらく悩んでいました。それでも、市川のBL漫画が多少は「需要あるかも」と判断して編集者さんが誘ってくれたのがうれしくて、「じゃあいっちょ挑戦してみるか!」と腹をくくって、最初の読切作品を描かせていただいた、というのがデビューまでの経緯ですね。
創作における影響はドラマ「木更津キャッツアイ」から
――お好きなものや創作に影響を与えていると思うものについてお聞かせください。
漫画は子どもの頃から大好きでよく読んでいました。『ドラえもん』『あさりちゃん』あたりから始まり、「ジャンプ」系や「花とゆめ」系などに進み、そこからさらに色々……みたいな感じです。
漫画以外だとゲームが大好きで、最近やったゲームだと「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」にアホほどハマりました。超楽しい。
創作においては、「木更津キャッツアイ」というドラマから一番影響を受けていると自覚しています。男子同士のアホなやりとりとか、会話のノリとか、すごく影響を受けているんだろうなあ、と。
あとは、主人公の“ぶっさん”が余命半年という設定で、それだけを聞いたら「お涙頂戴系なのかな?」と想像してしまいそうなところです。しかし、シリアスに描く部分はそう描きながらも、それ以外はいい意味で軽薄に「普通に楽しく過ごそう!」というストーリーと、キャラクターたちに惹かれて止みませんでした。いまでもドラマというジャンルにおいては、ぶっちぎりで大好きな作品です。
何事においても「バランスとメリハリ」が大事
――原稿作業中に欠かせないものはありますか?
基本的に音楽は必須ですね。その時の流行っているアルバムを飽きるまで聴きちぎります。ゲーム実況も好きです。自分でクリア済みのゲームの実況を好んでよく見ています。
あと必須なものは、小腹が空いたとき用に「カカオ70%チョコ」と「森○のラムネ」かな。昔はガムが必須だったんですけど、2年前に歯の詰め物が取れて以来噛んでないです。歯の治療はもう終わったんです。そろそろ、ガム、嚙みたいんですよ、ガム。噛んでないなぁ、ガム……。
――原稿作業の気分転換にされていることはありますか?
作業の合間というより、作業と作業の合間に気分転換として買い物兼散歩に行くことは多いです。
あと大きい〆切を越えたタイミングでやりたいゲームがあったら、1週間くらい食う寝る時間を惜しんで没頭します。
――作品を描くにあたり、大切にされていることはありますか?
キャラメイクとしては、「いそうなキャラ」にしたい(いる、に非ず)ということですかね。設定や性格などは漫画のキャラなので、現実世界との兼ね合いなどはそこまでガチガチには気にしません。その代わりに、「話し方」「会話の流れ」「考え方」「仕草」など、多方面からアプローチできるキャラ表現においては、できるだけリアリティが出るように自然な立ち振る舞いをさせたいな、とは考えています。
あとはストーリーや作画、何事においてもバランスですね。あとメリハリ。このふたつは本当に大事。標語にしています、「バランスとメリハリ」。
『ブルースカイコンプレックス』第3巻ラスト付近のシーンが特に印象的
――これまでのお仕事を振り返って、特に思い入れのある作品や、シーン、キャラクターについてお聞かせください。
長い間連載しているのもあって『ブルースカイコンプレックス』が多くなってしまうんですが、特に印象的なのは第3巻のラスト付近で、楢崎が寺島に一緒に暮らそうと伝えるシーン。ここは(少なくともこの段階では)感情薄めに見える楢崎がどんな顔でその言葉を寺島に伝えるのかがなかなか想像つかなかったので苦労しました。
あとは第3巻のピアスをちぎるくだりはずっと描きたかったエピソードで、描いていてすごく楽しかったので思い出深いですね。
そして第5巻での希星と楢崎の最後のやりとりと、その直後の楢崎と寺島のやりとり。これはわたしのなかの「BL観」というか想いめいたものも色々込めてしまったので、どうしたら納得のいくかたちで表現できるのか、ネームにすごく苦労したのとでとても印象に残っています。
『ブルースカイコンプレックス』以外だと『スロースターター』のキヨとイノはやっぱり他とは違うかたちの思い入れがあるかもです。あとは『ナチュラチュラリィ』のかなさんかな。
――『ブルースカイコンプレックス』は初の長期連載作品ですが、それゆえの苦労や面白さなどがあればお聞かせください。
物理的な苦労でいうと、(本当にありがたいことですが)第3巻以降のコミックスはすべて通常版と小冊子のつく特装版を発行してもらえているんですが、そうなると1冊のコミックス作業のたびに本のカバーイラストを3つは描くので、「案や構図をひねり出すのが大変!」ってことですかね。第7巻までの時点で17枚も描いているんです。「構図ももう頭打ちだよ!」って毎度思うんですが、それを乗り越えるたびになにかこう……(経験値的な意味で)強くなれている感はあるので、そこも含めて本当にありがたいことだなとは思っています!
