2021年に一番売れた本は『人は話し方が9割』！年間ベストセラーを発表

12月1日（水）に2021年の年間ベストセラー（日販調べ）が発表されました（集計期間：2020年11月24日～2021年11月21日）。

今回のランキングは、2020年から引き続き「新型コロナウイルス感染拡大」防止に向けて社会の在り方が一変した影響が色濃く反映された結果となりました。特にデジタルトランスフォーメーションを筆頭とする社会環境の変化への対処法に関心が高まったとみられる、象徴的な作品が【総合ランキング】の第1位、第2位にランクインしました。

また、総合ランキング20位以内で2021年に発売されたタイトルはわずか4タイトル。刊行から1～2年かけてコツコツと売れ続けるロングセラーが目立った年とも言えそうです。

 

2021年の出版市場の全体概況について

ランキングとは異なりますが、2021年は「TikTok売れ」や「鈍器本」といったキーワードで売れた本が話題になりました。書籍紹介で人気のTikToker・けんごさんの紹介により、『余命10年』や『残像に口紅を』などの過去作品が再ブレイク。さらに、TikTokの運営元・ByteDanceと小学館や集英社など複数の出版社と日販によるTikTok連動キャンペーンも展開。こうした動向を受けて出版業界では映像を使った書籍プロモーションに注目が集まっています。

凶器になると思えるほど分厚くて重い書籍を指す「鈍器本」。『読書大全』や『独学大全』のように、500ページ、800ページという分厚い本がベストセラーとなったことで話題になり、「鈍器本フェア」を開催する書店も。コロナ禍で在宅時間が増えたことで「家で本をじっくり読む」人が増えている可能性を指摘する声もありますが、分厚くて売りづらい書籍を「鈍器本」というワードをフックにしたプロモーションの巧みさが売れた理由かもしれません。

それでは、2021年のベストセラー総合ランキングをみていきましょう。

 

【総合】第1位は会話本の決定版『人は話し方が9割』

【総合ランキング】第1位は『人は話し方が9割』。2020年の年間ベストセラーでは第12位、2021年上半期ベストセラーでも第4位と2019年9月の発売から売れ続け、晴れて第1位に登り詰めました。もちろん、単行本ビジネス部門でも第1位で、2020年年間、2021年上半期に続いて3連覇を達成しました。

コロナ禍により、対面コミュニケーションの機会が減少し、テレカンファレンスの常態化などWEB上での会話が増えたことを背景に、「話す力」「伝える力」の重要性を感じたビジネスパーソン等の需要が増加したと考えられます。

同書は11月30日現在、発行部数は27刷・85万部と100万部に迫る勢いです。12月9日には同著者の新刊『人は聞き方が9割』が初版4万部で発売される予定です。

第9位にランクインした『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』も同様に、対面コミュニケーションの減少を問題視する人が手に取っているようです。

 

第2位はデジタルツールの悪影響を説いた『スマホ脳』

第2位には、16か国で発売が決定し世界的ベストセラーとなった『スマホ脳』がランクイン。スマホをはじめとするデジタル機器が人間の脳に与える影響を、膨大な研究結果から医学者である著者がわかりやすく伝えた同書。学力低下、記憶力減退、うつ、睡眠障害、依存……といった数多くの悪影響を指摘し、著者の母国の教育大国スウェーデンでは社会現象と言えるほどの反響を呼びました。

同書が支持されたのは、2021年に「デジタルツールの悪影響」への懸念が社会的に高まったためと言えそうです。コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えデジタルツールとの接触時間が増加したこと、さらには「GIGAスクール構想」の前倒しなどの「デジタルツールと教育」の在り方が変革の時を迎えていたことなどが、懸念が高まった要因とみられます。新潮社によると、「なかでも30〜40代の子育て世代から共感の声が数多く届いた」そうです。

11月30日現在の累計発行部数は18刷・60万部（18刷は12月10日出来）となっています。

そのほか、実業家の西村博之（ひろゆき）さんが「頭のいい生き方」について述べた『1％の努力』（第11位）、人類の経済活動が地球を破壊する“人新世”について警鐘を鳴らした『人新世の「資本論」』（第12位）がランクイン。

