情緒溢れる「人×怪異」の物語を鮮やかに描く、ろびこ先生の新境地
『となりの怪物くん』『僕と君の大切な話』のろびこ先生、超待望の新刊がついに降臨です!
鹿児島を旅した際、『僕と君の大切な話』の聖地巡礼をするくらいろびこ先生ファンな私(と私の家族)は、今作をとても楽しみにしておりました。

(左:『僕と君の大切な話』4巻P40より。右:写真撮影は私の家族)
今作では、人外キャラ登場という意味でファンタジー要素が盛り込まれているわけですが、そこはろびこ先生。短編ながらも、それぞれのキャラクターを掘り下げて言動やその背景までもしっかりと描いており、自然と感情移入できてしまいます。セリフや絶妙な距離感など、ろびこ先生ならではの、キャラクター同士が生み出す「コミュニケーションの魅力」もふんだんに盛り込まれていて、あっという間に彼女・彼らの世界へと没入できる、まさに“ろびこマジック”炸裂。
学生ラブコメとはまた違う、人と怪異だからこそ生まれる決定的な相違、そして背負った運命が引き起こす、愛しくて切ない連作短編集となっています。
第1話「吸血鬼ちゃん」から全開な“ろびこワールド”
本作は全部で5話から成っており、うち2話は前後編という、全4組による「人×怪異」の物語が紡がれています。そのなかでも、表紙に描かれたキャラが登場する第1話「吸血鬼ちゃん」が、悲哀×キュン×ファンタジーとして本作のオープニングにふさわしい作品に仕上がっています。
人生に絶望し、自殺寸前のところを女子高生に救われたおじさん。気づけば部屋に連れ込まれており、目の前にいる女子高生にいきなり「血をくださいよ」と言われてしまう。実は彼女、吸血鬼。しかも、借金取りに追われている、ミステリアスな少女です。





女子高生の手で口をふさがれ、ドキドキ。血を吸われそうになり、彼女の口が体に急接近でドキドキ。あげく激しいビンタをお見舞いされる……美しいまでの振り回されっぷり。愉快なラブコメ展開に胸躍らせつつも、一方で彼女は、自分を引き取って育ててくれた母親を亡くし、複雑な想いを抱いているという背景も描かれ、ラブともコメディとも違う顔をのぞかせる展開に。

いよいよ借金取りに追い詰められ、「もういいか」の言葉と共に、とある事情で封印していた吸血鬼としての本来の力を解き放とうとする――この直後、ゾクゾクするような展開が訪れます。ああ、言いたい、何が起こるのか、言いたい。けれどここはひとつのクライマックスですから……詳細は、控えます(ぜひ本編で確認を!)。
短編という制約の中で、キャラクターの魅力や会話のやり取りから生まれる面白さ、そしてあっと驚くような物語の構成を見事なまでに整えて仕上げる手腕、さすがろびこ先生です。
「博士と人狼」は前後編の“大作”! 一冊を通して楽しめる連作ならではの醍醐味も
続く第2話と第3話は、人狼を研究する博士と研究対象である人狼のお話。

記憶を失った人狼・ヴェロクと彼を人体ならぬ人狼実験しているマッドサイエンティスト(?)早瀬玲奈(はやせれいな)博士が織り成す、悲哀の中に希望の光も灯る再生の物語です。
何やらわけありなヴェロクと、人狼を使って何を研究しているのか……謎に満ちた研究者の早瀬。最初はひたすら反発するだけだったヴェロクが、少しずつ早瀬と交流を深め、実験にも協力するようになる。けれども――


「実験は失敗」の本当の意味とは。そして早瀬が流した涙のわけは……?
感情を揺さぶる名作「博士と人狼」、さらには、元猫だった小説家と男子高校生の「猫又おじさん」、父とサトリの息子を描いた「夕闇の庭」と、各話それぞれ人物とストーリーに個性があってめちゃくちゃ面白い作品が続きます。けれど第1話「吸血鬼ちゃん」に登場した女子高生吸血鬼とおじさんのふたりも、本作におけるファーストインパクトという効果とも相まって短編1話での退場はもったいないくらい魅力溢れるキャラクター。たった数十ページの出番なんて贅沢すぎると、余韻を引きずりながら読み進めていた、そんな私を思わぬかたちで喜ばせてくれたのが、彼女たちの再登場でした。
そう、本作は連作短編集。つまり全話が同じ世界の中で繋がっていて、第1話のふたりだけでなく、各話のキャラクターたちが様々な場面で顔を出してくれるのです。
短編集には短編集の魅力があります。その中でも、連作短編集の素晴らしいところは、短編の中で主役を担うキャラクターたちが相互に別話へと登場し合うことで、一冊を通して「オールスター集結」のような豪華さを味わえる点。そしてもう一つ、キャラクターや舞台(アパートや研究施設、喫茶店など)が変わっても、すべては繋がっているというワクワク感が生み出される点です。
最初に、あるキャラクターの再登場シーンを目にしたときは、思わずほくそえんでしまいました。これ見よがし、あるいは盛り上げるような描写など一切加えず、ナチュラルにそこにいる、という演出も最高なのです。
ファン(私)感涙! 巻末には『となりの怪物くん』番外編も収録!
『となりの怪物くん』を愛したすべての人に読んでほしい、巻末の番外編。あれから10年が経ち、おなじみの面々が再降臨するのです。ヤマケン、夏目さん、ササヤン、雫、そしてハル。成長し、大人になった彼らの「今」が描かれる、嬉しすぎるエピソード。これはろびこ先生からファンへのサプライズプレゼント。ページをめくりながら、次々と登場する愛おしきキャラクターたちの姿に、ストーリーとは関係なく涙ぐんでしまいました。個人的には、ヤマケン登場コマに大興奮。そして夏目さんは、やっぱり夏目さんだ!と感動でした。
ろびこ先生がこれまでの環境を変え、怪異という新たなジャンルに挑み、月刊ヤングマガジンにて短期連載した意欲的な本作。そのチャレンジが見事に結実したと言っても過言ではない、愛しくて切ない、可笑しくて悲しい4組5話の物語。『となりの怪物くん』番外編というプレゼントをスパイスに、新境地を開拓した最新のろびこ先生をぜひその目で確かめてください!
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(レビュアー:ほしのん)
- 夕闇とかたわれ
- 著者:ろびこ
- 発売日:2026年07月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784065433461
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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年8月2日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。

