各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。
今回は、働く女性を応援するビジネス誌『日経WOMAN』の編集長・飯泉梓さんのご登場です。
「仕事を楽しむ 暮らしを楽しむ」をテーマに、1988年の創刊以来、幅広い情報を届けてきた『日経WOMAN』。働く女性の環境や価値観の変化に伴い、常に女性に寄り添い、元気づける誌面が作られてきた秘訣は、読者とのリレーションシップにあるようです。また、ジェンダーギャップが大きい日本において、働く女性を勇気づける企画にも長年注力してきた同誌の取り組みについて、飯泉編集長に綴っていただきました。
▼『日経WOMAN』最新号はこちら
- 日経 WOMAN (ウーマン) 2025年 02月号
- 著者:
- 発売日:2025年01月07日
- 発行所:日経BPマーケティング
- 価格:880円(税込)
- JANコード:4910171030255
誌上で読者の悩みを解消!働く女性のロールモデルの発信も
『日経WOMAN』は2025年に創刊37周年を迎える雑誌です。私は20代後半とそして40代になってから『日経WOMAN』の編集に携わっていますが、とても不思議な雑誌だと感じています。
というのも、ページを開いてみると、いわゆる一般的な女性ファッション誌さんでたくさん登場するプロのモデルさんや読者モデルさんはほとんど登場しません。その代わり、ページを彩るのは一般の働く女性たち。その人数は1号あたり10から20人に上ります。そしてその女性たちにいろいろな情報を提供してもらっています。
例えば、手帳やバッグの中身、お部屋の中、家計の内訳――。他人の手帳や財布、家計の中身はとても気になるけれど、友人にもちょっと聞きづらい。そんな知りたくても聞けないことを取材させてもらい、誌面で紹介しています。
そして、ただ単にモノを紹介するだけでなく、登場する女性たちにその裏側のストーリーや泥臭い失敗談なども披露してもらっています。
例えば、
「以前は浪費ばかりで部屋も散らかっていたけれど、あるとき危機感を覚え部屋の中を整理整頓していったら自然と物欲が消え、貯蓄もできるようになった」
「友人がうらやましくて仕方がなかったけれど、なぜうらやましいのかをノートに書いていったら、気持ちを客観的に整理でき、自分に足りない点に気づき、前向きになれた」……などなど。
そんな女性たちのストーリーがぎっしり詰め込まれているからこそ、キラキラした部分にフォーカスされがちなSNSの投稿とも少し違った、リアルな情報がお届けでき、読後の満足感につながるのではないかと考えています。記事を読んだ方から「『日経WOMAN』を読んだら元気になれた」「新しいことに挑戦してみようと思った」など前向きなコメントが寄せられることも少なくありません。
どうすれば、女性たちを元気づけることができるのか、お悩みを解消できるのか――。編集部員は常にそんなことを思いながら誌面作りを続けています。時代に応じて少しずつ変わってくる悩みに答えられるように企画を考えています。最近では、子育て、仕事、そして介護という3つを成し遂げる悩みや定年後を見据えたキャリア形成の悩みなども増えてきました。
こうしたリアルな悩みをすくい上げるために私たち編集部員が重視しているのが、読者アンケートです。毎月500人近くの方に、現在の収入や貯蓄額、暮らし方についてはもちろんのこと、いま抱えている悩みや知りたい情報などについて60項目近くの設問を用意し、それに回答頂いています。編集部員は回答をすべて読み込み、誌面作りに反映しています。
誌面で読者の皆さんの悩み解消に奔走する一方で、働く女性を勇気づけるという目的で力を注いでいるのが、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」というアワードです。働く女性のロールモデルを広く世に提示したい、組織に埋もれがちな女性に光を当てたいという思いを込めて、1999年からスタートし、2025年で27回目を迎えます。編集部ではこのアワードで表彰すべき「今年の顔」となる女性を探し出すために、1年がかりで調査をおこなっています。企業へのアンケート調査や日経BPの専門媒体や親会社の日本経済新聞と連携し、表彰にふさわしい女性を探し出します。毎年表彰する女性は8から9人ほどですが、その受賞者たちはさまざまな挫折を乗り越え成果を上げられた方ばかり。彼女たちのキャリアヒストリーを聞くと編集部員も胸が熱くなります。
日本ではジェンダーギャップがいまなお、色濃く残っています。現在も、働きづらさに悩んでいる女性も少なくありません。しかし、そう遠くない将来に、いろいろな立場の女性がそれぞれの強みを生かして生き生きと働いてほしい――『日経WOMAN』編集部はそんな思いをこめて、これからも情報を発信し続けたいと思っています。
日経BP『日経WOMAN』編集長
飯泉梓 IIZUMI Azusa
『日経ビジネス』の編集記者を経て、2011年『日経WOMAN』編集記者に。その後『日経ビジネスアソシエ』『日経doors』(現『日経xwoman(クロスウーマン)』)などの編集記者を経て、2020年『日経doors』編集長、2023年から現職。