大きな変化に見舞われた社会環境や生活様式に対して、自身の生活や生き方について、立ち止まって考える人が増えたと言えそうです。

 

第3位は文芸作品トップの『推し、燃ゆ』

2021年上半期【総合】第1位の『推し、燃ゆ』が第3位に。文芸作品（単行本フィクション）では第1位。著者の宇佐見りんさんは、デビュー作『かか』で史上最年少で三島由紀夫賞を受賞（第33回）、2作目の『推し、燃ゆ』で史上3番目の若さで芥川賞を受賞（第164回）し、たちまち注目の作家として話題となりました。

11月30日現在の累計発行部数は50刷・48万部です。

総合TOP20以内に入った文芸作品は、2020年の1点に対し、2021年は3点。

同書のほか、2021年本屋大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』が第6位、東野圭吾さんの作家生活35周年記念作品『白鳥とコウモリ』が第14位にランクインしました。こちらもコロナ禍の影響で、“おうち時間で楽しむ娯楽”として、文芸作品が選ばれたのかもしれません。

 

総合ランキングベスト10

 

人気急上昇の『星ひとみの天星術』が第4位

2021年に最も売れた占い本は『星ひとみの天星術』です。星ひとみさんは、元々はタレントとして活動していましたが、現在は、独自の運勢鑑定法「天星術」を作り上げて、占い師として活躍しています。多くの著名人と親交が深く、ミュージシャンやアイドル、お笑い芸人など、さまざまな分野の人たちの鑑定をしていることも話題となりました。

2020年12月の発売以降、安定した売れ行きをキープし累計発行部数は41万部に。同著者による『幸せ上手さん習慣』も単行本実用部門の第6位となりました。

 

第5位は『本当の自由を手に入れるお金の大学』

第5位の『本当の自由を手に入れるお金の大学』の著者は、YouTubeチャンネル登録者数163万人超（11月30日現在）の両@リベ大学長さん。2020年6月の発売後、YouTubeでのプロモーション効果により、チャンネル登録者数の増加とともに売上も伸長しています。

 

総合ランキング第11位～第20位

 

コミック『鬼滅』『呪術』関連本も続々ランクイン

「週刊少年ジャンプ」で連載中の人気作品「呪術廻戦」や、「鬼滅の刃」を原作とする関連本が5点ランクイン。第7位の『鬼滅の刃 塗絵帳－蒼－』『鬼滅の刃 塗絵帳－紅－』のほか、JUMP j BOOKSレーベルのノベライズ作品『呪術廻戦　逝く夏と還る秋』（第10位）、『呪術廻戦　夜明けのいばら道』（第19位）、『鬼滅の刃　風の道しるべ』（第20位）が新書フィクション部門でも上位を独占しました。

 

児童書は『パンどろぼう』、『おしりたんてい』新作が上位に

児童書では『パンどろぼう』（第13位）がトップ。2020年4月にシリーズ第1作の本書が発売され、「第11回リブロ絵本大賞」「第1回TSUTAYAえほん大賞」をダブル受賞したことをきっかけに売上を伸ばしています。

児童書第2位は、シリーズ10作目となる『おしりたんてい　おしりたんていの こい！？』（第18位）。幼児から小学生を中心に大人気で、2021年8月の映画公開も追い風となりました。

総合TOP20入りは逃しましたが、2020年9月のアニメ化で火が付いた「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズも2021年の児童書の顔と言えそうです。小学校中高学年を中心に人気で、シリーズ累計の発行部数は350万部を突破しています。

 

2021年“写真集女王”は日向坂46・小坂菜緒さん！

総合TOP20には入りませんでしたが、写真集部門では、アイドルグループ日向坂46のメンバー・小坂菜緒さんの『君は誰？』が第1位となりました。

ちなみに、第2位は同グループのオフショット写真集『日向撮 VOL.01』、第3位にも同グループメンバーの齊藤京子さんの写真集『とっておきの恋人』がランクインし、日向坂46が上位を独占しました。