話の面においては、キャラの内面や魅力、キャラ同士の関係性などについてゆっくり時間をかけて描けるということが最大の魅力かな、と思います。同時に大変でもあるんですが、それ以上にやり甲斐があると思っています。大変だけど楽しいです。
表紙描き下ろしイラストから「ブルスカ」のふたりの読書傾向が……!?
――「B+LIBRARY」vol.12の表紙を飾る『ブルースカイコンプレックス』の描き下ろしイラストについて、場面設定はありますか?
屋内でふたりが各々好きなことをしながらだらだら……みたいな感じの作品です。
――イラスト内で楢崎くんは伊坂幸太郎さんの『死神の精度』を手に持っているようですが、楢崎くん・寺島くんともに好きなジャンルや作家、作品などがあればお聞かせください。
楢崎は文字なら興味さえ惹かれればわりとなんでも読みます。寺島はノンフィクションとか好んでそう。『フェルマーの最終定理』とかはふたりとも超好きそうな気がします。
ちなみに今回の描き下ろしイラストの向かって右側に置いてある黒いハードカバーの本は『サピエンス全史』のつもりでした。『サピエンス全史』のカバーデザインと今回のイラストの構図の都合上、真っ黒になってしまってまったくわかりませんが……笑。
今後チャレンジしたいテーマは盛りだくさん!!
――お好きなジャンルや設定はありますか?
年齢、世界観などにおける設定(学生、社会人、ファンタジーなど)以外では、BLにおけるジャンルみたいなものを意識しながら描いたことがあんまりないんですよね。描くときは「こういうキャラとこういうキャラが恋したら素敵やん……?」ってところでいつも考えちゃうので……。
SF(すこしふしぎ)話を描くのは結構好きです! 『スロウデイズ』に収録されている「とりとめのない恋の詩」とか、『ナチュラチュラリィ』に収録されている「ベランダにて」、みたいな話とか!
――今後作家として挑戦してみたいことを教えてください。
「百合漫画」は、いつか描いてみたいなあとずっと思っています。描きたいです。あと男女ものも描きたいです。男子が部活しているだけの漫画も描いてみたいです。時間というかヒマは作らねば生じないので、どうにかひねり出して描きたいです。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします!
ここまで読んでいただきありがとうございました。今後またどこかでお目にかかる機会があれば嬉しいです!
「B+LIBRARY」について
「B+LIBRARY」は、キャラ属性や萌え度、ジャンルといった切り口から好きなBLコミックを探すことのできるガイドブック。BLポータルサイト「ちるちる」に投稿された10万件以上のレビューや、BLコンテンツを扱うサイトで収集されたデータをもとに作品を厳選し、「スパダリ攻め」「メガネ受け」といった設定別で掲載。「好きなジャンル」「好きな作家」「絵柄」などさまざまな切り口で作品を選ぶことができるので、新たなBLコミックと出合ったり、見逃していた作品を見つけたりするのに役立ちます。
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