この青春、ください
放課後、制服姿で彼氏と手をつないで歩いたり、プリクラを撮ったり、遊園地に行ったり……。制服デートのきらめきは期間限定。大人になった今、そんな通り過ぎてしまった憧れに、もしも手を伸ばせるとしたら?
ずっと前から胸にくすぶる憧れを、今取り戻したっていいじゃない! 『おくれまして青春』は、制服デートに憧れた20歳の女子大生・わかばの遅れた青春が走り出すストーリー。「こんな青春、欲しかった!」を、全部入りでお届けします。
制服デートを「したことがない側」の人間、茅野わかば。彼女は勉強一色の高校時代を過ごした、いわゆる大学デビュー女子です。あか抜けたヘアメイクとファッションで大学生活を楽しんではいるけれど、制服デートへの憧れはいまだ捨て去ることができません。ハロウィンはコスプレとして制服を着て、街に出ます。
とはいえ、一人歩きの制服女子にはナンパがつきもの。困っているわかばの前に現れたのは、イケメン高校生・橘郁斗でした。
まるで彼氏のように堂々と、大人の男みたいにスマートに、わかばをナンパ男子から解放してくれる郁斗。これにはナンパ男子もキュンキュンです。
「大学生のイケてる自分×制服」のパワーで、憧れシチュエーションの一つ「イケメン彼氏と制服姿で手をつないで歩く」を突然叶えてしまったわかば。これは今日限りの姿だけど、それならそれで逆に勇気が湧いてくるというもの。わかばは郁斗に「今日だけは何も考えず、ただ楽しいことをして、青春したい」と、制服デートを申し込みます。無謀なお願いと思いきや、なんとOK!
カップルのようにお茶したり、
制服プリを撮ったり、
特別な一日は夢のように過ぎていきます。イケてるルックスとスマートなエスコートに反して、郁斗のほうも制服デートは初めてのよう。
なんか
ときめいちゃうなぁ
もし 私も高校生だったら
付き合う未来とかもあったのかな
制服デートの終わりが近づき、名残惜しさを感じるわかば。
大人の私は「彼氏が年下のカップルなんてたくさんいる! 大丈夫!」と応援したくなりますが、「大学生のわかば」だったら、そもそも郁斗と知り合うことも、今日の制服デートも実現していないわけで……。
しかし、そんな感傷もぶっとぶ大ピンチがわかばを襲うのです。
まだ終わりたくない
安心してください。いろいろあって、二人の制服デートは延長戦に突入します。
ここまでの経緯が本当によくて、心の距離がぐっと近づくのが目に見えるよう。思わず「良かったねえー!」と声が出ます。
そして「ファミレスでの制服デート」これも憧れシチュエーションですよね。わかばは繊細なところもあるのですが「制服デート」に関してはかなり貪欲。やりたいことはどんどんリクエストします。そして、「なんか見ただろ」と言いつつも、そんなわかばの妄想青春デートを一切バカにせず、付き合ってくれる郁斗もたまりません。
「青春を取り戻したい!」が原動力とはいえ、全力で制服デートを楽しむわかばは、本当に何をしていても嬉しそうで、感情を素直に表す様子が可愛いです。これなら何でも叶えてあげたくなってしまう……。
郁斗もきっとそう思っているはず。
このマンガにおける制服は、単なるコスプレのツールではありません。「制服デート」であることが、二人の関係を盛り上げている部分もあるのです。
どうしてこうなった?な急接近も、「制服デート」だから起きたこと。制服姿ゆえのあれこれが、デートはしても恋人ではない二人の距離を近づけていきます。
そして、はたから見ればカップルの二人は、「相手のどこが好き?」なんて聞かれることも。場の空気を壊さないよう「適当で」というわかばに郁斗がささやく答えは……。
ああ、どう見てもいい感じなのに、本人たちは確信が持てていなそうな「両片思い」ムードがたまりません。
「いつまで続くかわからない」とわかばは言うけど、まだ終わりたくないし、終わらないんじゃないかな……思わず期待せずにはいられません!
*
(レビュアー:中野亜希)
- おくれまして青春 1
- 著者:吉良はなまる
- 発売日:2024年03月
- 発行所:講談社
- 価格:550円(税込)
- ISBNコード:9784065350737
※本記事は、講談社コミックプラスに2024年4月5日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。