各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。
今回は、4月号(2月21日発売)で創刊100周年を迎える『小学一年生』の編集長・明石修一さんのご登場です。
毎年「新一年生」という新たな読者を迎えながら、祖父母、親、子、孫と4世代にわたり愛されたきた稀有な雑誌『小学一年生』。100年にわたる読者からの支持を支えてきたその編集方針は、“好奇心”がキーワードとなっているようです。社会を担う子どもたちへの変わらぬ思いと、時代を反映した雑誌作りについて、明石編集長に綴っていただきました。
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- 小学一年生 2025年 04月号
- 著者:
- 発売日:2025年02月21日
- 発行所:小学館
- 価格:2,450円(税込)
- JANコード:4910010010455
『小学一年生』が100年タネをまき、育んできた、未知を知る喜び「好奇心」
『小学一年生』はおかげさまで100周年を迎えました。1925年の創刊以来、新小学一年生の子ども達の期待と不安に寄り添ってきました。その編集方針は100年変わりません。それでいて読者は一年ごとに入れ替わります。そして時代の出来事、文化、流行も移り変わり、それに応じて雑誌の中身も変化してきました。
『小学一年生』は「学習雑誌」として発行してきましたが、小学校の教科に基づいた「勉強」とは一線を画してきました。さまざまな物や事、すべてには「学びのタネ」があります。そしてそのタネから芽が出る源は「好奇心」です。未知を知る喜び、これこそが学びのエネルギーだと『小学一年生』は考えてきました。
では子ども達の好奇心のスイッチを入れるにはどうしたらよいか。やはり「何々? おもしろそう!」と思ってもらえるかどうかです。例えば生き物がテーマなら「シマウマの縞って縦横どっち?」、実験なら「10円玉をお家でピッカピカにする方法!」、工作なら「地球どろだんごの作り方!」、時事ネタなら「新お札のビックリ印刷技術!」等々……。どうですか? 大人の皆さんも気になりますよね?
大げさかもしれませんが「好奇心によって人間社会は豊かになる」が私の持論です。科学分野はもちろんのこと、文化面のファッションコーディネートや、食の料理レシピなども、ある意味、実験の試行錯誤の産物。発展の原動力は「好奇心」にあり!だと思っています。
また『小学一年生』は、子どものための総合エンタメ情報誌でもありました。子ども達の興味関心に常にアンテナを立てて、まんが、テレビ番組のヒーロー、アイドルやスポーツ選手、流行ホビー&ゲーム等々、好きなものをたっぷり詰めこみました。キャラクターやヒーローの付録や記事を見れば、読者のハートはスイッチオン! 夢中になって付録を作り、まんがや記事を読みこみます。そして知らず知らずのうちに工作にはげみ、まんがや記事に込められたメッセージ、学習要素を吸収し、学びのタネの芽が出るのです。
「おもしろいからこそタメになる」。その雑誌作りの精神は今も昔も変わりません。そして各時代の子ども達の「好き!」を反映した付録や記事。これが100年の間、継続して読者の皆さんからご支持いただいてきた理由だと思います。ちなみに私は、宇宙人や妖怪といったミステリーものが大好きで、少し風変わりな一年生でした……。
2000年代以降、インターネットやスマホの登場で社会のデジタル化が加速しました。子ども達の生活、教育の現場でもその傾向は顕著です。ただ、子ども達が容易にネットやSNSに触れるようになると、メリットがある一方で、受け取る情報を盲信しやすい、誹謗中傷の温床になるといった、さまざまな問題も浮き彫りになっています。昨今その弊害が指摘され、教育界では、体験学習、探究学習、非認知能力の向上といった課題が提示されています。具体的には五感を使ったリアルな体験、物事を自ら調べてみる、本物を観察する、思いやりの心を育む、等です。
これらの課題、じつは『小学一年生』が大切にしてきたテーマばかりです。自分の手で本を開く、見る、読む、知る、やってみる。自立した思考や行動、情報の真偽を見極める読解力を身に付けることが、子ども達の健全な成長につながります。最近力を入れているのは「体験付録」と位置づけているもので、リアルな疑似体験から関連学習につながるように企画しています。
例えば、コンビニのレジをリアルに再現したレジスキャナー付録は、店員気分で遊んでもらい、会計から算数を学び、店員の仕事への関心に結び付けます。また、恐竜の骨を石膏から発掘するセット付録は、化石を掘り出すわくわく感から、恐竜への興味をより高めています。付録や記事を通じて子ども達にはさまざまなことに興味を持ってもらい、視点は多く、視野は広く、他者への想像力と理解する心をそなえてほしいと思っています。
『小学一年生』は、未来に必要な子ども達の心や力を育める雑誌として、これからも子ども達に寄り添い続けていきます。
今年1月には、100周年企画の一環として、「小学一年生100周年記念サイト」を公開しました。皆さんもぜひ、アクセスして「小学一年生」のころにちょっぴりタイムスリップしてみてください!
小学館『小学一年生』編集長
明石修一 AKASHI Shuichi
1995年小学館入社。広告部に配属後、学年誌・幼児誌、読売KODOMO新聞などを経て、2024年から現職に。好きな妖怪は「一反もめん」。