紫陽花と雨が大好きな少女が、歴史に名を残す偉大な科学者になるまで
『藍を継ぐ海』で第172回直木賞を受賞し、NHKドラマ「宙わたる教室」の原作でも話題の伊与原新さん。そんな伊与原さんが、「猿橋賞」の創設者であり、戦後、国際舞台で活躍した科学者・猿橋勝子の波乱万丈の生涯を描いた『翠雨の人』が7月30日(水)に発売されます。
戦後80年を迎えるこの夏、多くのメディアから注目を集め、発売前にもかかわらず異例の重版が決定しました。
「なぜ雨は降るのだろう」――少女時代、素朴な疑問を抱いたことから理系の道を歩んだ猿橋勝子。戦時下では科学と戦争の関係を問い続け、戦後は世界を震撼させたビキニ水爆実験による放射能汚染の実態究明に打ち込んでいきます。科学を信じ抜いた一人の女性の姿を、伊与原さんが構想10年の末、満を持して描いた作品です。ぜひ、書店で手に取ってご覧ください。
『翠雨の人』
著者:伊与原新
発売日:2025年7月30日
発行所:新潮社
定価:1,980円(税込)
ISBN:9784103362159
「雨は、なぜ降るのだろう」。少女時代に雨の原理に素朴な疑問を抱いて、戦前、女性が理系の教育を受ける機会に恵まれない時代から、科学の道を志した猿橋勝子。戦後、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定にたずさわり、後年、核実験の抑止に影響を与える研究成果をあげた。その生涯にわたる科学への情熱をよみがえらせる長篇小説。
(新潮社公式サイト『翠雨の人』より)
女性科学者・猿橋勝子(さるはし・かつこ)とは
1920年東京生まれ。東京府立第六高等女学校(現・東京都立三田高等学校)を経て、日本初の女性のための理系専門学校、帝国女子理学専門学校(現・東邦大学理学部)を第1回生として卒業。中央気象台研究部で、生涯の師となる三宅泰雄の指導を受ける。1954年のビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の実態を究明し、その研究成果は後年、核実験の抑止に影響を与えた。
1980年、「女性科学者に明るい未来をの会」を設立し、第一線で活躍する女性科学者を表彰する「猿橋賞」を創設した。2007年逝去。
著者:伊与原新さんからのメッセージ
彼女の人生だけはこの手で書きたい――
初めてそう思った科学者です。
【プロフィール】
伊与原新
いよはら・しん。1972年、大阪生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。2024年、『宙(そら)わたる教室』が第70回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選出、NHKでドラマ化され話題となる。2025年、『藍を継ぐ海』で第172回直木三十五賞を受賞。他の著書に『八月の銀の雪』『オオルリ流星群』『青ノ果テ 花巻農芸高校地学部の夏』『磁極反転の日』『蝶が舞ったら、謎のち晴れ 気象予報士・蝶子の推理』『ブルーネス』『コンタミ 科学汚染』などがある。
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