2月3日(月)、本屋大賞実行委員会より、22回目となる「2025年本屋大賞」のノミネート10作品が発表されました(関連記事)。
ほんのひきだしでは、これらの中から注目の作品を短期連載形式でご紹介します。多くの書店店頭では、ノミネート作品を集めたフェアを実施していますので、ぜひ、書店店頭に足を運んでこれらの作品を手に取ってみてください。
【Vol.3】早見和真『アルプス席の母』
第3弾は、母の視点で描かれた新しい高校野球小説、早見和真さんの『アルプス席の母』をご紹介します。
初版は1万部でスタートし、発売直後にはTBS系テレビ番組「王様のブランチ」のほか、主要メディアで紹介され、 発売5日で3刷という大反響ぶり。「母親たちの熱闘甲子園!」をキャッチに「夏の甲子園」をはさんで、じわじわと増刷をかさね、累計発行部数は11刷6万3,000部となりました。
著者:早見和真
発売日:2024年3月15日
発行所:小学館
判型:四六判上製・ 354ページ
定価:1,870円(税込)
ISBN:9784093867139
【あらすじ】
神奈川県に暮らす看護師の母親・秋山菜々子と中学生の息子・航太郎。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎が、大阪の新興校に入学したことから物語は動き出します。関東一円からスカウトが来たものの、声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見る息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移し、不慣れな土地での暮らしをはじめます。厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?(小学館『アルプス席の母』プレスリリースより)
早見和真さんのコメント
話を聞かせていただいた元球児のお母さんたちにまず報告したいと思います!
みなさんの無念を、憤りを、違和感を、ムカつきを、何よりも喜びをめいっぱい乗っけて書きました。もっと多くの母と息子と、娘と、父にも出会えますように!
Ⓒ撮影:国府田利光
早見和真(はやみ・かずまさ)
1977年神奈川県生まれ。2008年『ひゃくはち』でデビュー。15年『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞。ほかに『95』『店長がバカすぎて』『笑うマトリョーシカ』『八月の母』などがある。
徹底的に球児の母親に寄り添った本作の試みを!
【本書のおすすめポイント】~担当編集者より~
ジャンルを超えて、刊行のたびに注目を集めている早見和真さん。彼が作家生活15年の節目に選んだテーマは、デビュー作『ひゃくはち』以来となる、高校野球でした。
しかし本作は選手目線ではなく、母親の視点で語られます。それには、ふたつ理由があると思っています。ひとつは、コロナ禍に上梓したノンフィクション『あの夏の正解』で、当事者の球児だけではなく、監督、保護者に取材が出来た経験。ふたつ目は、早見さんご自身が親になったことでしょう。
球児を見守る親たちは、どんな想いでいるのだろうか。実際に、多くの球児の母達に取材しました。そうして、かつて誰も読んだことのない高校野球小説が誕生しました。試合の描写は極力控え、徹底的に球児の母親に寄り添った本作の試みは、本屋大賞にノミネートされた時点で成功と言えるのではないでしょうか。
とにかく、冒頭だけでも読んでみてください。そこからは一気です。感情のジェットコースターを体感できることを約束します!
【本屋大賞関連記事】
・「2025年本屋大賞」ノミネート作品をご紹介!第1弾は10万部突破の朝井リョウ『生殖記』
・「2025年本屋大賞」ノミネート作品をご紹介!第2弾は一穂ミチ新境地の恋愛小説『恋とか愛とかやさしさなら』
本屋大賞とは
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去1年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。
今回で22回目となる本屋大賞ですが、2024年12月1日(日)~2025年1月5日(日)に一次投票が行われ、全国488書店の652人の書店員が投票しました。その集計の結果、上位10作品を「2025年本屋大賞」ノミネート作品として決定。2月3日(月)~3月2日(日)まで二次投票を受け付け、その投票の結果、大賞作が決定されます。大賞は4月9日(水)に発表されます。
2025年本屋大賞のノミネート作品は以下の通りです。
【ノミネート10作品(書名五十音順)】
書 名 | 著 者 | 出版社 |
アルプス席の母 | 早見和真 | 小学館 |
カフネ | 阿部暁子 | 講談社 |
禁忌の子 | 山口未桜 | 東京創元社 |
恋とか愛とかやさしさなら | 一穂ミチ | 小学館 |
小説 | 野﨑まど | 講談社 |
死んだ山田と教室 | 金子玲介 | 講談社 |
spring | 恩田陸 | 筑摩書房 |
生殖記 | 朝井リョウ | 小学館 |
成瀬は信じた道をいく | 宮島未奈 | 新潮社 |
人魚が逃げた | 青山美智子 | PHP研究所 |