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春のように明るくキラキラした君のことを描いたら、青春が走り出した!『春くらり』

ページ数キラキラした主人公を描きたい!

『春くらり』の主人公・倉木くんは、漫画を描いてはSNSにアップしている高校生。自己肯定力、コミュニケーション能力、ともに低め。彼の漫画は画力がある分、彼の暗いエネルギーが絵に反映されて、登場人物が一様に暗い。ラブストーリーがホラーに見えてしまうような代物で、倉木くん自身「バレたが最後、末代にまで迷惑がかかる」と思っている。だけど、倉木くんだって本当は描きたいのだ。

目を逸らせないくらいキラキラした主人公を……。

そんなある日、「お代は現金のみ」のたい焼き屋の前で、倉木くんは出会ってしまう。

なんてきれいに笑うんだろう…

現金を持ち合わせていなかった彼女に、たい焼きをおごる倉木くん。

彼女の名前は春野うらら。しばしお話しをすることになったのだが、速攻で会話に詰まる!
ひねり出した話題は……。

春野さんはもしかして春生まれですか?
あっ いや お名前っ春野さん自身が春みたいで
あ これ褒めてます
春って暖かいしポカポカだし

愉快な人っていうか、ゲラだし。

彼女は、国内屈指のお嬢様学校と名高き聖ルミナ女学院の生徒。キラキラした瞳、人を惹きつける魅力にあふれる春野さんをモデルに、倉木くんは漫画を描き始める。お嬢様女子高生がヤンキー高校に入学して波乱を巻き起こす的なヤツ。でも、倉木くんの自己評価は……

流れるように筆が進んで
完成度も高くて
最悪…

喜べよ!

そんな彼を見て、おせっかいでお調子者の友人・充が、強引に倉木くんを引き連れて聖ルミナ女学院の正門前に凸! そこで春野さんが、自動車メーカーやら銀行やらを傘下に持つ春野グループの一人娘であることが判明。ザッツ格差! でも純正無菌真空パック箱入り娘の彼女は、ごく普通の男子高校生に興味津々。そして会話のなかで、倉木くんはポロッと漫画を描いていることを話してしまう。どうしても漫画を見たいという彼女に、春野さんがモデルの漫画を見せると……。

春野さん、大感激。
いつも守られ、何もかも用意されて育った自分なんてつまらない。それに比べ、漫画の中の自分はなんて自信に満ちて、キラキラしているんだろう! こんな漫画を描けるのは、倉木くんが楽しい人だからだわ、という春野さん。
そんなん言われたら……、言われたら……

そう言っちゃうわな。

 

素敵女子、春野うららさん

そう言っちゃったにもかかわらず、「やっぱり自分をモデルにした漫画なんて不愉快だったのでは」というか、「すべてはおべっかに違いない」と、会う約束をすっぽかす倉木くん。そんな後ろ向きな彼をフォローしてくれる春野さんは、マジ天使だ。

校門前で、こんな顔をして待っているけど、天使。
というか、どの春野さんも素敵。
愛しい。
非モテ系男子を殺す、いろんな春野さんを見てほしい!

初めて食べるファストフードのフライドポテトに感激する春野さん。

パンダの遊具に乗る倉木くんを見て、ゲラが発動する春野さん。

切りすぎた前髪を恥ずかしがる春野さん。
もうたまらなく可愛いのだ。その恵まれシチュエーションに、「倉木のクセに生意気だぞ!」とジャイアンばりにいちゃもんを付けたくなるほどの青春恋愛満漢全席! 青春の悶々を抱え、スクールカーストの底の方をウロウロしている現役男子高校生諸君。そして、その悶々を抱えたまま大人になった諸君。その悶々を昇華してくれるヒロインは、春野さん一択である!
あ~、癒やされるわぁ。

そんなふたりの“お付き合い”以前の関係に、影が忍び寄る。
そう! そうじゃなきゃダメ! そう簡単に、ふたりの距離が縮まるのは困る!
ふたりの関係の障害になるのは、春野さんの送迎ドライバーにして、身の回りのお目付け役・日暮さん。倉木くんが春野さんをモデルに漫画を描いていることを知って、キツい一言を放つ!

さぁ、どうする倉木くん。
「この程度の設定」って言われたぞ!
「こぉ~のぉ~て~ど」だぞ?
もう全否定だぞ?
どうする!

自己肯定力、コミュニケーション能力、ともに低めではあるが、倉木くんは誠実な人間ではあるのだ。この障害にどう立ち向かうのか? 真正面突破か? それとも姑息な手か? 次の行動を、読者は待ってる。第2巻で、待ってる!

(レビュアー:嶋津善之)

春くらり 01
著者:田口由
発売日:2025年12月
発行所:講談社
価格:792円(税込)
ISBNコード:9784065418819

※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年1月11日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。