人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

  1. HOME
  2. ニュース
  3. ランキング
  4. 平成の年間ベストセラーを振り返る[平成21年~平成29年 編:最終回]

平成の年間ベストセラーを振り返る[平成21年~平成29年 編:最終回]

11月30日(金)、日本出版販売から年間ベストセラーが発表されます。

年間ベストセラーは毎年発表されていますが、今回はなんといっても“平成最後”の年間ベストセラー。

発表の前に、過去29年間分のランキングを振り返ってみましょう。

※今回紹介するのは2009(平成21)年~2017(平成29)年のベストセラーランキング。全3回にわたる連載の最終回です。

「平成の年間ベストセラーを振り返る」アーカイブ
平成元年~平成10年 編
平成11年~平成20年 編
〉平成21年~平成29年 編(最終回)

2009(平成21)年
・第1位『1Q84(1・2)』(村上春樹/新潮社)
・第2位『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(出口宗和/二見書房)
・第3位『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 大冒険プレイヤーズガイド』(Vジャンプ編集部/集英社)

2010(平成22)年
・第1位『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海/ダイヤモンド社)
・第2位『巻くだけダイエット』(山本千尋/幻冬舎)
・第3位『1Q84(3)』(村上春樹/新潮社)

2011(平成23)年
・第1位『謎解きはディナーのあとで(1・2)』(東川篤哉/小学館)
・第2位『体脂肪計タニタの社員食堂』(タニタ/大和書房)
・第3位『心を整える。』(長谷部誠/幻冬舎)

2012(平成24)年
・第1位『聞く力』(阿川佐和子/文藝春秋)
・第2位『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子/幻冬舎)
・第3位『新・人間革命(24)』(池田大作/聖教新聞社)

2013(平成25)年
・第1位『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹/文藝春秋)
・第2位『医者に殺されない47の心得』(近藤誠/アスコム)
・第3位『聞く力』(阿川佐和子/文藝春秋)

2014(平成26)年
・第1位『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(槙孝子/アスコム)
・第2位『人生はニャンとかなる!』(水野敬也/文響社)
・第3位『銀翼のイカロス』(池井戸潤/ダイヤモンド社)

2015(平成27)年
・第1位『火花』(又吉直樹/文藝春秋)
・第2位『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット、神崎朗子訳/大和書房)
・第3位『家族という病』(下重暁子/)

2016(平成28)年
・第1位『天才』(石原慎太郎/幻冬舎)
・第2位『おやすみ、ロジャー』(カール=ヨハン・エリーン/飛鳥新社)
・第3位『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版』(J.K.ローリング、ジョン・ティファニーほか/静山社)

2017(平成29)年
・第1位『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子/小学館)
・第2位『ざんねんないきもの事典』(下間文恵ほか/高橋書店)
・第3位『蜜蜂と遠雷』(恩田陸/幻冬舎)

 

12年ぶりに国内小説が第1位

民主党が圧勝し、「政権交代」が新語・流行語大賞を獲得した2009(平成21)年、この年の第1位を獲ったのは、村上春樹さんの『1Q84』でした(※第1巻・第2巻)。

国内小説の首位獲得は、1997(平成9)年の『失楽園』以来12年ぶり。

発売まで内容が明かされておらず、タイトルも内容を想像しがたい一風変わったもの。それによって読者の期待がいっそう膨らみ、発売日当日に爆発、発売直後から品薄状態が続いたことで、さらに話題は大きくなりました。

約1年後の第3巻発売時には、営業時間を変更して深夜・早朝から販売する書店が現れるなどし、この傾向は近年まで続くこととなります。

1Q84 BOOK1(4月ー6月)
著者:村上春樹
発売日:2009年05月
発行所:新潮社
価格:1,980円(税込)
ISBNコード:9784103534228

 

「もしドラ」ブーム

「もしドラ」という言葉に聞き覚えのある方は多いはず。

これは2010(平成22)年に第1位を獲得した『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の略で、経営学者の名著をわかりやすい設定で、小説として描いた一冊です。

その内容は、「急きょ野球部のマネージャーをつとめることになった女子高生が、ドラッカーの『マネジメント』をもとに部員を甲子園へ導く」というもの。同作のヒットをきっかけに、日本では“ドラッカーブーム”が巻き起こりました。

出版元のダイヤモンド社では、同書が創業以来初のミリオンセラー。漫画・TVアニメ・映画とさまざまに展開された「もしドラ」は現在も発行部数歴代第1位の座に君臨しており、また、同作に主人公の愛読書として登場する『マネジメント【エッセンシャル版】』も非常によく売れました。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
著者:岩崎夏海
発売日:2009年12月
発行所:ダイヤモンド社
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784478012031

 

本格ミステリーが初めて首位に

2011(平成23)年の第1位は、『謎解きはディナーのあとで』。2010(平成22)年に1作目が刊行、書店員の熱烈なプッシュを受け、店頭で大々的に展開されたことで発売から3日で重版が決定し、その後2011年4月に本屋大賞を受賞、10月に嵐の櫻井翔さん主演で連続ドラマ化、そして11月には2作目が刊行……と、大ヒットシリーズへの階段を駆けのぼりました。

