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「2024年本屋大賞」ノミネート作をご紹介!第3弾は夏川草介さん『スピノザの診察室』

2月1日(木)、「2024年本屋大賞」のノミネート10作品が発表されました(関連記事)。

今回で21回目となる本屋大賞ですが、2023年12月1日~1月8日に一次投票が行われ、全国の530書店、書店員736人から投票がありました。その結果、上位10作品を「2024年本屋大賞」ノミネート作品とし、2月29日(木)まで二次投票が行われます。大賞は4月10日(水)に発表が予定されていますが、書店店頭の多くは、それらノミネート作を集めたフェアを実施しています。

ほんのひきだしでは、ノミネート10作品の中から気になる作品を短期連載形式でご紹介します。ぜひ、書店店頭に足を運んでノミネート作品を手に取ってみてください。

 

【Vol.3】夏川草介『スピノザの診察室』

今回は、累計発行部数340万部のベストセラーとなっている「神様のカルテ」シリーズの著者・夏川草介さんの最新作『スピノザの診察室』をご紹介します。

今も現役医師として地域医療に携わりながら、命と向き合う日々の経験をもとに、温かく誠実な筆致で物語を生み出し続ける夏川さん。『スピノザの診察室』は、京都の市中にある地域病院を舞台に、町の人たちとのふれあいを通じ、生きることの本質を、深く優しいまなざしで綴られた作品です。

著者:夏川草介
発売日:2023年10月27日
発行所:水鈴社発行/文藝春秋発売
判型:四六判上製・288ページ
定価:1,870円(税込)
ISBN:9784164010068

 

【あらすじ】

雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。

(水鈴社公式サイト『スピノザの診察室』より)

 

今回は、本作の担当編集者である水鈴社の篠原一朗さんに本書の魅力をご寄稿いただきました。

 

医師として作家としての集大成の作品

夏川草介さんに新作の執筆を依頼したのは、もう14年も前のことになります。その間、日本にはいくつもの厄災があり、コロナにも見舞われ、夏川さんは常に作家業より、医師としての活動を優先されてきました。

夏川さんは、常々、「自分はあくまでも医師であり、小説を書くことは、医師としての自分の足場を固める作業でもあります」と語られています。

そんな夏川さんの、これまでの集大成とも言える作品が、この『スピノザの診察室』です。

この作品で描かれているのは、派手な立ち回りや教授たちの権力闘争ではなく、地域医療や終末医療といった、日本人の誰しもが遠くないうちに向き合わなくてはならない、頭の痛い問題ばかりです。

でも、自分はこの作品を読んで、ワクワクしてしまったのです。

「解決し難い問題を抱えていても、愉しく生きることはできる」

夏川さんと、京都の地域病院で飄々と働く敏腕内科医の哲郎が、そんなことを教えてくれたような気がしています。

「一人でも多くの読者に小説の面白さを届けたい」「刊行点数を絞りに絞って、自信作だけを送り出したい」。

そんなことを考えながら、2020年に水鈴社を立ち上げました。

でも、最近では、僭越ながら「作品を通して世の中や人の気持ちを、少しでも前に向けられたら」という気持ちが芽生えてきているのを感じていて、自分でも少し驚いています。

『スピノザの診察室』は、そんな水鈴社の理想を体現するような作品となりました。とはいえ堅苦しいことは一切ない、一気読み必至のエンターテインメントです。

夏川さんの渾身の一作を、ぜひ、一人でも多くの方にお読みいただけたらと願ってやみません。

 

担当編集者がおすすめする夏川作品3選

神様のカルテ 0
著者:夏川草介
発売日:2017年11月
発行所:小学館
価格:726円(税込)
ISBNコード:9784094064704

臨床の砦
著者:夏川草介
発売日:2022年06月
発行所:小学館
価格:704円(税込)
ISBNコード:9784094071528

本を守ろうとする猫の話
著者:夏川草介
発売日:2022年09月
発行所:小学館
価格:715円(税込)
ISBNコード:9784094066845

 

著者メッセージとプロフィール

読者へのメッセージ

医師になって20年が過ぎました。その間ずっと見つめてきた人の命の在り方を、私なりに改めて丁寧に描いたのが本作です。
医療が題材ですが「奇跡」は起きません。腹黒い教授たちの権力争もないし、医者が「帰ってこい!」と絶叫しながら心臓マッサージをすることもない。しかし、奇跡や陰謀や絶叫よりもはるかに大切なことを、書ける限り書き記しました。
今は、先の見えない苦しい時代です。けれど苦しいからといって、怒声を上げ、拳を振り回せば道が開けるというものでもないでしょう。少なくとも私の心に残る患者たちは、そして現場を支える心ある医師たちは、困難に対してそういう戦い方を選びませんでした。
彼らの選んだ方法はもっとシンプルなものです。すなわち、勇気と誇りと優しさを持つこと、そして、どんな時にも希望を忘れないこと。本書を通じて、そんな人々の姿が少しでも伝われば、これに勝る喜びはありません。

夏川草介(なつかわ・そうすけ)
1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書は2010年本屋大賞第2位となり、映画化された。他の著書に、世界数十か国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著者が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など。

 

本屋大賞とは

「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去1年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。21回目となる今回の本屋大賞のノミネート作品は以下の通りです。

【ノミネート10作品】

書    名 著  者 出版社
『黄色い家』 川上未映子 中央公論新社
『君が手にするはずだった黄金について』 小川哲 新潮社
『水車小屋のネネ』 津村記久子 毎日新聞出版
『スピノザの診察室』 夏川草介 水鈴社発行/文藝春秋発売
『存在のすべてを』 塩田武士 朝日新聞出版
『成瀬は天下を取りにいく』 宮島未奈 新潮社
『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』 知念実希人 ライツ社
『星を編む』 凪良ゆう 講談社
『リカバリー・カバヒコ』 青山美智子 光文社
『レーエンデ国物語』 多崎礼 講談社

 

【2024年本屋大賞ノミネート作品関連記事】

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