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日本人初!王谷晶『ババヤガの夜』が英国推理作家協会賞(ダガー賞)翻訳部門を受賞

王谷晶『ババヤガの夜』ダガー賞TOP

英国推理作家協会が主催する、世界最高峰のミステリー文学賞「ダガー賞(Dagger Awards)」の翻訳部門が7月3日夜(現地時間)に発表され、王谷晶さんの小説『ババヤガの夜』(訳:サム・ベット/出版社:Faber & Faber/2024年9月刊)が選ばれました。日本作品の受賞は初の快挙、アジアの作家としても史上2人目の受賞となります。

「ダガー賞」は1955年に創設された、ミステリー・犯罪小説に贈られる文学賞です。翻訳部門は、英国で出版された英語翻訳作品に対して授与されます。

なお、今回『ババヤガの夜』は、柚木麻子さんの『BUTTER』(訳:ポリー・バートン)とともにノミネートされており、日本からの2作同時ノミネートも初となっています(最終選考の対象は全6作品)。

日本で2020年「文藝」秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」にて全文発表された『ババヤガの夜』は、王谷晶さん初の本格長編小説であり、日本推理作家協会賞長編部門および連作短編集部門の候補にも選ばれました。海外でも、クライム・フェスト「スペックセイバーズ新人小説賞」受賞(イギリス、2025年)、クライム・フィクション・ラバー「最優秀翻訳賞」(編集者選)受賞(イギリス、2024年)、デイリー・テレグラフ「スリラー・オブ・ザ・イヤー」選出(イギリス、2024年)、ロサンゼルス・タイムズ「この夏読むべきミステリー5冊」選出(アメリカ、2024年)と、国内外で話題となった作品です。

本作は、喧嘩しか取り柄のない新道依子が、ある夜、関東有数の暴力団の屋敷に連れてこられ、組長の一人娘である短大生の送り迎えと護衛を命じられることからはじまる物語。気の合わないふたりの奇妙な同居生活のなかで、依子はこの家に隠された、ある秘密に触れていく――というシスター・バイオレンス・アクションです。

 

ババヤガの夜

『ババヤガの夜』
著者:王谷晶
発売日:2023年5月
発行所:河出書房新社
定価:748円
ISBN:9784309419657

暴力を唯一の趣味とする新道依子は、関東有数規模の暴力団・内樹會会長の一人娘の護衛を任される。二度読み必至、血と暴力の傑作シスター・バイオレンスアクション。

(河出書房新社公式サイト『ババヤガの夜』より)

 

▼イギリス版の表紙

ババヤガの夜 イギリス版

 

「ダガー賞」授賞式での王谷晶さんスピーチ全文

まずは審査員の皆さん、この国で私の本を出版してくださったFaber&Faber、アメリカで最初の英語版を出してくれたSoho Press、タトル・モリ エイジェンシー、印刷製本、流通、販売してくださった皆さん、そしてこの本を手に取って大切な時間を使ってくれた読者の皆さんに大きな感謝を捧げます。

今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています。「モンティ・パイソン」のスケッチに出ている気分です。昨夜は「フォルティ・タワーズ」みたいな素敵なホテルに泊まりましたし。何より感謝したいのは、翻訳のサム・ベットさんです。この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました。本当にありがとうございます。私はミステリ専門の作家ではありません。様々な種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています。曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。この作品の主人公たちも、はっきりとラベリングできない関係と人生を手に入れます。これは何よりも私が読みたかった要素です。同時にこれはバイオレンス満載の物語でもあります。ここにお集まりの皆さんは私と同じく血や殺人や犯罪や、復讐や暴力が大好きな方々だと思います。もちろんフィクションの。私はバイオレンスフィクションの愛好家ほど、よりさらに現実世界の平和を願い行動しなければいけないと思っています。リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。これからも首無し死体やパーティでの毒殺を楽しむためにも、今回頂いた栄誉を、世界の平和のために少しでも役立てたいと思います。Thank you.

 

著者プロフィール

王谷晶さん

王谷 晶

おうたに・あきら。1981年、東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』『ババヤガの夜』『君の六月は凍る』『他人屋のゆうれい』『父の回数』、エッセイ集『カラダは私の何なんだ?』『40歳だけど大人になりたい』などがある。

 

サム・ベット氏 © Danny Gugger

© Danny Gugger

サム・ベット

Sam Bett 1986年、アメリカ・ボストン生まれ。小説家、翻訳者。訳書に三島由紀夫『スタア』、太宰治『道化の華』『乞食学生』、デビッド・ボイドとの共訳で川上未映子『夏物語』、『ヘヴン』(国際ブッカー賞候補)、『すべて真夜中の恋人たち』(全米批評家協会賞候補)など多数。

 

英国推理作家協会主催・ダガー賞翻訳部門とは

ダガー賞は、1955年に創設された、英国推理作家協会(CWA)が主催する、ミステリー小説・犯罪小説に贈られる権威ある文学賞です。その中のひとつである翻訳部門(Dagger for Crime Fiction in Translation)は、英語以外の言語で書かれ、英国で出版された、英語翻訳作品に対して授与される賞です。

国境を越えた物語の力と翻訳者の卓越した手腕を讃えるもので、これまでにフレデリック・ヴァルガス、ピエール・ルメートルなど、世界中から選び抜かれた作家の作品が受賞してきました。

これまでに、日本の作品では以下の3作が最終候補に選出されています。

2016年:横山秀夫『64(ロクヨン)』(訳:Jonathan Lloyd-Davies)
2019年:東野圭吾『新参者』(訳:Giles Murray)
2022年:伊坂幸太郎『マリアビートル』(訳:Sam Malissa)

 

『ババヤガの夜』の海外・日本のレビューはこちら

【海外メディア】

「めちゃくちゃブッ飛んでて最高に血まみれ、これはヤバかった!『キル・ビル』とか『ジョン・ウィック』っぽい雰囲気の本を探してるなら、もうこれ一択」――@thespookybookclub
「怒り、ユーモア、スリル満載」――The Times紙
「激しい暴力と素晴らしい優しさが交互に訪れる」―― The Guardian紙
「女の力を描いた、シャープでストイックな物語」―― Los Angeles Times紙
「手に汗握る、壊れないスリラー」―― Tokyo Weekender
「優しくも怒りに満ちたこの犯罪サーガは、オウタニの次作を待ち望まずにいられない」―― Publishers Weekly

 

【日本の著名人によるレビュー】

「どんどこ血が脈打ってくる。」――北上次郎(『本の雑誌』2021年1月号)
「まず、この世界を壊せ。話はそこからだ、と作者は言う。」――杉江松恋
「シスターフッド文学をあらゆる意味で刷新するシスターバイオレンスアクション!」――鴻巣友季子
「もう一気に読了して最後はナルホド! と唸った。」――大槻ケンヂ
「友情でも愛情でも性愛でもない、ただ深いところで結ばれたこの関係に、名前など付けられない。」――宇垣美里