ほんのひきだしでは、2026年1月1日(木)から、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、短期連載企画「編集者が激推し!2026年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
講談社 文芸第二出版部・大曽根幸太さんの注目作家は「朝倉宏景」さん

朝倉宏景(あさくら・ひろかげ)
1984年東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。2012年『白球アフロ』(受賞時タイトル「白球と爆弾」より改題)で、第7回小説現代新人賞奨励賞を受賞。2018年『風が吹いたり、花が散ったり』で島清恋愛文学賞を受賞。2022年『あめつちのうた』で第1回ひょうご本大賞を受賞。他の著作に『野球部ひとり』『つよく結べ、ポニーテール』『僕の母がルーズソックスを』『エール 夕暮れサウスポー』『ゴミの王国』『死念山葬』など。
今、読んでほしい「家族の答え」
正直に言います。『あの冬の流星』を「おすすめの一冊」として挙げるには、少しだけ勇気がいります。
なぜなら、描かれているのは「小児がんを患った少年とその家族」という、とても切実なテーマだからです。
ここまで読まれて、「よくある物語なのだろう」と思った方がいらっしゃるかもしれません。それでも、あえて言わせてください。年末年始のまとまった時間がある今こそ、この物語に出会ってほしいのです。
物語を生きる佐竹家は、ガサツな父に優しく見守る母、口の悪い姉、そしてサッカーが大好きな弟という、どこにでもある賑やかな一家です。旭川市でつましく生きる彼らは、ある種の郷愁を抱かせるような理想の家族に見えます。
そんな一家が直面する、「余命を本人に伝えるか、隠し通すか」という難問。
ネットで何でも検索でき、情報が氾濫する現代において、子供に「命の真実」をどう伝えるかは、実は避けては通れない課題でもあります。これまで小説ではあまり描かれてこなかった、正解のない問いです。
あまりに過酷な現実に、担当編集の私自身、心がくじけそうになる瞬間もありました。けれど、傷つきながらも懸命に悩み、ぶつかり合う家族の姿は、決して暗いだけのものではありません。「頑張れ」と応援したくなるような、温かな生命力に満ちています。
何度も悩みながら、著者の朝倉さんがたどり着いたラストシーンは、悩み迷う人への「生命賛歌」です。
「泣ける」とか「感動」という言葉だけでは伝えきれません。読み終えたあと、きっと今ある日常が少しだけ愛おしくなる。そんな、とっておきの勝負作です。
(講談社 文芸第二出版部 大曽根幸太)
- あの冬の流星
- 著者:朝倉宏景
- 発売日:2025年11月
- 発行所:講談社
- 価格:2,255円(税込)
- ISBNコード:9784065413708

