「角野栄子」2024年ベストセラーランキング発表
日本を代表する児童文学作家であり、代表作『魔女の宅急便』や「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズなどで知られる角野栄子さん。2018年には、児童文学の最高峰ともいえる国際アンデルセン賞を受賞し、世界的にも評価を得ています。
魔女のキキの成長物語である『魔女の宅急便』や、レストランの屋根裏に住む食いしん坊のおばけ・アッチが主人公の「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズなど、創造性豊かな世界観と温かみのあるストーリーが角野作品の特徴。角野さんが初めて戦争をテーマに執筆した『トンネルの森 1945』や、戦後の日本を舞台にした『イコ トラベリング 1948–』といった自伝的小説も、世界で戦火が絶えない今、読み継がれるべき作品と言えるでしょう。
ブラジルへの移住体験をもとにした『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』でデビューした角野さん。異国の文化や旅、食をテーマにしたエッセイも人気があり、今回も3作がランクインしています。フィクション同様に温かみのある語り口で、創作の裏側や“魔女”のこと、日常の何気ない出来事など、いずれも読み手の想像力を膨らませるような豊かさがあり、新たな視点を提供してくれることも魅力です。
“想像力こそ、人間が持つ一番の魔法”と語る角野さん。東京都江戸川区には、子どもたちが児童文学に親しみ、豊かな想像力を育む場として「魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)」が設立されています。また、「ひとり読みを始めた子どもたちにとびきり楽しい童話を届けたい!」という信念のもと創設された、「第2回 角野栄子もっとあたらしい童話大賞」が作品を募集中です(2025年7月31日(木)締切)。
今回は、角野さんの作品で、2024年の販売冊数を集計したベストセラーランキングをお届けします。各作品のあらすじもあわせてご紹介しますので、ランキングを参考に、ぜひ書店店頭で気になる1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2024年の販売冊数を集計しています(集計期間:2024/1/1~2024/12/31)
※シリーズ作品はひとつにまとめています
※日販調べ
2024年に一番人気の作品は…?!
角野栄子さんの2024年に一番人気があった作品は、『魔女の宅急便』でした。
『魔女の宅急便』は、1985年に福音館書店から刊行された児童文学作品です。物語は、13歳の魔女・キキが一人前の魔女になるために親元を離れ、自立していく姿を描いています。ほうきに乗って黒猫・ジジとともに旅に出たキキは、たどり着いた見知らぬ街で、空を飛ぶ能力を活かして宅急便屋を始めますが……。
本作は、1989年にスタジオジブリによってアニメ映画化され、2014年には小芝風花さん主演の実写映画が公開されたことでも広く知られています。また、国内だけでなく、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語などさまざまな言語で翻訳・出版されており、世界的なベストセラーでもあります。
『魔女の宅急便』は本作をはじめとする全6巻が刊行されており、魔法の変化や、恋愛や人生の選択など、キキが魔女として、人として成長していく様子が描かれています。特別編も3冊刊行されており、キキとジジの幼いころや、シリーズに登場する脇を固める人物たちの物語など、本編とはまた違った視点やエピソードが楽しめます。一般文庫にも収録され、子どもだけでなく大人も含めた幅広い世代に長く愛されている本作。シリーズを通して、その世界観に浸ってみるのもおすすめです。
『魔女の宅急便』
作:角野栄子、画:林明子
発売日:1985年1月
発行所:福音館書店
定価:1,650円(税込)
ISBN:9784834001198
「ひとり立ち」するためにはじめての街にやってきた13歳の魔女キキと相棒の黒猫ジジ。彼女が懸命に考えて自立するために始めた仕事は、ほうきで空を飛んで荷物を届ける宅急便屋さんでした。ミスしておちこんだりしながらも元気に生きるキキは荷物を運びながら大事なことを発見していきます。相棒の黒猫ジジと喜び悲しみを共にしながら、町の人たちに受け入れられるようになるまでの1年をさわやかに描いた物語。
(福音館書店公式サイト『魔女の宅急便』より)
※文庫版は角川文庫、福音館文庫から刊行されています
※『魔女の宅急便』は本編が全6巻、特別編は『キキに出会った人びと』『キキとジジ』『ケケと半分魔女』の3冊が刊行されています
■アニメ映画を絵本化した『徳間アニメ絵本 魔女の宅急便』も多く読まれています
