ウクライナの絵本作家であるオリガ・グレベンニクさんが描いたドキュメンタリー『戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』が、9月5日(月)に発売されました。
本書は、侵攻前夜から始まる地下室での避難生活を経て、ブルガリアへ脱出するまでを描いたドキュメンタリー。韓国の出版社が4月に書籍化し、世界数か国で出版が決まっている、まさに“いま読まれるべき一冊”です。
そんな本書について、編集を担当した河出書房新社編集部の竹下純子さんにブックガイドを寄せていただきました。
- 戦争日記
- 著者:オリガ・グレベンニク 奈倉有里 渡辺麻土香 チョン・ソウン
- 発売日:2022年09月
- 発行所:河出書房新社
- 価格:1,595円(税込)
- ISBNコード:9784309208633
著者略歴
オリガ・グレベンニク
1986年、ウクライナのハリコフ(ハルキウ)生まれ。大学では建築学を専攻し、現在は絵本作家、イラストレーター、アーテストとして活動している。『ママ、怒らないで』などの絵本を出版。彼女が挿絵を描いた本はすべてベストセラーになり、イラスト作品も世界各国で人気を博す。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まる前までの彼女のプロフィールには、こんな言葉が記されていた。「わたしは今、自分が愛する仕事をしています。紙の上で生き生きと動く英雄たちがつくりだす奇跡を信じています。わたしは人生において限界ではなくチャンスを見つめます」
※本書の売上一冊につき100円がウクライナ赤十字社に寄付されます。
2人の子を持つ絵本作家が描いた戦争の現実と「戦争反対」の思い
ウクライナ侵攻直後よりスケッチ用のノートに鉛筆で描き続けた日々の記録、『戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』が発売されました。
編集する過程で繰り返しこの本を読みました。とても臨場感があるのですが、一時の感情にまかせて書いてある本ではなく、何度読んでも強く胸に迫るものがあります。
(本書p.60より)
著者のオリガ・グレベンニクさんは、その当時9歳の息子と4歳の娘を持つ35歳の絵本作家です。侵攻前夜には、マンションのリフォームのことや、子どもたちの習い事のことなど、この先の未来のことについて夫と話し合っていたそうです。そんな日々が、突然の爆撃音で一瞬にして破壊されました。地下室で8日間夜を明かした次の日、たったの10分で夫と母を国内に残して、子どもたちのために国外へ脱出する決断をします。
(本書p.92より)
地下室での暮らしや、その間のさまざまな思いや出来事を書き留めたノートからは、自分や子どもたちのことだけではなく、高齢者や妊婦、手続を手伝ってくれたロシア人などいろいろな人への眼差しがあります。また、この本を通じて、著者のオリガさんが伝えたいことは何よりもまず「戦争反対!」ということです。以下、本文から引用いたします。
わたしがこの日記を書くのは「戦争反対!」と叫ぶためである。
戦争に勝者はいない。そこにあるのは血、破壊、そしてわたしたちひとりひとりの心の中に出来た大きな穴だけだ。わたしは民族で人を分けない。人を定義するのは、民族ではなく行動だからだ。多くのロシア人が戦争に反対しているということも知っている。今わたしは国籍や民族を問わず、わたしを助けてくれる人たちと共にいる。彼らには「力」がある。戦争は終わり、そういう力を持った人たちは生き残っていくだろう。
本書が、戦争について、平和について、考えるきっかけとなりましたら幸いです。
(河出書房新社 編集部 竹下純子)