「平野啓一郎」2023年書籍ベストセラーランキング発表
京都大学在学中に文芸誌『新潮』に投稿した『日蝕』で、1999年に芥川賞を受賞した平野啓一郎さん。23歳での受賞は当時最年少で、中世ヨーロッパの錬金術や魔女裁判というモチーフと、古典的かつ壮麗な文体も相まって、旋風を巻き起こしました。続く『一月物語』『葬送』とロマン主義三部作を発表した後は、作品の舞台を現代に移します。
『高瀬川』『滴り落ちる時計たちの波紋』『顔のない裸体たち』『あなたが、いなかった、あなた』など実験的な短編集や中編を刊行。その後は、『決壊』や『ドーン』『空白を満たしなさい』『マチネの終わりに』『ある男』など、SFや恋愛、自身の提唱する「分人主義」など、さまざまな要素を織り込んだ長編の話題作を執筆していきます。中でも『マチネの終わりに』と『ある男』は実写映画化され、どちらもヒットを記録しました。11月8日(金)からは、デジタル化社会の功罪を描いた『本心』が池松壮亮さん主演で実写映画化され、公開の予定です。
美術や音楽に造詣が深く、重厚感のある作風が平野作品の特徴です。また政治や経済、社会にも目を向けた発言も行っており、エッセイや評論のジャンルでも活躍してきました。特に、『本の読み方』『小説の読み方』は本好き、小説好きに広く支持されるロングセラーです。また、「分人主義」をわかりやすく解説した『私とは何か 「個人」から「分人」へ』のほか、『「カッコいい」とは何か』や『死刑について』、第22回小林秀雄賞を受賞した『三島由紀夫論』など、幅広いテーマの作品が多くの読者に読まれています。
今回は、平野さんの書籍で、2023年の販売冊数を集計したベストセラーランキングをご紹介します。ランキングをご参考に、ぜひ書店店頭でお好みの1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2023年の販売冊数を集計しています(集計期間:2023/1/1~2023/12/31)
※日販調べ
2023年に一番人気の作品は…?!
平野啓一郎さんの書籍で、2023年に一番人気があった作品は、『ある男』でした。
本作は「ある男」の正体を追う弁護士を主人公に、過去を変えて生きる男たちの姿を通して、愛にとって過去とは何か、人にとって愛とは何かを描く、人間の存在の根源に迫ったヒューマン・ミステリーです。
第70回読売文学賞を受賞した平野さんの代表作のひとつであり、また本作が原作の、2022年に公開された映画「ある男」は第46回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ最多の8部門を受賞し、大きな注目を集めました。
『ある男』
著者:平野啓一郎
発売日:2021年9月
発行所:文藝春秋
定価:924円(税込)
ISBN:9784167917470
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。愛にとって過去とは何か? 幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。第70回読売文学賞受賞作。キノベス!2019第2位。
(文藝春秋BOOKS『ある男』より)
「平野啓一郎」2023年書籍(小説)ベストセラーランキング第2位~第10位
第2位『本心』
- 本心
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2023年12月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:979円(税込)
- ISBNコード:9784167921361
愛する人の本当の心を、あなたは知っていますか?
「母を作ってほしいんです」――AIで、急逝した最愛の母を蘇らせた朔也。
孤独で純粋な青年は、幸福の最中で〈自由死〉を願った母の「本心」を探ろうと、AIの〈母〉との対話を重ね、やがて思いがけない事実に直面する。
格差が拡大し、メタバースが日常化した2040年代の日本を舞台に、愛と幸福、命の意味を問いかける。
(文藝春秋BOOKS『本心』より)
第3位『マチネの終わりに』
- マチネの終わりに
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2019年06月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:979円(税込)
- ISBNコード:9784167912901
たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だった――
天才ギタリスト・蒔野聡史、国際ジャーナリスト・小峰洋子。
四十代という“人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死など、現代的テーマが重層的に描かれる。
最終ページを閉じるのが惜しい、至高の読書体験。
第2回渡辺淳一文学賞受賞作。(文藝春秋BOOKS『マチネの終わりに』より)
第4位『私とは何か 「個人」から「分人」へ』
- 私とは何か
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2012年09月
- 発行所:講談社
- 価格:968円(税込)
- ISBNコード:9784062881722
嫌いな自分を肯定するには? 自分らしさはどう生まれるのか? 他者との距離をいかに取るか? 恋愛・職場・家族……人間関係に悩むすべての人へ。小説と格闘する中で生まれた、目からウロコの人間観!