- 魔女の宅急便
- 著者:角野栄子
- 発売日:1989年09月
- 発行所:徳間書店
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784193640571
■コミック版はこちら
- 魔女の宅急便
- 著者:角野栄子 宮崎駿
- 発売日:2014年01月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784168121043
「角野栄子」2024年 ベストセラーランキング第2位~第10位
第2位『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』
- 「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出
- 著者:角野栄子
- 発売日:2023年11月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:836円(税込)
- ISBNコード:9784041137444
たらいで洗濯する背中にそっとよりかかって感じた、亡き母のぬくもりの記憶。晩酌する父のあぐらの中で毎晩座って聴いたオノマトペ。ブラジルで運命的に出会った気高い赤毛の魔女。「普通のお母さんになってよ」と小学生の娘からいわれた日。江戸川の土手に住んでいたハーちゃん。紀伊國屋書店の新入社員時代、喫茶室で見たフランス帰りの若き岡本太郎……。思い出は、よろこびだけではなく悲しみも人に力を与えてくれる。みんな今の私を作った「集まっちゃった思い出」たち。世界的児童文学作家の人生のお手本にしたい、名エッセイ集!(解説:小川糸)
(KADOKAWA公式サイト『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』より)
第3位『おいしいふ~せん』
- おいしいふ~せん
- 著者:角野栄子
- 発売日:2023年11月
- 発行所:NHK出版
- 価格:2,035円(税込)
- ISBNコード:9784140057407
『魔女の宅急便』の角野栄子が食をテーマに描く、待望のショートエッセイ集。
たんぽぽの汁を吸って亡き母を想った子ども時代、弟と1コの卵を分け合った戦時下、初めての味に驚きの連続だったブラジル生活、『魔女の宅急便』の読者から届いたゆすらんめのジュース……。
めまぐるしく愛おしい88年間の日々を支えてくれたのは、いつも“おいしいもの”だった——。
角野栄子ならではのユーモアと温かみにあふれる文章と、カラフルで愉快なイラストを散りばめたショートエッセイ56編をオールカラーで収載。
大人も子どもも楽しめて、かわいい装丁とサイズ感はプレゼントにもぴったり。
何気ない毎日の愛おしさに気がつき、前向きになれる一冊。(NHK出版公式サイト『おいしいふ~せん』より)
第4位『トンネルの森 1945』
- トンネルの森1945
- 著者:角野栄子
- 発売日:2023年11月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:704円(税込)
- ISBNコード:9784041137451
太平洋戦争さなか、幼くして母を亡くしたイコは父の再婚相手になじめぬまま、生まれたばかりの弟と三人で小さな村に疎開することに。家のそばにある暗く大きな森がトンネルのようで怖くてたまらなかった。同級生たちはあの森に脱走兵が逃げ込み自殺したのだ、と噂をしていた。ある夜、森の奥からハーモニカの細い音色が流れてくる。数日後、沼で失くしたイコの下駄が森の出口に置かれていた。「あり・が・とう」イコはちいさく呟いた。戦争は激化し、東京大空襲で半死半生の父が見つかる。不安に押しつぶされそうになったイコは森に入る。「兵隊さーん」そこでイコが目にしたものは……。『魔女の宅急便』の著者が描く少女の戦争。(解説:小川洋子)
(KADOKAWA公式サイト『トンネルの森 1945』より)
■そのほかの関連シリーズ作品
- イコトラベリング1948ー 1
- 著者:角野栄子 今日マチ子
- 発売日:2022年09月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784041072110
第5位『おばけのアッチ チとキがいない!』(「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズ)
- おばけのアッチ チとキがいない!
- 著者:角野栄子 佐々木洋子(絵本)
- 発売日:2022年11月
- 発行所:ポプラ社
- 価格:1,210円(税込)
- ISBNコード:9784591175217
アッチにしかられて、ねずみのチとキがいえでした! ふたりは、サーカスのなかまにならないかとさそわれますが……!?
