人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

  1. HOME
  2. 本と人
  3. ほん
  4. 「雑用こそ人生の突破口だ。」料理界のカリスマ・三國シェフの生き様を描いた自伝的エッセイ本【総合3.8】

「雑用こそ人生の突破口だ。」料理界のカリスマ・三國シェフの生き様を描いた自伝的エッセイ本【総合3.8】

 

三流シェフ
著者:三國清三
発売日:2022年12月
発行所:幻冬舎
価格:1,650円(税込)
ISBN:9784344040649

 

『三流シェフ』の要点

1.初めて食べたハンバーグの味に感動した著者は、札幌グランドホテルのコックになると決心する。研修で同ホテルを訪ねた日、厨房の陰に隠れておき、タイミングを見計らって「ここで働かせてください」と直談判した。

2.洗い場のパートタイムとして働いた帝国ホテルでは、その働きぶりが認められ、大使の料理人に抜擢された。

3.最後に海外で働いたのはリヨン郊外の三ツ星フレンチ「アラン・シャペル」だ。アラン・シャペル本人からかけられた一言がきっかけとなり、日本に帰ることにした。

 

『三流シェフ』レビュー

ビジネス、スポーツ、芸術。どんな分野であっても、飛びぬけた成果をあげた人のストーリーは、わたしたちの背中を押してくれる。本書もそんな物語のひとつだ。

著者、三國清三氏は、北海道生まれのフレンチシェフだ。中学卒業後、札幌グランドホテルと帝国ホテルで修行したのち、帝国ホテルの総料理長から直々に推薦され、20歳にして駐スイス日本大使の料理人を務める。その後は本場の三つ星レストランを渡り歩き、帰国後は東京に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店して国内外から30万人を超えるお客様を迎えた。

この経歴だけを見ると、運と才能に恵まれたシェフの完璧な人生だと思うだろう。だが本書を読んでみると、その裏にはとんでもない努力があったことがわかる。

特に驚かされるのは、どこの厨房に行っても戦略的に“雑用”をこなし、トップに見出されてとんとん拍子に出世していくことだ。大使の料理人になったときは洗い場のパートタイムという立場で、本格的なフランス料理を食べたことも、作ったこともなかったという。それほど異例の抜擢だったのだ。

詳細は要約で確認してほしいが、三國氏の努力は、たいていの人が想像するような種類でも、量でもない。常に戦略を練り、一般的な人なら躊躇するようなことにもどんどんチャレンジする姿にワクワクさせられ、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。

さて、本書のタイトルは『三流シェフ』だ。誰もが認める一流シェフであるはずなのに、なぜこのタイトルなのか。不思議に思ったなら、ぜひ本書を手に取って確かめてほしい。

 

『三流シェフ』が気になる方におすすめ

シェ松尾元オーナーシェフのお料理教室 普通の食材をお店の味に変えるレシピをまとめて
著者:松尾幸造
発売日:2022年12月
発行所:KADOKAWA
価格:1,760円(税込)
ISBN:9784048974912