(講談社BOOK倶楽部『私とは何か 「個人」から「分人」へ』より)
第5位『三島由紀夫論』
- 三島由紀夫論
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2023年04月
- 発行所:新潮社
- 価格:3,740円(税込)
- ISBNコード:9784104260102
三島はなぜ、あのような死を選んだのか――答えは小説の中に秘められていた。『仮面の告白』『金閣寺』『英霊の声』『豊饒の海』の4作品の精読で、文学者としての作品と天皇主義者としての行動を一元的に論じる画期的試み。実作者ならではのテキストの深い読みで、その思想をスリリングに解き明かす令和の決定版三島論。
(新潮社公式サイト『三島由紀夫論』より)
第6位『空白を満たしなさい(上・下)』
- 空白を満たしなさい 上
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2015年11月
- 発行所:講談社
- 価格:748円(税込)
- ISBNコード:9784062932486
- 空白を満たしなさい 下
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2015年11月
- 発行所:講談社
- 価格:748円(税込)
- ISBNコード:9784062932899
ある夜、勤務先の会議室で目醒めた土屋徹生は、帰宅後、妻から「あなたは3年前に死んだはず」と告げられる。死因は「自殺」。家族はそのため心に深い傷を負っていた。しかし、息子が生まれ、仕事も順調だった当時、自殺する理由などない徹生は、殺されたのではと疑う。そして浮かび上がる犯人の記憶……。
死者たちが生き返ってくる世界を、息を呑む圧倒的なリアリティで描き出し、現代における「自己」という存在の危機と、「幸福」の意味を追究して、深い感動を呼んだ傑作長編。
(講談社BOOK倶楽部『空白を満たしなさい(上)』より)
第7位『日蝕・一月物語』
- 日蝕/一月物語
- 著者:平野啓一郎 平野啓一郎
- 発売日:2011年01月
- 発行所:新潮社
- 価格:825円(税込)
- ISBNコード:9784101290409
錬金術の秘蹟、金色に輝く両性具有者(アンドロギュノス)、崩れゆく中世キリスト教世界を貫く異界の光……。華麗な筆致と壮大な文学的探求で、芥川賞を当時最年少受賞した衝撃のデビュー作「日蝕」。明治三十年の奈良十津川村。蛇毒を逃れ、運命の女に魅入られた青年詩人の胡蝶の夢の如き一瞬を、典雅な文体で描く「一月物語」。閉塞する現代文学を揺るがした二作品を収録し、平成の文学的事件を刻む。
(新潮社公式サイト『日蝕・一月物語』より)
第8位『小説の読み方』
- 小説の読み方
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2022年05月
- 発行所:PHP研究所
- 価格:946円(税込)
- ISBNコード:9784569902197
本書は、現代の純文学からミステリーまでの11作品を題材に、物語をより深く楽しく味わうコツを、人気小説家がわかりやすく解説。小説を読んだ後、SNSで、作品の感想を書いたり、意見交換ができるようになる1冊です。
「冒頭で、私は、動物行動学者のティンバーゲンによる『四つの質問』を紹介している。これは、文学に限らず、映画にも美術にも通用する問いであり、何かを鑑賞したあと、人とそれについて話をしたり、自分で感想を書いたりする際には有効な着眼点となるだろう」(本書「文庫版によせて」より抜粋)
(PHP研究所公式サイト『小説の読み方』より)
第9位『本の読み方 スロー・リーディングの実践』
- 本の読み方
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2019年06月
- 発行所:PHP研究所
- 価格:836円(税込)
- ISBNコード:9784569768991
情報が氾濫している現代社会だからこそ、著者は「スロー・リーディング」を提唱する。「量」より「質」を重視した読書経験は、5年後、10年後にも役立つ教養を授け、人生を豊かにしてくれるだろう。夏目漱石、森鴎外、フランツ・カフカ、川端康成、三島由紀夫など不朽の名作から自作の『葬送』まで――。深く理解することが可能になる、知的で実践的な読み方を紹介する。新書版を加筆・修正し再編集。
(PHP研究所公式サイト『本の読み方 スロー・リーディングの実践』より)
第10位『死刑について』
- 死刑について
- 著者:平野啓一郎
- 発売日:2022年06月
- 発行所:岩波書店
- 価格:1,320円(税込)
- ISBNコード:9784000615402
死刑廃止の国際的な趨勢に反し、死刑を存置し続ける日本。支持する声も根強い。しかし、私たちは本当に被害者の複雑な悲しみに向き合っているだろうか。また、加害者への憎悪ばかりが煽られる社会は何かを失っていないだろうか。「生」と「死」をめぐり真摯に創作を続けてきた小説家が自身の体験を交え根源から問う。
(岩波書店公式サイト『死刑について』より)
著者のプロフィール
平野啓一郎
ひらの・けいいちろう。1975年、愛知県生まれ。京都大学法学部卒。1999年、大学在学中に文芸誌『新潮』に投稿した『日蝕』により芥川賞を受賞。著書は小説作品として、『日蝕・一月物語』、『葬送』、『高瀬川』、『滴り落ちる時計たちの波紋』、『顔のない裸体たち』、『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『ドーン』(第19回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、『かたちだけの愛』、『空白を満たしなさい』、『透明な迷宮』、『マチネの終わりに』(第2回渡辺淳一文学賞)、『ある男』(第70回読売文学賞)、『本心』などがある。評論、対談、エッセイとして、『文明の憂鬱』、『ディアローグ』、『モノローグ』、『私とは何か 「個人」から「分人」へ』、『「生命力」の行方 変わりゆく世界と分人主義』、『「カッコいい」とは何か』などがある。
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