友達や先輩のアドバイスもありがたいのですが、できればもっと大きな観点から、腑(ふ)に落ちるアドバイスが欲しいと思うことがあります。
ふと、「お坊さんだったら何て言うのだろう」と思っていたときに、この本に出会いました。
『10人のお坊さんにきいてみた』は、人として生きていたら誰もがぶち当たる5つの問題、「イライラ」「承認欲求」「生きる意味」「忘れられない過去」「見た目」をお坊さんが「説法」で応えてくれます。
第一章は「イライラ」。確かに現代は、イライラしている人がとても多い!!
本では、アンケートやヒアリングによって集められたエピソードが載っていて、「うん、わかる」というものもあれば、「へぇ、そんなことあるんだ」というものまで様々。
私はというと、根が平和主義なのでイライラは少ないのですが、イライラしている人の“とばっちり”を受けて、イライラすることがあります。
例えば、まったく知らない人からバカ野郎!!と怒鳴られるとか。
なんと、これと同じ例えが出てきてびっくり。
これに対し、お坊さんの説法は、「バカ野郎といわれた。前世、前々世で、私も誰かに罵詈雑言を浴びせているからなのだ」と考えるようにしている、というのです。
うわぁ~、勘弁してよ!!と言いたくなりますが、実は私もこの考え方を用いて、自分を落ち着かせることが多かったので、スッと腑に落ちました。
でなければ、あまりにも理不尽なことが多すぎる!!
それぞれの説法は、短い言葉でもまとめられているので、これを読むだけでも、なるほどなぁ!!と感じ入ってしまいます。
色々な宗派のお坊さんが「説法」をといているので、“自分に刺さる説法”を見つけるのは面白い!! もし鎌倉時代に生まれていたら、私はどの宗派を選んだのだろう?とよく考えていたので。
これ以外にも、今まで気になっていたけれど、わざわざ調べるほどでもないし、と放っておいたことを知ることができました。
例えば、お寺などで時々目にする「智慧」という文字。
そもそも、なんて読めばいいのかわからなかったのですが、正解は「ちえ」。
しかも、「知恵」とは違う「ちえ」なのです。
私たちが日頃使っている「知恵」は世俗的なもので、「智慧」は世間を超えるもの。イライラする相手の背景に目を向けて知ろうとすることが、仏教でいう「智慧」なのだといいます。
また、「分別(ふんべつ)がある人」という言葉を私たちはいい意味で使っていますが、仏教では決していい意味ではなく、物事を分けることによって悩みを深めてしまう、ととらえるのだとか。
このように、私たちが日頃使っている言葉には仏教からきているものが意外とあり、日本という国がいかに仏教と深く結びついているかに気付かされます。
また、神社仏閣でよく見かける真言(しんごん)。これを唱えるといいのだな、ということはわかるのですが、さっぱり意味がわからず……。
だけど、いつも「おん~」で始まり「~そわか」で終わるなぁと思っていたら、その意味が載っていました。
「おん=お願いします」「そわか=成就」。
今度、どこかで真言するときは、「成就するようお願いします」と、心を込めて言えそうです。
もう一つ、この本を読んで、ものすごく勉強になったのがコラム。
なんとなくわかったつもりでいたブッタや鑑真のこと、宗派の成り立ちが、とてもわかりやすく書いてあります。
仏教の教えは、なんとなく難しそうなイメージですが、この『10人のお坊さんにきいてみた』はとても親しみやすく、するっ!と頭に入るので、ぜひ自分に合う「説法」を見つけて欲しいと思いました。
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(レビュアー:黒田順子)
- 10人のお坊さんにきいてみた
- 著者:講談社
- 発売日:2023年10月
- 発行所:講談社
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784065332603
※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2023年11月27日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。