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サスペンスなのかギャグなのかキュンなのか――殺したい男と殺されたくない女子高生の想いが交錯する!『キリングライン』

もしも「少女マンガって甘すぎてちょっと苦手」と話している人がいたら、「ちょっと待った――!!」と全力で割り込んでこのマンガを印籠のように見せつけたい……!

冒頭10ページ目にしてこんなハードボイルドなシーンが登場する少女マンガはこれまでにあっただろうか……!

モリエサトシ先生の最新作『キリングライン』は殺したい男と殺されたくない女子高生の想いが交錯するサバイバルラブコメディです。

 

生きるために媚を売る!

天涯孤独となった女子高生・まこは友人の紹介でパパ活を始める。猫をかぶるのが得意なまこは余裕で初日を終えたのだが、殺し屋にパパが殺される現場を目撃してしまう!(これが先ほどのシーンですね!)

見逃してと懇願しても表情を変えずに無慈悲な対応をする殺し屋・煙(えん)。

絶体絶命……! 必死にこの場を逃れようとまこが考えて口にしたのは「映画を見る約束があるからそれを観ずには死ねない」ということ。

すると煙の表情が一変!?

何と彼は映画館の館長というもう一つの顔を持っており、まこを映画に誘った張本人だったのです!

チャンスを見つけたまこは生き延びるため、得意の媚を武器に煙から愛されるように仕向けるが――!?

 

サスペンスなのかギャグなのかキュンなのか

本作の魅力はこのトンデモ設定に読者がツッコミを入れるよりも先に、ドンドンと読者を巻き込んでいくようなテンポの良さが挙げられます。ちょっと(いや相当?)ズレた殺し屋・煙の言動に対するまこのツッコミは的確で、作品のテンションを終始上げてくれています。

もちろん少女マンガとしてのキュンもしっかり盛り込まれています! 掴みどころのない煙ですが、ふとしたときに見せる大人の色気と言動は、まこ同様に思わずクラッとしてしまうはず!

先の読めないハラハラ感はサスペンスのようであり、ノリツッコミのテンポはギャグのようであり、胸キュン要素を忘れないところは王道の少女マンガのようであり……色んな要素を詰め込んでいるにもかかわらず、ごちゃつきが無くしっかりとまとまっているからすごい……! 甘いだけじゃない、甘辛ミックスコーデを着こなすような少女マンガで今冬ぜひとも注目して欲しい作品です!

 

主人公が不憫すぎて応援したくなる!

ところで、本作の主人公である女子高生まこですが、本当に不憫すぎるんです! 親に愛されず、天涯孤独となってからも自分で稼ごうとするも、殺されかけたパパ活は友人による裏切りがきっかけだと知ります。

猫かぶりのぶりっ子ではありますが、これは生きるための術であり、むしろ幸せになって……!と応援したくなる可愛さがあります。

無慈悲な殺し屋であり、ロマンチックな映画館館長という両面を持った煙に振り回されるまこですが、逆に煙を手玉にとって振り回せるようになれるのか!?

1巻ではまず第一関門(!?)は突破し生き延びられているまこですが、すでに次の刺客が待ち構えているような終わりで、2巻もノンストップサバイバルは続きそうです!

(レビュアー:Micha)

キリングライン 1
著者:モリエサトシ
発売日:2023年11月
発行所:講談社
価格:759円(税込)
ISBNコード:9784065335819

※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2023年12月12日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。