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上司はネコの無法地帯に赴任されたけど、ネコ好きにはご褒美でしかない――! 「Ado」のMVを手がけるイラストレーターの連載漫画『ネコサツ』

『ネコサツ』

なんてこった!!

『ネコサツ』

新しい上司は猫でした――。

奇妙で愉快な「サテツ島」を舞台に、二足歩行の猫が闊歩する『ネコサツ』は『ずっと真夜中でいいのに。』『Ado』などのMVアニメーションを手がけるイラストレーター・sakiyama氏の初の連載漫画。
味のあるフリーハンドの描線、廃墟や植物の繊細な描写、ダークで毒のある作画と「猫はいいぞ……!」とつぶやきたくなるシュールなギャグのギャップがクセになり、何度も読み返したくなる。

警察官としてあるまじき大失態を犯した笹見(ササミ)は、世間から盛大に叩かれたのち、謎多き離島・通称「サテツ島」に赴任することに。
そこは「緑の島」と聞いてイメージするような豊かな自然とはほど遠い、さびれた島だ。そして配属先は点在する廃墟の中にぽつんと建つ、島で唯一の交番。ド直球の左遷である。

これまで10年も真面目にがんばってきたのに、不祥事一発でこれは厳しい……。落胆しながらも新しい赴任先にやってきた笹見を待っていたのは、ネコの姿をした先輩警察官だった。

『ネコサツ』

可愛いネコちゃんの顔で、先輩は言う。

オマエ おれのあし なめてみろにゃ

超パワハラなこんな発言も笹見にとってはご褒美だ。

『ネコサツ』

なぜなら笹見は実は大のネコ好き。左遷の原因の不祥事にもネコちゃんが関係するほどなのだ。
そしてこの先輩、ちょっと横柄な態度に反してお名前は「ブリちゃん」だという。可愛いなあ。

左遷のショックと寂れた島と可愛いネコちゃん……諸々のギャップにすっかりやられた笹見は、この不思議な状況をなんとなく受け入れてしまうのだった。

 

無法地帯も悪くない

ブリちゃん先輩によれば、サテツ島は「へいさてきでアンダーグラウンド」、事件は日常茶飯事で法律は基本通用しない場所だという。

『ネコサツ』

その言葉通り、この島では猫の警官どころか頭だけが野菜の人間なども普通にいる。ただの田舎町ならちょっと目を引きそうなシュッとしたルックスの笹見も、ここではごく平凡に見える。
町並みには廃墟が多く、笹見が住む予定だった官舎はボロボロ、唯一のホテルは潰れたばかり。そして島の中には20店舗のスーパーがあるが、そのすべてが「まいぼすけっと」である。

だけど、意外にも労働環境は悪くない。

『ネコサツ』

ブリちゃん先輩はネコ特有の気まぐれパワハラ体質な一方で島民からの信頼は厚く、たまに結構いいことも言う。長毛種の同僚「ラグちゃん」は抜けているけどとても優しく、しかも強い。

『ネコサツ』

やらかしたとはいえ、もともと笹見は真面目な人間だ。思いのほか過ごしやすいこの島で、日々の仕事に精を出すようになる。

『ネコサツ』

ネコであるブリちゃん先輩のネズミ捕り(速度違反者の取り締まり)に密かに感激したり、暴言をたしなめたり……。

『ネコサツ』

「ネコちゃんといっしょに湯船につかる」というネコ飼いの夢もサクッとかなってしまう。のどかな離島の日常は平和そのもの。「これが左遷?」と首を傾げたくなるほどの楽しい日々がそこにあった。

 

ここでちゃんと暮らそう

すっかり島での生活に慣れた笹見。交番の仮眠室で寝泊まりするのをやめ、自分で部屋を借りて新生活を始める決意をするのが「#5 新生活にゃ」。
サテツ島のエリアマップも登場し、島の全貌が見えて楽しいが、なかなかのホラー回でもある。

不動産屋と島内の物件の内見をする笹見。非番のブリちゃん先輩も来てくれて、新生活への夢がふくらむ。しかし気づけば会話は不穏な方向へ進んでいき……。

『ネコサツ』

この無法地帯での日々のほうがよっぽど不条理なのに、こういうのは怖いんだ……。笹見の反応に思わず笑みがこぼれる。

そんな彼をある日、警察署長が呼び出す。

『ネコサツ』

強面の署長の口から出たのは意外な一言。笹見のサテツ島ライフの行方に注目だ。

(レビュアー:中野亜希)

ネコサツ
著者:sakiyama
発売日:2025年04月
発行所:講談社
価格:1,540円(税込)
ISBNコード:9784065391457

※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2025年5月24日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。