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国家を揺るがす巨大犯罪の影と対峙!長寿ミステリーの集大成、雫井脩介「犯人に告ぐ」シリーズ最終巻 『犯人に告ぐ4 暗幕の裂け目』

犯人に告ぐ4

神奈川県警の巻島史彦が、巨悪と対峙する。劇場型捜査を扱ったシリーズは、ついに完結を迎えた

劇場型犯罪ならぬ劇場型捜査。事件を担当する刑事が、マスコミを使って情報を求めるだけでなく、犯人にも直接呼びかける。この秀逸なアイデアを起用した雫井脩介の『犯人に告ぐ』は、大きなヒット作となり、映画化もされた。作品はシリーズ化され、第四弾となる本書で、見事に完結したのである。一発ネタとしか思えない劇場型捜査を、ここまで膨らませた作者の手腕を、大いに称揚したい。

神奈川県警の特別捜査官の巻島史彦は、部下たちと共に、大胆な犯行を繰り返す〔リップマン〕を追っていた。だが前巻で、あと一歩のところまで追い詰めながら、取り逃がしてしまう。とはいえ〔リップマン〕は、彼を使嗾していた〔ワイズマン〕の手下に襲われ生死不明。そんな状況を利用し巻島は、かつて劇場型捜査のために使った、ネット配信番組「ネッテレ」に出演し、〔ワイズマン〕の正体に迫ろうとするのだった。また、警察署内にいるスパイの〔ポリスマン〕の正体も暴こうとする。

一方、大学院の博士課程に進んだ梅本佑樹は、奨学金の返済に悩まされていた。〔リップマン〕の犯罪に下っ端としてかかわっていた梅本は、金欲しさに関係者と縁を切らなかったことから、予想外の事態に巻き込まれていく。

物語は群像ドラマの様相を呈している。警察側と犯人側だけでなく、さまざまな人物が複雑に絡み合う。横浜にカジノを誘致するIR計画や、市長選まで組み入れたストーリーが重厚だ。巻島の部下でラッキーマンの小川や、いつのまにか事件の鍵を握ることになる梅本の扱いも巧みである。

そしてシリーズを通じて厳しい捜査を強いられた巻島は、本書でも苦しむことになる。巨悪である〔ワイズマン〕と、それに群がる人々によって、捜査陣は敗北したかに見えた。ページ数も少なくなり、ドキドキしながら読んでいたら、巻島がやってくれた。だから気持ちよく、シリーズのフィナーレを堪能したのである。ああ、面白かった。

犯人に告ぐ 4
著者:雫井脩介
発売日:2025年10月
発行所:双葉社
価格:2,420円(税込)
ISBNコード:9784575248487

 

双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」にて『犯人に告ぐ4 暗幕の裂け目』の試し読みが公開されています。

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「小説推理」2025年12月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載

 

そのほかの「犯人に告ぐ」シリーズ一覧

犯人に告ぐ
著者:雫井脩介
発売日:2025年08月
発行所:双葉社
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784575528671

犯人に告ぐ 2
著者:雫井脩介
発売日:2025年09月
発行所:双葉社
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784575528732

犯人に告ぐ 3
著者:雫井脩介
発売日:2025年10月
発行所:双葉社
価格:1,430円(税込)
ISBNコード:9784575528817

 

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