(ポプラ社公式サイト『おばけのアッチ チとキがいない!』より)
■「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズは第48巻まで刊行されています。2024年に人気のあったそのほかのシリーズ作品はこちら
- スパゲッティがたべたいよう
- 著者:角野栄子 佐々木洋子(絵本)
- 発売日:1979年02月
- 発行所:ポプラ社
- 価格:1,210円(税込)
- ISBNコード:9784591010662
- おばけのアッチ ドラキュラのママのあじ
- 著者:角野栄子 佐々木洋子(絵本)
- 発売日:2023年10月
- 発行所:ポプラ社
- 価格:1,210円(税込)
- ISBNコード:9784591179222
- おばけのアッチ くるくるピザコンクール
- 著者:角野栄子 佐々木洋子(絵本)
- 発売日:2024年10月
- 発行所:ポプラ社
- 価格:1,210円(税込)
- ISBNコード:9784591183342
第6位『魔女のまなざし』
- 魔女のまなざし
- 著者:角野栄子 くらはしれい
- 発売日:2024年04月
- 発行所:白泉社
- 価格:1,540円(税込)
- ISBNコード:9784592733195
『魔女の宅急便』の著者が初めて魔女をテーマに綴ったエッセイ集。
物語に登場する魔女や、外国で魔女に出会ったお話、魔女の薬草や食べ物、おしゃれなどを温かなまなざしで語ります。
1997年刊行の『魔女のひきだし』に改稿、描きおろしを加え、角野栄子の素敵な暮らしも収録した、新たな1冊です。(白泉社公式サイト『魔女のまなざし』より)
第7位『ねこぜ山どうぶつ園』
- ねこぜ山どうぶつ園
- 著者:角野栄子 よしむらめぐ
- 発売日:2023年07月
- 発行所:金の星社
- 価格:1,430円(税込)
- ISBNコード:9784323075273
カバのオシリちゃん、ライオンのオンラインくん、なまけもののジットくんと個性派揃いのねこぜ山動物園。ある日リリー園長がバクのウツラさんに夢の相談をすると影のむくむくさんが現れ……。ちょっと不思議で楽しい動物園の物語。
(金の星社公式サイト『ねこぜ山どうぶつ園』より)
第8位『月さんとザザさん』
- 月さんとザザさん
- 著者:角野栄子
- 発売日:2023年10月
- 発行所:小学館
- 価格:1,430円(税込)
- ISBNコード:9784092893313
スミコさんという歩く家で一人暮らしのちょっとひねくれたザザさん。
ザザさんは、毎日朝から晩までもんくばかり言っているひねくれ者。
そんなザザさんのところに、月さんは気まぐれにやってきて、おもしろい話をしてくれます。
ザザさんのご機嫌も良くなるでしょうか?角野栄子さん自ら描くちょっととぼけたキャラクターも魅力的です。
(小学館公式サイト『月さんとザザさん』より)
第9位『ちいさな木』
- ちいさな木
- 著者:角野栄子 佐竹美保
- 発売日:2023年11月
- 発行所:偕成社
- 価格:1,430円(税込)
- ISBNコード:9784033521800
町はずれの寂しい道に、ポツンと1本の木が生えていました。もう何年もそこにいましたが、ずっと小さいままでした。あるとき、1匹のみすぼらしい犬がやってきました。「ぼく、家出したんだよ。これから、じぶんのすきなところへ行くんだ。きみも、いっしょに行こうよ」。そういわれた木は、初めて根っこを「よっこらしょ」と土から引き抜いてみました。すると、なんと歩けるようになったのです! さあ、ここではないどこか、「じぶんがすきなところ」をもとめて、冒険の旅に出発です!
とちゅうで岩と沼も加わり、歩みもバラバラな異色の4人が、山あり谷ありの道を一歩ずつ進んでいきます。スタンスタン、イッポイッポ、ゴロンチョゴロンチョ、ポチョンチョポチョンチョ。
はたして、みんなの「じぶんのすきなところ」は見つかるでしょうか?
(偕成社公式サイト『ちいさな木』より)
第10位『なかよしかぜ』
- なかよしかぜ
- 著者:角野栄子 どいかや
- 発売日:2024年04月
- 発行所:教育画劇
- 価格:1,430円(税込)
- ISBNコード:9784774623214
天気予報が「きょうはなかよしかぜがふくでしょう」っていってた。
なかよしかぜってどんな風なんだろう?
だれかと仲良くなるって、勇気がいるけど、こんな風がふいてきたら、きっと楽しいね(教育画劇公式サイト『なかよしかぜ』より)
著者のプロフィール
角野栄子
かどの・えいこ。東京都生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経てブラジルに滞在。その体験をもとに描いた『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』(ポプラ社)で、1970年に作家デビュー。1985年に刊行された代表作『魔女の宅急便』(福音館書店)は産経児童出版文化賞、野間児童文芸賞、小学館文学賞、IBBYオナーリストを受賞し、舞台化、アニメーション・実写映画化された。「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズ、「リンゴちゃん」シリーズ(ともにポプラ社)、『ズボン船長さんの話』(福音館書店)ほか著書多数。
2016年に『トンネルの森 1945』で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、2023年に『イコ トラベリング 1948–』で紫式部文学賞を受賞。2000年に紫綬褒章、2014年に旭日小綬章を受章。2018年には児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。