ほんのひきだしでは、2026年1月1日(木)から、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、短期連載企画「編集者が激推し!2026年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
早川書房 編集部・中島大和さんの注目作家は「川瀬美保」さん

川瀬美保(かわせ・みほ)
1966年、三重県桑名市生まれ、横浜市在住。聖心女子大学文学部卒業、同大学院修士課程修了。専攻はハプスブルク帝国近代史。訳書にベラー『フランツ・ヨーゼフとハプスブルク帝国』(共訳)がある。2025年、『ボスポラス 死者たちの海峡』(応募時タイトル『牝牛の海峡―ボスポラス』)で第15回アガサ・クリスティー賞大賞を受賞し、作家デビュー。
翻訳ミステリへの愛を捧げる鮮烈なデビュー作
アガサ・クリスティー賞は、広義のミステリを対象とした公募の新人賞です。毎年バラエティに富んだ質の高い作品が多く寄せられますが、今回もまたクリスティー賞ならではの力強い作品が誕生しました。川瀬美保さんの『ボスポラス 死者たちの海峡』です。
舞台は憂愁の都市、イスタンブール。自殺した日本人音楽家ヒデミの不可解な遺書について、オルハン・パムクを愛読するオヌール警部補、マンガ好きのジャン巡査部長、そして国際犯罪課所属のエリート刑事・セルピルの3人組が捜査をはじめます。
やがて、浮かび上がってくる在トルコ日本人コミュニティの闇。さらには、相次いで発生していた女性転落死事件との恐るべき繫がりが見えはじめ……。イスタンブール警察のある一日を描く、類をみない警察小説です。
はじめてこの作品を読んだとき、これはノーベル賞作家パムクの『わたしの名は赤』だ! と強烈なインパクトを受けました。個性豊かな刑事3人組をはじめ、多くの視点人物を自在に操りながら物語を展開させていく様はパムクを想起させ、新人作家だとは思えない筆力に圧倒されました。
著者の川瀬さんは翻訳ミステリの大ファンで、学生時代には早川書房と東京創元社の新刊を並べては「今月は早川の勝ち! 今回は創元が面白い!」と判定をくだすのが毎月の楽しみだったとか。
なかでも川瀬さんが愛読するのは英国の作家レジナルド・ヒルによる〈ダルジール警視〉シリーズ。ヒルが亡くなった時、半ば絶望の中で「自分の会いたい犯罪捜査官は、自分で創るしかない」と決意したそうです。
そんな日本のレジナルド・ヒルを目指す川瀬さんのデビュー作、ぜひお読みください!!
(早川書房 編集部 中島大和)
- ボスポラス 死者たちの海峡
- 著者:川瀬美保
- 発売日:2025年11月
- 発行所:早川書房
- 価格:2,420円(税込)
- ISBNコード:9784152104779

