ほわほわする……!
「わたしにはこの人しかいない!」と狙いを定めて恋をする子もいれば、いつのまにか「あれ?」と恋に包まれている子もいます。『ハルメイ』の主人公・“芽以(めい)”は後者のタイプ。もう、あきらかに、ほわほわ~っと包まれまくっているのに、まだギリギリ気付いてない16歳
「好き」ってどんな気持ちなの? たぶん、芽以は“鈍感さん”とも少し違うんじゃないかなあと私は思います。ていねいな性格なんでしょうね。未知のものの姿を一生懸命見つけようとしてる。
そんな彼女を包んでいるのは二つの恋。まるでどっちも「はやく見つけてくれ~」といった感じで芽以を待ち構えていたように見えます。
家族同然の“ハル兄”。芽以が小学校入学前からの仲良しで10歳年上。ご近所に暮らすハル兄は、今や26歳の会社員。大人! でも芽以に毎朝起こしてもらって、お弁当まで作ってもらってる。好きなおかずはハンバーグでブロッコリーが苦手。大人なの!? とにかく、二人は兄と妹のような間柄。
10年かけて積み上げた二人のほんわかした関係に割って入ることなんて誰にも無理なんじゃない? いいえ、そんなことはないのです。
芽以と同い年の幼なじみ、“漣(れん)”。名前の通りの美しさ。ハルメイの1巻は、この漣がものすごい。10年続く兄と妹的ほわほわを猛追するほわほわワールドを展開します。
漣は強引なことなんて何もしないのに、芽以を優しくふわっと包むあったかさで嵐を起こすんです。なんだか勝手に壁ドンを感じてしまう。壁ドンなんてしてないし、むしろ目をそっとそらしたり、ソフトでデリケートなのに! すごい。
そして、そんな嵐をいち早く察知するのは……?
兄的ポジションで芽以を大切に見守ってきた26歳のハル兄、もしかして動揺してる?
「何回か彼女っぽい人いたりしたし」
芽以とハル兄の関係は、他の人から見ると「恋人?」な感じ(私も最初そう思ったよ!)。
でも芽以は、自分たちは家族みたいなものと言い続けます。芽以が毎朝お弁当を作ってあげるのも、起こしてあげるのも、家族的な感覚でそうしているからだと。
そんな芽以の様子を毎日のように見てきた親友の“環(たまき)”は、ある日こんなことを言います。
環、鋭いなあ。「家族的な感覚」から「無意識の愛情」を引っ張り出してる。でも芽以の気持ちもよくわかる。10歳年上のハル兄には、過去何度か“彼女っぽい人”がいたようだし(この“ぽい”が大事! ハル兄は「彼女だよ」なんて紹介してくれてないのです)、その人と自分は別物だと思うし……。
それに、なんでも教えてくれそうなハル兄は過去の恋愛のことを全然語りたがらない。26歳なりの気づかいかもしれないけれど、芽以は距離を感じてしまうだろうな(ハル兄は、大人の私から見て超まともな男性です)。
とはいえ、環の一言がきっかけで芽以は調子が狂いっぱなし。ハル兄とのおしゃべりも上の空だったり、「好き 気付く」とかで検索してみたり。
どんなにSNSでみんなが恋について語っていたとしても、自分の心の答えなんて見つからないようです。大真面目に検索してみて、その検索結果に「うーん」って迷う芽以のていねいさが私はとても好き。
芽以のていねいな性格は、こんなエピソードからも読み取れます。
かっこよすぎるあまり他校生からも羨望のまなざしを集めまくっている漣は、通学中によく盗撮されていました。その現場を、芽以は偶然見つけてしまうんです。
言ったー! えらいよ。でも盗撮した女の子(芽以の高校の先輩!)は「今時このくらいいじゃん」って反応で……。
芽以は、友達が盗撮されてることが見過ごせないし、マウントとか失礼なことを言われても頭を下げて写真を消してもらおうとしてる。そんな芽以のいいところを漣もちゃんと知っています。
だから漣が芽以に向けるまなざしや、優しさと愛しさが隠せない感じは、必然なんです。
そして漣と芽以は同い年。高校生らしい胸キュンな出来事が山ほど起こります。
放課後に漣が正門で待ってたり!
芽以の変化に気がついたハル兄はどうするの?
夜景を見ながらこんな優しい言葉をかけてくれるのは、大人ならでは。ああ、夕方の正門での待ち合わせと、都会の夜景。叶うなら私は両方ほしい。
選べないよー!と思いながら読んでしまうけど……?
「漣」という漢字には「さざなみ」という読み方もあります。漣ってば、その名の通りのさざなみを起こしてる! 最高です!
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(レビュアー:花森リド)
- ハルメイ 1
- 著者:雨宮うり
- 発売日:2024年02月
- 発行所:講談社
- 価格:550円(税込)
- ISBNコード:9784065346860
※本記事は、講談社コミックプラスに2024年3月8日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。