芦沢央、阿津川辰海、伊吹亜門、斜線堂有紀、白井智之という、本格ミステリ大賞受賞や年間ランキング上位作家が挑むどんでん返しに騙されたい。
『斬新 THE どんでん返し』は既刊絶好調で第6弾となる実績にご注目。収録5作の読みどころはずばりこちら。
芦沢央「踏み台」の主人公みのりは、人気アイドルグループ〈風穴(カザアナ)17(セブンティーン)〉のメンバーであるが、別れた男から送られてくるしつこいメッセージに辟易していた。男から教わった麻雀を特技として、みのりはグループのオーディションに合格したこともあり無下にはできないが、今や、ストーカーと化した男にどう対処するか。アイドルとしての今後がかかる、みのりの計略とは……。
阿津川辰海「おれ以外のやつが」は双子のコンビ作家、紅森晃彦が受賞したミステリー作家協会賞の授賞式から始まる。紅森の写真を撮るため臨席しているカメラマンの水野には、殺し屋としての顔があった。水野は双子の弟にあたる人物を、授賞式当日の夜中に殺害してほしいとの密命を受けていた。水野は当夜、紅森邸に侵入し目的をはたそうとするが、予想外の事態に出くわす。
伊吹亜門「遣唐使船は西へ」の舞台は西暦837年、老僧が密室で殺された遣唐使船内である。唐へ渡海中、嵐に巻き込まれ、遣唐使船4隻中で残ったのは1隻だけだった。准判官の入舟清行が図らずも船の長となったが、曇天で方角もさだまらず、食料や水も少ない中、唐へと到着しなくてはならないのだ。一体どんな方法で、またいかなる動機で人徳ある老僧が殺されたのか。
斜線堂有紀「雌雄七色」は手紙形式ミステリーだ。亡くなった香取一花が遺した、7色からなる7通の〈虹の手紙〉を息子の潤一が発見。父親である水島潤吾へ、7通の手紙を憎悪の感情とともに送りつける。人気脚本家である潤吾に裏切られた過去のある一花は、どんな内容をつづっていたのか。手紙が徐々に読まれるにつれ、浮上してくる真相と、二度読み必至の大仕掛けは……。
白井智之「人喰館の殺人」は多重推理の魅力。土砂崩れで道が閉ざされた登山客たちが、廃屋の山荘へ避難するが、周囲は熊が徘徊する危険地帯。山荘内で元AV嬢らが巻き込まれた殺人事件が発生。客の1人である元刑事の推理により犯人と指摘された人物がいたが、当該人物は脱出を試み、元刑事とともに熊に殺される。その後残された者たちの推理は別の犯人を示すことに?
執筆者はそれぞれ、本格ミステリ大賞受賞や日本推理作家協会賞候補、年間ミステリーランキングの上位に入る。そんな作家たちに騙される衝撃をぜひ。
斬新 THE どんでん返し
著者:芦沢央/阿津川辰海/伊吹亜門/斜線堂有紀/白井智之
発売日:2023年4月
発行所:双葉社
価格:726円(税込)
ISBN:9784575526578
『小説推理』(双葉社)2023年6月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載