各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。
今回は、1969年にミニカー専門誌からスタートし、現在はアニメやゲームキャラクー、スケールモデルなど多様なジャンルを扱う総合ホビー誌『月刊ホビージャパン』の編集長・木村学さんのご登場です。
2024年9月、創刊55周年を迎えた同誌は、取り扱う内容も時代とともに変化してきました。そのたゆまぬチャレンジと発展を支えるのは、携わる人々に根付く当初から変わらないスピリッツだそう。同誌のこれまでの歩みとそのスピリッツについて、木村編集長に綴っていただきました。
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- Hobby JAPAN (ホビージャパン) 2025年 02月号
- 著者:
- 発売日:2024年12月24日
- 発行所:ホビージャパン
- 価格:1,210円(税込)
- JANコード:4910081270253
模型業界の“リーディングマガジン”を支えるスピリッツ
『月刊ホビージャパン』は1969年9月に創刊し、2025年で57年目を迎えます。当初はミニカーが輸入され始めた頃、直営店のポストホビーのお客様や業界関係者からの「ミニカーの商品ラインナップが分かる冊子を作ってほしい」との声を受けての創刊だったそうです。しばらくは小冊子然とした装丁で、ポストホビーなどの店舗では無料冊子と間違われて、代金を払わずに持っていくお客様もいた、などというエピソードも耳にしました。
それからまもなく、プラモデル業界に第一次ミリタリーブームが起きます。タミヤをはじめ、さまざまな模型メーカーが、第二次世界大戦で活躍した戦闘機や戦車のプラモデルを開発。商品クオリティの向上も相まって、模型ファンが増大しました。そんなニーズをいち早く掴み、『月刊ホビージャパン』はミリタリープラモデルを積極的に掲載。表紙もミニカーから戦闘機や戦車に変わっていき、模型専門誌へと軸足を移していきます。部数の好調さもあり、装丁は中綴じから平綴じに、ページ数も増え、ようやく雑誌としての体裁を整えていきます。
1980年、そんな『月刊ホビージャパン』にさらなる転機が訪れます。ガンプラブームです。雑誌所属のプロモデラーからの熱いリクエストもあり、ガンプラを誌面に載せると大反響。別冊「HOW TO BUILD GUNDAM」シリーズの大ヒットもあり、編集部には当時小学生だったファンからの問い合わせ電話が殺到したそうです。もちろん掲載号はこれまでにない販売部数を記録しました。
ただ、編集部内では、この反響に押されてガンプラを大きく扱うと、読者の極端な低年齢化が進んで、これまで買い支えてくれた往年の読者が離れてしまうのではないか?といった不安の声も一部上がったようです。しかし、今後の模型市場の拡大、そして何より誌面を楽しみにしてくれている読者のためにと、ガンプラの扱いを徐々に増やし今に至ります。
結果としてその決断は正しかったように思います。もちろんガンプラ以外の戦車や車、飛行機などのスケールモデルもしっかり扱うことが大前提ではありますが、常に読者やファンが求めるものを素早くキャッチ、そのニーズに応え、ブームの波に乗っていくフレキシブルな発想こそが、『月刊ホビージャパン』がこの55年間、常に模型専門誌の第一線で活躍できた理由だと思っています。このスピリッツは、時代を重ね、編集部員の顔ぶれが変わっても根強く編集部、そして会社全体にしっかりと残っています。
昨今は模型市場もジャンルごとにファンが細分化されつつあります。『月刊ホビージャパン』はすべての模型ファンのためのプラットホームであり続けたいと願っていますが、ファンのニーズに応え、細分化にも対応すべく、新たな定期誌を模索しています。『月刊ホビージャパン』を軸にガンプラ専門誌『ガンダムフォワード』、40~50代メカ好き大人向け『HJメカニクス』、50~60代大人向けノスタルジー誌『ホビージャパンヴィンテージ』、ガールズプラモ専門誌『ガールズプラモスタイル』、スケールモデル専門誌『スケールモデルレビュー』を次々と発刊。さらなる細分化に対応した定期刊行誌も準備中です。
また、本離れが続く若年層向けには、総合ウェブサイト「ホビージャパンウェブ」、公式YouTube番組を用意しました。これも『月刊ホビージャパン』という軸足がしっかり固められているからこそできるチャレンジだと思っています。「常に読者やファンと同じ目線で本やメディアを提供し続けていく」――私たちホビージャパン編集部はいつもその言葉をモットーに、模型やホビーアイテムと楽しく向き合っています。
ホビージャパン『月刊ホビージャパン』編集長
木村学 KIMURA Manabu
1970年生まれ。『月刊ホビージャパン』ほか模型誌にてプロモデラーとして作例を提供。1992年に株式会社ホビージャパンに入社。広告営業部に所属しつつ、『月刊ホビージャパン』編集業務にも携わる。一時会社を離れるも2015年に編集長として復帰。