11月30日(金)、日本出版販売から年間ベストセラーが発表されます。
年間ベストセラーは毎年発表されていますが、今回はなんといっても“平成最後”の年間ベストセラー。
発表の前に、過去29年間分のランキングを振り返ってみましょう。
※今回紹介するのは1989(平成元)年~1998(平成10)年のベストセラーランキングです。
「平成の年間ベストセラーを振り返る」アーカイブ
〉平成元年~平成10年 編
〉平成11年~平成20年 編
〉平成21年~平成29年 編(最終回)
1989(平成元)年
フィクション
・第1位『TUGUMI』(吉本ばなな/中央公論新社)
・第2位『キッチン』(吉本ばなな/ベネッセコーポレーション)
・第3位『栗良平作品集(2)一杯のかけそば・ケン坊とサンタクロース』(栗良平/日本ビジネスネット)ノンフィクション
・第1位『すぐわかる図解版 消費税 こうやればいい』(山本雄二郎/青春出版社)
・第2位『消費税 実務と対策はこうする』(山本守之/日本実業出版社)
・第3位『人麻呂の暗号』(藤村由加/新潮社)
1990(平成2)年
フィクション
・第1位『真夜中は別の顔(上・下)』(シドニィ・シェルダン/アカデミー出版)
・第2位『うたかた(上・下)』(渡辺淳一/講談社)
・第3位『TVピープル』(村上春樹/文藝春秋)ノンフィクション
・第1位『愛される理由』(二谷友里恵/朝日新聞出版)
・第2位『「NO」と言える日本』(盛田昭夫、石原慎太郎/光文社)
・第3位『「1998年日本崩壊」エドガー・ケーシーの大予告』(五島勉/青春出版社)
1991(平成3)年
フィクション
・第1位『血族(上・下)』(シドニィ・シェルダン/アカデミー出版)
・第2位『時間の砂(上・下)』(シドニィ・シェルダン/アカデミー出版)
・第3位『大地の子(上・中・下)』(山崎豊子/文藝春秋)ノンフィクション
・第1位『Santa Fe 宮沢りえ』(篠山紀信/朝日出版社)
・第2位『もものかんづめ』(さくらももこ/集英社)
・第3位『ノストラダムス戦慄の啓示』(大川隆法/幸福の科学出版)
1992(平成4)年
フィクション
・第1位『明け方の夢(上・下)』(シドニィ・シェルダン/アカデミー出版)
・第2位『国境の南、太陽の西』(村上春樹/講談社)
・第3位『真夜中は別の顔(上・下)』(シドニィ・シェルダン/アカデミー出版)ノンフィクション
・第1位『それいけ×ココロジー(レベル1・2・3)』(それいけ!!ココロジー編/青春出版社)
・第2位『さるのこしかけ』(さくらももこ/集英社)
・第3位『わが友 本田宗一郎』(井深大/ごま書房新社)
※1992年まで「フィクション」「ノンフィクション」の2部門で発表。1993年に「総合」が新設されました。
1993(平成5)年
・第1位『人間革命(12)』(池田大作/聖教新聞社)
・第2位『磯野家の謎』(東京サザエさん学会/飛鳥新社)
・第3位『マディソン郡の橋』(ロバート・ジェームズ・ウォラー/文藝春秋)
1994(平成6)年
・第1位『日本をダメにした九人の政治家』(浜田幸一/講談社)
・第2位『大往生』(永六輔/岩波書店)
・第3位『マディソン郡の橋』(ロバート・ジェームズ・ウォラー/文藝春秋)
1995(平成7)年
・第1位『松本』(松本人志/朝日新聞出版)
・第2位『ソフィーの世界』(ヨースタイン・ゴルデル/NHK出版)
・第3位『フォレスト・ガンプ』(ウィンストン・グルーム/講談社)
1996(平成8)年
・第1位『脳内革命(1・2)』(春山茂雄/サンマーク出版)
・第2位『神々の指紋(上・下)』(グラハム・ハンコック/翔泳社)
・第3位『「超」勉強法』(野口悠紀雄/講談社)
1997(平成9)年
・第1位『失楽園(上・下)』(渡辺淳一/講談社)
・第2位『ビストロスマップ 完全レシピ』(扶桑社)
