数々の絵本賞を受賞した『ねことことり』(作:たてのひろし、絵:なかの真実)の続編となる最新作、『あおいことり』が10月2日(木)に発売されます。
前作は、「日本絵本賞」や「親子で読んでほしい絵本大賞」などを受賞し、多くの読者に愛されてきました。それから約3年、絵本作家・たてのひろしさんと、細密画家・なかの真実さんが再びタッグを組んだ作品です。
前作と対になる、小鳥の視点で紡がれるストーリー
本シリーズは、ある理由からこぶしの小枝を求める小鳥と、匂いがわからない猫の物語です。前作『ねことことり』と対になる本作は、小鳥の視点から紡がれ、猫や家族との“見えない絆”と未来への希望を描いたファンタジー作品です。
子どもから大人まで、幅広い世代に響く––2つの作品を通して描かれるものとは––
前作以上に、圧倒的なスケールと精緻な細密画で描かれた『あおいことり』。森に芽吹く命と希望の物語は、2つの作品を通して、世界がより豊かに広がります。
また、美しい細密画は、日本各地のフィールド取材を通して丹念に描かれました。ページの細部に宿る自然の息吹を、ぜひ実際に読んでご堪能ください。
作者・たてのひろしさんからのメッセージ
ことりの探すこぶしの枝がなぜ森にないのでしょうか。それは、ある理由でねこの社会がこぶしの木を片っ端から切って利用しているからです。
極端で一方的な天然資源の消費は、野生の資源循環の均衡を崩します。一つの種が絶滅することで、それを利用する多くの生物が影響を受けます。自然界は動的な関係でできており、そこには常に人知を超えた均衡の力が働いています。そう考えた時、猫社会が行っているこぶしの木の極端で一方的な搾取は、資源循環に対して果たしてどのような影響を与えていると考えられるでしょうか。小鳥の告白によってそのことに気づいた猫は、この物語の最後に、ささやかな働きかけをします。これは自然界にとってほんの小さなことに過ぎません。しかし、この猫のささやかな働きかけを立場の違うすべての猫が行ったなら……。
地球の環境は、こんな簡単な働きかけでは解決できないほど歪んでいるようです。物語では、猫は人間界、小鳥は自然界を重ねています。小鳥はいつも猫に優しい。どこまでも与えてくれるし、傷つけられても、恨んだり呪ったりしない。しかし、その優しさに気づかなければ、猫は破滅していくでしょう。
読者からの感想も続々!
発売前に公開された「NetGalley(ネットギャリー)」(※)に、一般読者の皆さんから感想が寄せられています。(以下、一部抜粋)
※NetGalley(ネットギャリー):発売前の書籍をデジタル形式で読むことができるサービス
・『ねことことり』が大好きでポップを書いたりブックトークで使ったり、かなり子どもたちにアピールしました。そんな本の続編が出て、とても興奮しています。今回はことりサイドからのお話でしたが、あのシーンの裏側はこうだったんだ、とまたまた想像が膨らみ、幸せな気持ちで読ませていただきました。(図書館関係者)
・とにかく絵が素晴らしいです。『ねことことり』からさらに繊細さと奥行きが磨かれて描かれており、物語に温かい体温をもたらせていました。優しい気持ちに溢れた一冊。(教育関係者)
・立場の違いを超えて、深い交流ができること。わたしたちはこの猫と小鳥から大いに学ぶところがあります。なかの真実さんの精緻で美しい絵とたてのひろしさんのことばを削ぎ落としたテキストのバランスが絶妙で、この世界に埋没する楽しみを味わえます。(レビュアー)
・ダイナミックに描かれた鳥の家族と風景が素晴らしいです。こぶしの木がみつからないのではとはらはらしました。ねことの交流にも心があたたかくなります。鳥、ねこ、風景と絵が美しく、何度も読み返したくなる絵本です。(書店関係者)
書誌情報
作:たてのひろし、絵:なかの真実
発売日:2025年10月2日
発行所:世界文化社
定価:1,650円(税込)
ISBN:9784418258369
あおいことりは たいせつな いえをつくるために、
もうなんにちも もりからもりへ こぶしのこえだを さがしまわっていました。
けれど、こぶしの木は きりたおされ、こえだはどこにも みつかりません。
そんなある日、ねこにであい……。(世界文化社グループ公式サイト『あおいことり』より)
関連書籍
作:たてのひろし、絵:なかの真実
発売日:2022年10月
発行所:世界文化社
定価:1,650円(税込)
ISBN:9784418228065
ねこの 仕事は、こぶしの 小枝を 束ねること。 ある朝、ねこが 仕事を しようとすると、 窓に ことりが 止りました。
「お願いがあります。 そこにある小枝を少し 分けて貰えないでしょうか?」
今にも なきだしそうな ことりをみて、ねこは 一日 一本ずつ、小枝を あげることに。
異なる環境の中で、密接に交わり合う二人、 日々の営み、共生、命の循環を、美しくドラマチックに紡いだ作品。
(世界文化社グループ公式サイト『ねことことり』より)
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著者プロフィール
作:たてのひろし(舘野鴻)
1968年、神奈川県生まれ。画家・絵本作家。幼少期より、熊田千佳慕氏に師事。『つちはんみょう』(偕成社)で小学館児童出版文化賞、『ねことことり』(世界文化社)、『どんぐり』(小峰書店)で日本絵本賞を受賞。絵本に『しでむし』『ぎふちょう』『がろあむし』(偕成社)、『うんこ虫を追え』『すずめばち』(福音館書店)、『うさぎのしま』「3びきのあまがえる」シリーズ(世界文化社)など、読み物に『ソロ沼のものがたり』(岩波書店)がある。
絵:なかの真実
1984年、神奈川県生まれ。画家・イラストレーター。武蔵野美術大学卒業。デザイン事務所勤務を経てイラストレーターとして活動する中で、舘野鴻氏に絵を学ぶ。『みどりのがけのふるいいえ』(世界文化社)で絵本作家デビュー。『ねことことり』で日本絵本賞を受賞。「いきものづくし ものづくし」シリーズ(福音館書店)の4巻内「しろくろのいきもの」、6巻内「さるのかお」の作画を担当。