『謎解きはディナーのあとで』は、本格ミステリー小説でありながら、魅力的なキャラクターたちの軽妙なやりとりで読ませる内容であること、人気イラストレーターの中村佑介さんが表紙を手がけていることなど、読者の裾野を広げる要素を多数もっている作品でした。

なお、本屋大賞受賞作で、かつ年間ベストセラー総合第1位を獲得した作品は、『謎解きはディナーのあとで』が史上唯一となっています。

謎解きはディナーのあとで
著者:東川篤哉
発売日:2010年09月
発行所:小学館
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784093862806

 

発売7日でミリオン達成

「村上春樹、『1Q84』以来の長編小説」ということでまたも話題になった、2013(平成25)年4月発売の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。発売からわずか7日でミリオンセラーを達成した同作は、やはりというべきか、この年の年間ベストセラー第1位を勝ち取りました。

ということで、この連載で紹介してきた「年間ベストセラー総合1位複数回獲得者」の最後の一人は村上春樹さんでした! 皆さん、正解しましたか?

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
著者:村上春樹
発売日:2013年04月
発行所:文藝春秋
価格:1,870円(税込)
ISBNコード:9784163821108

ちなみにこの頃のベストセラーとしてもう一つ押さえておきたいのが、2012(平成24)年に第1位を獲得、13年にも第3位に輝いた、阿川佐和子さんの『聞く力』。新書の総合第1位獲得は、2007(平成19)年以来です。

聞く力
著者:阿川佐和子
発売日:2012年01月
発行所:文藝春秋
価格:990円(税込)
ISBNコード:9784166608416

 

平成史上初、実用書が第1位に

国民的長寿番組「笑っていいとも!」が最終回を迎えた2014(平成26)年、平成の年間ベストセラー史上初めて、実用書が第1位を獲得します。

それは『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』。

「中居正広の金曜日のスマたちへ」(現在は「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」に改題)をはじめ、多数の情報番組に取り上げられてブームに火がついた本書。「ふくらはぎをもむだけ」という手軽さとわかりやすさがお茶の間に受け、2013年7月の刊行から約1年で累計発行部数100万部を突破しました。

長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい
著者:槇孝子 鬼木豊
発売日:2013年07月
発行所:アスコム
価格:1,210円(税込)
ISBNコード:9784776207931

 

お笑い芸人「又吉直樹」の快挙

その翌年、2015(平成27)年に第1位となったのが、お笑い芸人・又吉直樹さんの小説家デビュー作『火花』。「現役のお笑い芸人が純文学デビューした」ということで大変な話題になり、同作が発表された「文學界」2015年2月号は、1933(昭和8)年の創刊以来初めて増刷が行なわれました。

『火花』は単行本発売後、芥川賞受賞でさらに売上を伸ばし、芥川賞作品では歴代トップとなる累計250万部突破の大ヒットを記録。また“現役お笑い芸人の年間ベストセラー首位獲得”という点では、1995(平成7)年の『松本』(松本人志著)からちょうど20年ぶりのこととなりました。

火花
著者:又吉直樹
発売日:2015年03月
発行所:文藝春秋
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784163902302

 

田中角栄ブーム、そして史上最高齢での首位

元内閣総理大臣・田中角栄の死去から23年が経った2016(平成28)年、角栄ブームが起きました。

書店店頭に『田中角栄100の言葉』をはじめ多くの“角栄本”が並ぶなか、第1位に輝いたのは、石原慎太郎さんによる『天才』でした。

かつて痛烈に批判していた“政敵 田中角栄”の生涯を描き、しかもタイトルが『天才』だということで注目を集めた本作。“ダーティーな政治家”というイメージを持っていた人も多いなか、庶民派な人柄やリーダーシップにスポットを当てたテレビ番組も多く放送されました。

天才
著者:石原慎太郎
発売日:2016年01月
発行所:幻冬舎
価格:1,540円(税込)
ISBNコード:9784344028777

そして翌年の2017(平成29)年に第1位を獲得したのが、『九十歳。何がめでたい』。著者の佐藤愛子さんは当時94歳で、史上最高齢での首位獲得となりました。

またこの年に目立ったのが、『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』『100歳の精神科医が見つけたこころの匙加減』といった、高齢の著者による書籍。史上最年長で文藝賞を受賞しデビューした若竹千佐子さんの芥川賞受賞作、『おらおらでひとりいぐも』も話題になりましたね。

九十歳。何がめでたい
著者:佐藤愛子(作家)
発売日:2016年08月
発行所:小学館
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784093965378

 

本は時代を写す

ここまで全3回にわたって、平成29年分の年間ベストセラーを振り返ってきました。当時を懐かしく思い出した方もいれば、「へえ、そんな本が売れてたんだ!」と初めて知った方もいることでしょう。

「本が売れて流行になった」「世間の関心の高い内容だったから本になった」どちらの場合もありますが、どんな本が売れるかは、当時の世相を大きく反映しています。

平成最後の年間ベストセラーは、いよいよ11月30日(金)発表!

さて、今年はいったい“どんな年”になっているのでしょうか?