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【汐見夏衛さんの書店との出合い】「人生の記憶は本屋さんと共に」汐見夏衛さんの“本屋遍歴”

汐見夏衛さん

書店にまつわる思い出やエピソードを綴っていただく連載「書店との出合い」。

今回は、7月20日に『あの夏のキミを探して』が発売された、汐見夏衛さんです。

高校で国語を教えていた経験もあり、悩みや葛藤を抱える若い世代へ向けた小説を執筆している汐見さん。デビュー作『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、続編を含めたシリーズ累計150万部のベストセラーに。2017年に「野いちご大賞」大賞を受賞した『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』をはじめ、恋愛や青春を軸に心の痛みや孤独、再生と希望などを丁寧に描いた作品は、10代を中心とした読者から大きな支持を得ています。

幼少期から「暇さえあれば本を読んでいた」という汐見さん。今回は、そんな汐見さんの人生とともにあるという書店の数々について、たくさんの思い出とともに綴っていただきました。

汐見夏衛
しおみ・なつえ。鹿児島県出身、愛知県在住。2016年『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』でデビュー。2017年野いちご大賞を受賞した『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』がシリーズ累計20万部を超える大ヒットに。ほか、著書多数。

 

人生の記憶は本屋さんと共にある

鹿児島市の最南端に位置する地域で生まれ育った私は、いつも本に飢えていた。

なんせ子どもが自力で行ける範囲に書店はなかったのだ。ちなみに市立図書館も遥か遠くだった。

幼少期から絵本が大好きで、小学校に入って図書室で本を借りられることを知ったときはたいへん嬉しく小躍りした。さっそく絵本を借りまくり、3年生あたりからコバルト文庫やティーンズ文庫などを借り始め、さらに読書に夢中になった。

暇さえあれば本を読んでいた。しかし、先述のとおり、自宅近くに書店はない、大きい図書館もない。学校図書館の気になる本はあらかた読み尽くし、新刊は手に入れることができない。休日に車で親に連れて行ってもらう以外、本屋さんに行く手立てはなかった。とにかく常に本に飢えていた。

子どものころ通い詰めていたのは七ツ島にあったブックスミスミさん。印象的な思い出として(品のない話で恐縮だが)、ミスミに行くといつもトイレに行きたくなっていた。ドアが開き中に入って、店内いっぱいに広がる本のにおいが鼻腔をついた瞬間、トイレに行きたいと言い出す私に親は「また?」と笑っていた。大人になってからこの現象に名前がつけられていることを知り、自分だけではなかったのかと少し安堵している。

もう一店よく通っていたのはブックセンターめいわ和田店さん。文庫や漫画の発売予定が貼り出されていて舐めるように見ていたのが懐かしい(当時はインターネットで新刊情報を得ることもできず、それが唯一の手段だったのだ)。めいわさんは本だけでなく、小中学生女子が喜ぶ可愛い雑貨がたくさん売られていて、友達への誕生日プレゼントはここで見繕うのが定番だった。

ちなみに数年前、なんとこのめいわ和田店さんからサイン色紙のご依頼をいただいた。実家が引っ越したためもう20年くらい行けていないのだが、「めいわ」という響きで一気に幼き日の思い出が甦り、色紙にみっちり喜びの言葉を書き添えてしまった。

高校生になって市内中央部へ電車通学をするようになり、帰りに書店に立ち寄れるようになったときは、小学校入学時以来の小踊りしそうな嬉しさだった。高校の最寄りが西鹿児島駅(今の鹿児島中央駅)で、西口にあった春苑堂書店さんに通いつめ、一般文芸の文庫を読み始めたのをよく覚えている。

のちに新幹線が開通し鹿児島中央駅に改名され、オープンした駅ビルには紀伊國屋書店さんが入った。鹿児島への帰省は新幹線を利用しているので、毎回紀伊國屋書店さんに立ち寄っている。こちらも数年前からサイン色紙やサイン本のご依頼や、サイン会を開催していただいたりと応援してくださっており、開店当初からのヘビーユーザーとしてこんなに嬉しいことはない。

大学進学のため大阪に移り住むと、ほぼ各駅に書店があるという天国のような環境で3度目の小躍りである。特に蛍池のブックファーストさん、梅田の紀伊國屋書店さんには大変お世話になった。文学部で現代日本語学を専攻していたため、用例収集のための書籍をせっせと購入させていただいた。大学生協の書店にはまさに入り浸っていた。

就職を機に愛知に移り住み、子どもが産まれてからは、住まいの近くにある精文館書店さんや未来屋書店さんに連れて行き、子どもの心の琴線にふれる本を何時間もかけて探すのが至福のひとときだ。

また三省堂書店名古屋本店さんは地元在住作家としてデビュー当時から熱く応援してくださっていて、感謝の一言では言い尽くせない思いを感じている。

こうして振り返ってみると、進学や転居などで何度も環境が変わったが、当時を思い出そうとすると真っ先にそのころ通っていた書店さんの記憶が浮かんでくる。私の人生は本屋さんと共にある……なんてちょっと格好つけてしまったが、とにかく人生の各段階全てに、当時通いつめた書店の思い出が深く深く絡みついているのだ。

時代の変化と共に書店さんが厳しい状況に置かれていると聞くようになって久しいが、その中でも地域住民のために門戸を開き続けくださっている・これまで開いてくださっていた全ての本屋さんに、心からの感謝と敬意を捧げたい。

 

著者の最新刊

あの夏のキミを探して

『あの夏のキミを探して』
著者:汐見夏衛
発売日:2025年7月20日
発行所:スターツ出版
定価:1,540円(税込)
ISBN:9784813794806

あることがきっかけで学校に行けなくなってしまった中1の陽和(ひより)。夏休み、逃げるようにして訪れたおじいちゃんの家の裏山で、不思議な少女・キミちゃんに出会う。陽和は、やさしい雰囲気のキミちゃんと一気に仲良くなるけれど、ちょっとしたすれ違いでケンカ別れして、そのまま会えなくなってしまって…。じつは彼女は、80年前・戦時中を生きていた女の子だった。命の大切さ、尊さを感じさせてくれる、やさしくて感動の物語。

(小説サイト ノベマ!公式サイト『あの夏のキミを探して』より)

 

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