・第3位『母の詩(うた)』(池田大作/聖教新聞社)
1998(平成10)年
・第1位『新・人間革命(1・2・3)』(池田大作/聖教新聞社)
・第2位『ビストロスマップ KANTANレシピ』(扶桑社)
・第3位『ダディ』(郷ひろみ/幻冬舎)
「ばなな現象」で幕を開けた平成
日本で初めて消費税※が導入された1989(平成元)年。出版業界の平成は、吉本ばななブームで幕を開けました。
※当時は消費税3%。
今回の記事ではトップ3のみ紹介していますが、同年の年間ベストセラーではフィクション第1位の『TUGUMI』、第2位の『キッチン』を含め、フィクション・ノンフィクションあわせて吉本ばなな作品計6作がトップ10にランクイン。1人の著者の作品がこれほど上位に名を連ねることは、これ以降、現在発表されている平成29年の年間ベストセラーまでありません。当時マスコミの間では、「ばなな現象」という言葉が飛び交いました。
なお当時の吉本ばななファンは、多くが若い女性たち。やはり「ブームは女性から」のようです。
- TUGUMI
- 著者:よしもとばなな
- 発売日:1989年03月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:1,320円(税込)
- ISBNコード:9784120017759
続いて起きた「シドニィ・シェルダン現象」
「ばなな現象」が落ち着きを見せた頃、「シドニィ・シェルダン現象」という言葉が生まれます。
シドニィ・シェルダン氏は、『顔』でデビューしたアメリカの小説家。第2作『真夜中は別の顔』の邦訳版が1990年に刊行され、同氏はその年から3年連続でフィクション部門第1位を獲得しました。
1992(平成4)年に発売された『明け方の夢』も、村上春樹氏の『国境の南、太陽の西』を抑え、同年の年間ベストセラーフィクション部門第1位に。海外文学がこれほど多くの日本人に愛されることは、めったにありません。
映画化・ドラマ化された作品も多く、日本では浅野ゆう子さん主演の「血族」、中谷美紀さん主演の「ゲームの達人」「女医」などがよく知られています。
- 真夜中は別の顔 上 新装判
- 著者:シドニィ・シェルダン 天馬竜行
- 発売日:2007年03月
- 発行所:アカデミー出版
- 価格:702円(税込)
- ISBNコード:9784860360320
- 国境の南、太陽の西
- 著者:村上春樹
- 発売日:1995年10月
- 発行所:講談社
- 価格:715円(税込)
- ISBNコード:9784062630863
今もなお“衝撃の写真集”として語り継がれる『Santa Fe』
1991(平成3)年のノンフィクション部門第1位は『Santa Fe』。当時人気絶頂だった宮沢りえ氏のヌード写真集です。
累計発行部数は165万部。近年でもっとも売れた写真集は、乃木坂46 白石麻衣氏の写真集『パスポート』(32万部)であり、『Santa Fe』の165万部はまさに驚異的。歴代第1位の記録として、今なお君臨しています。
▼1999(平成11)年に再編集版が発売。
- Santa Fe New edition
- 著者:篠山紀信
- 発売日:1999年03月
- 発行所:朝日出版社
- 価格:2,090円(税込)
- ISBNコード:9784255990118
今年8月に亡くなったさくらももこ氏の初エッセイ、『もものかんづめ』が発売されたのもこの年。同作は、『Santa Fe』に次いでノンフィクション部門第2位となりました。
ちなみに前年の1990(平成2)年には、「ちびまる子ちゃん(現象)」が新語・流行語大賞の流行語部門金賞に選ばれています。
- もものかんづめ
- 著者:さくらももこ
- 発売日:2001年03月
- 発行所:集英社
- 価格:704円(税込)
- ISBNコード:9784087472998
