「読者が選ぶビジネス書グランプリ」は、「ビジネス書における有益性を評価できるのは読者である」というコンセプトのもと、一般投票により表彰されるビジネス書の年間アワードです。今年も、エントリーされたビジネス書の中から総合グランプリを決める一般投票が、12月4日(水)にスタートしました。
さらに「読者が選ぶビジネス書グランプリ」の10回目となる今回は、〈特別賞「10年を彩るビジネス書」〉が設けられています。既刊本を対象に、ビジネスパーソンが「この激動の10年で最も支えになった」と考えるビジネス書に投票し、最も得票数が高かった書籍が特別賞「10年を彩るビジネス書」に選出されます。
そこで、「ほんのひきだし」では、「ビジネス書グランプリ」の歴代の総合グランプリに輝いた作品をピックアップし、フライヤーの要約と合わせて3回にわたってご紹介します。今回は、2022~2024年の3作品です。折々に読み返したい名著の数々を、この機会にぜひ手に取ってみてください。
【2022 総合グランプリ】
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
- 1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書
- 著者:藤尾秀昭
- 発売日:2022年03月
- 発行所:致知出版社
- 価格:2,585円(税込)
- ISBNコード:9784800912619
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』の要点
1.本書には、有名企業の経営者をはじめ、作家、デザイナー、医師、落語家、住職、哲学者、教授、スポーツ監督、指揮者や俳人に至るまで、多岐にわたる分野の著名人たちの哲理が詰まっている。
2.365人それぞれのドラマが、熱い真実の言葉となって1ページに凝縮されている。仕事を通じて人生の秘訣をつかんだ人、悲しみの底に光るものを見つけた人、与えられた環境で精一杯に生きた人。人生を真剣に歩んだ人々が語る言葉は、一様に光を放ち続けている。
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』レビュー
偉大な発明家や起業家の成功談からインスピレーションにつながる刺激を受けたい、偉人の苦労話を教訓として人生に生かしたい――。
このように思うのは真っ当な心情ではないだろうか。本書は、先人たちの残してくれた、有益で、活力を与えてくれる言葉の数々を一冊にまとめた労作だ。
監修したのは、「致知出版社」代表の藤尾秀昭氏。人間学をテーマとした編集方針を掲げた月刊誌「致知」の創刊40年超の歴史を振り返り、その中から365人の言葉を厳選してまとめた。起業家や名うての経営者、作家、デザイナー、医師、宗教家、スポーツ監などさまざまなジャンルで活躍する著名人の人生訓を、一挙に学び取れる。
タイトルにある「仕事」に加え、家庭や日常生活など人生の多くの局面において心の支えとなるエピソードが満載だ。1ページに1人の言葉が記され、1月1日から365日分、各ページに日付が割り振られている。
今回要約で紹介するのは、要約者にとって印象深かった言葉であり、ほんのごく一部に過ぎない。わずか10篇ほどだが、それだけでもほとばしる熱い思いを感じ取っていただけるはずだ。
【2023 総合グランプリ】
『佐久間宣行のずるい仕事術』
- 佐久間宣行のずるい仕事術
- 著者:佐久間宣行
- 発売日:2022年04月
- 発行所:ダイヤモンド社
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784478114797
『佐久間宣行のずるい仕事術』の要点
1.だれにでもできる仕事だからといって、決して手を抜いてはいけない。小さな仕事も、工夫次第で「自分にしかできない仕事」になり、信用とチャンスにつながる。
2.会議直後の5分間が1週間後の自分の評価を変える。すぐに要点整理とアウトプットをして、次回の会議に備えよう。
3.チームを壊しかねない問題児がいるときは、「封じ込め」作戦が効果的だ。
『佐久間宣行のずるい仕事術』レビュー
本書の著者、佐久間宣行氏はテレビプロデューサーとして「ゴッドタン」や「あちこちオードリー」といった人気番組を生み出してきた。パーソナリティを務めるラジオ番組「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」にも多くのファンがいる。
ただ、テレビの仕事をしているからといって「自分の仕事とはまったく違う」「参考にならない」と思うのは尚早なのがこの本だ。
佐久間氏は、実は業界に飛び込んですぐ「自分は芸能界もテレビ界も苦手っぽい」と気づいたという。実際、苦労も多かったそうだが、それでも懸命に工夫を重ね、現在のポジションを手に入れた。そうした蓄積をもとに、本書には「入社当時の絶望から20年以上かけて僕が身につけた作戦の数々」が詰め込まれている。
印象的なエピソードを一つ紹介しよう。入社1年目、佐久間氏はドラマのアシスタント・ディレクターだった。雑用ばかりの日々に不満を抱いていたある日、監督から、翌日の撮影で使う「サッカー部の女子マネージャーの手づくり弁当」を用意してこい、と言われる。ほとんど画面には映らない小道具だが、依頼された以上、なんとか用意するしかない。
さて、ここで佐久間氏はどのように行動し、これをチャンスに変えたのか。ぜひその答えを要約で確認してほしい。この経験をきっかけに、雑務が「佐久間の仕事」に変わり、仕事がおもしろくなったという。
誰でもすぐ使える仕事術が詰まった本書。新人からベテランまで、楽しみながら結果を出したい人に読んでほしい一冊だ。
【2024 総合グランプリ】
『きみのお金は誰のため』
- きみのお金は誰のため
- 著者:田内学
- 発売日:2023年10月
- 発行所:東洋経済新報社
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784492047354
『きみのお金は誰のため』の要点
1.ボスは優斗に3つの謎をつきつける。その1つがお金に価値がないというものだ。しかし優斗はなかなか信じられない。そんな優斗にボスはトランプを使って、ただの紙切れが価値を持つ瞬間を見せるのだった。
2.お金の価値を知ると同時に、優斗はお金が人と人をつなげていることを知る。お金の先には必ず誰かの働きがある。お金のおかげで人々は支え合っているのである。
3.一見お金があれば何もかも解決できてしまうような気がする。しかし、ボスはお金に物事を解決する力はないと説明する。お金そのものは無力だ。優斗はそのことを納得することになる。
『きみのお金は誰のため』レビュー
お金。現代社会でそれを身近に感じない人はいない。誰もがその価値を知っているし、誰もがそれを追い求める。ほとんどの人はお金欲しさに労働し、給料としてお金をもらう。
しかし、立ち止まって考えてみる。お金とは一体何なのだろうか。汗水流して手に入れた一万円札。それ自体はただの紙切れのはずだ。なぜこんなものをもらって、人は喜ぶのだろうか。よくよく考えれば、私たちはお金について知らないことが多い。いや、自分がお金について無知なことすら気づかずに生きている。
本書は、我々がお金に対して抱いている誤解を解くところから始まる。お金にまつわる過大評価や幻想をいとも鮮やかに振り払うのだ。物語は主人公である優斗が、「ボス」からお金にかんする講義を受けることで進んでいく。経済や金融の前提知識は必要ない。中学生の優斗と同じ目線で、身近でわかりやすい例を通してお金への理解を深めることができる。
「お金自体に価値はない」。そう言われてもすぐには納得できず、異を唱える人が多いはずだ。詭弁だ。きれいごとだ。現実を見ろ。そんな言葉が脳裏を掠めるのも無理はない。しかし、本書を読み終わったらきっとこう思うはずだ。「たしかに、お金に価値はない」と。それほど本書は華麗に新たな視点をもたらしてくれる。お金は大事だ、お金がたくさん欲しいと思っている人にほど、本書をおすすめしたい。
〉第1回(2016~2018)、第2回(2019~2021)はこちら
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