- なぜ働いていると本が読めなくなるのか
- 著者:三宅香帆
- 発売日:2024年04月
- 発行所:集英社
- 価格:1,100円(税込)
- ISBNコード:9784087213126
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の要点
1.現代日本では、本がじっくり読めない(=自分の人生に必要な「文化」に時間をさけない)働き方がマジョリティとなっている。
2.インターネットなどによってすぐ得られる「情報」に対して、読書によって得られる「知識」にはノイズ(偶然性)が含まれる。余裕なく仕事にのめり込む労働者たちにとって、趣味もまた仕事のノイズとなる。
3.「働きながら本を読める社会」をつくるために、私たちはさまざまな分野に「半身」で取り組むべきだ。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』レビュー
現代日本において、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という書名を目にして、「自分のための本ではない」と思える人はいったいどれだけいるだろう。たとえいたとしても、「本が読めなくなる」を「映画が観られなくなる」や「推しの最新情報を追いきれなくなる」に置き換えたとしたら、反応は変わってくるはずだ。
著者の三宅香帆氏は文芸評論家として活躍し、文章術などの発信でも多大なる支持を集める人物だ。『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作に触れたことのある方も多いだろう。
三宅氏は、大学院在学中にデビュー作『人生を狂わす名著50』を上梓した、筋金入りの本好きだ。だがそんな著者でさえ、働き始めると、スマホを見る時間はあるのに本が読めなくなったという。その経験をネットに綴ると共感の声が多く寄せられ、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いを設定するに至ったそうだ。
本書では、近代以降の日本における働き方と読書の関係に注目しながら、この問いの答えを導き出していく。最後に提示される結論と「働きながら本を読める社会」を実現するための提案は、鮮やかでやさしい。おそらく多くの人が納得し、拍手喝采を送るはずだ。
読書であれ、映画であれ、推しを愛でたり応援したりする活動であれ、私たち一人ひとりの「聖域」を仕事に奪われてしまってはならない。スマホをダラダラ眺める時間はあるのになぜか本は読めない、そんな現状を自分の怠惰さゆえだと結論づけてしまっている方に手渡したい一冊だ。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が気になる方におすすめ
- 世界は経営でできている
- 著者:岩尾俊兵
- 発売日:2024年01月
- 発行所:講談社
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784065346440