ノンフィクション作品の首位獲得が続く
1993(平成5)年、Jリーグの開幕と同年に、年間ベストセラーでは発表ジャンルが追加され、それにともない「総合ランキング」が新設されました。以降の3年間は、ノンフィクション作品が総合第1位を続けて獲得しています。
そして1995(平成7)年に起こったのが、阪神・淡路大震災、そして地下鉄サリン事件。
この年の総合第1位は、当時人気絶頂のお笑い芸人・ダウンタウン松本人志氏の著書『松本』。200万部突破のベストセラー『遺書』の続編にあたる作品で、この2冊は1997(平成9)年に『「松本」の「遺書」』のタイトルで文庫本にまとめられています。
- 「松本」の「遺書」
- 著者:松本人志
- 発売日:1997年07月
- 発行所:朝日新聞出版
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784022611918
また同年には、Windows 95の発売が世間を賑わせました。
それ以降パソコンの大衆化が進み、総合ランキングには入っていないものの『パソコン「超」仕事法』や『手にとるようにインターネットがわかる本』といったパソコン関連本がよく売れました。
『失楽園』が空前の大ヒット
総合ランキング開設後、ノンフィクション作品の首位獲得が続いていた年間ベストセラー。初めて第1位を獲得したフィクション作品は、1997(平成9)年に刊行された『失楽園』でした。
『失楽園』は、渡辺淳一氏による“大人の不倫”を描いた恋愛小説。同作は発行部数300万部を突破、役所広司氏・黒木瞳氏主演による映画も大ヒットし、不倫することを「失楽園する」と言うまでになりました。
- 失楽園 上
- 著者:渡辺淳一
- 発売日:2004年01月
- 発行所:角川書店
- 価格:607円(税込)
- ISBNコード:9784041307373
1998(平成10)年には『新・人間革命』の刊行が始まり、同作が総合第1位を獲得します。
ちなみに著者・池田大作氏は、1993(平成5)年の『人間革命』第12巻以来の首位獲得。平成の年間ベストセラーにおいて、総合第1位を複数回獲った著者は、氏を含めて3名います。あと2名については次回以降で発表しますのでお楽しみに。
- 新・人間革命 第1巻
- 著者:池田大作
- 発売日:2003年07月
- 発行所:聖教新聞社
- 価格:838円(税込)
- ISBNコード:9784412012288
国民的アイドル「SMAP」の勢い
1997(平成9)年、1998(平成10)年において見逃せないのが、SMAPの存在。首位獲得とはなりませんでしたが、『ビストロスマップ 完全レシピ』『ビストロスマップ KANTANレシピ』がそれぞれの年で総合第2位にランクインしています。
CD売上がピークを迎え、「CDバブル絶頂期」といわれたのが1998年。この年、SMAPは「夜空ノムコウ」でオリコン年間シングルCDランキング第2位を獲得しています(第1位はGLAYの「誘惑」)。
- ビストロスマップ完全レシピ
- 発売日:1996年12月
- 発行所:フジテレビ出版
- 価格:1,495円(税込)
- ISBNコード:9784594021511
- ビストロスマップkantanレシピ
- 発売日:1997年12月
- 発行所:フジテレビ出版
- 価格:1,676円(税込)
- ISBNコード:9784594024062
30年前のベストセラーを振り返ってみると、本というものがいかに世相を反映するものか、また社会に対して影響を及ぼすものかということにあらためて気づかされます。
次回振り返るのは、1999(平成11)年~2008(平成20)年を。21世紀に突入し、ベストセラーはどう変遷したのでしょうか? お楽しみに。
>平成の年間ベストセラーを振り返る[平成11年~平成20年 編]