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「1日1万歩」に医学的根拠なし? 専門医が教える「歩幅+10cm」で転倒・老化を食い止める歩行術

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※本稿は歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方(アスコム)の一部を再編集したものです

「最近、なんとなく歩くのが遅くなった」「段差もないのに、なぜかつまずく」そんな体の変化を「年のせい」と諦めていませんか?

いつまでも自分の足で、行きたい場所へ行き、会いたい人に会いに行くために……今日からすぐに実践できる、体づくりのヒントを解説した本書の一部をご紹介します。

 

ウォーキングでは「歩数」は気にしなくていい

老化や転倒をできるだけ遠ざけるための生活習慣として、運動は欠かせません。
その中でも、もっとも手軽に始められるのが「歩くこと」です。
セルフリハビリテーションはとても効果的ですが、日常生活の中で続けやすい運動として、歩き方の工夫もぜひ知っておいていただきたいと思います。

ここで、ひとつ大切な前提を確認しておきましょう。
「普段からよく歩いている」というだけでは、転倒予防にはあまり役立ちません。

それは、「何の意識もせずに歩いている場合」の話です。

「散歩はしているけれど、足の運びや歩幅、歩くときの姿勢は気にしていない」
「なんとなく歩いて、疲れたら終わり」

こうした歩き方では、老化や転倒への対策としては不十分です。
一方で、「大切なポイントを意識しながら歩くこと」を習慣にできれば、歩行は十分に、老化や転倒を防ぐ力になります。

 

「1日1万歩健康説」には明確な根拠はない

歩くとなると、多くの方が気にするのが「1日何歩歩いたか」ではないでしょうか。

よく聞くのは「健康のためには1日1万歩」という目安ですが、実はこの数字に、確かな医学的根拠があるわけではありません。
もともとは、アメリカの研究で「1週間で約6万9000歩を歩くことが健康増進に役立つ」という結果が出たことから、キリのよい数字として「1日1万歩」が広まったと言われています

しかし、1日1万歩を歩くには、おおよそ2時間程度かかります。高齢の方が毎日これを続けるのは、体力的にも現実的とは言えません。こうしたことから、現実的に困難な“1日1万歩”にしばられる必要はありません。
重視すべきは、「メッツ(METs)」を上げる「歩き方」です。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、メッツとは「どれくらい体を使っているか(運動強度)」の目安となる指標です。次の表は、歩くレベルをメッツで分類したものです。

歩くスピードとメッツ

 

このメッツを上げることが生存率に大きく影響を与えることがわかってきました。6213名の男性を対象とした大規模研究によると、「日常生活でラクにできる運動強度が5メッツ以下の人は、運動強度を1メッツ上げると生存率が12%上がる」という報告があります。

つまり、「いま歩いている速度よりも速く歩けるようになる」だけで、元気で長生きできる可能性が高まるわけです。

 

「歩幅をプラス10cm」すると運動効果は倍になる

「何も意識しない歩き方(普通歩行)」から、1メッツ上げる工夫をするために、私がおすすめしているのが「歩幅を広げること」です。

何度かお伝えしているように、歩幅は歩く力と密接につながっています。
「1メッツ上げる」と言われると難しく感じるかもしれませんが、一番簡単で確実な方法が、「いつもの歩幅を10cm(握りこぶしひとつ分)広げて歩くこと」なのです。

同じリズムでも歩幅が広がれば、歩くスピードが上がります。
それだけでなく、下半身の筋肉への刺激が確実に増え、ただの散歩を「ゆる筋トレ」に変えることもできます。

中高年以上の方の歩き方を見ていると、知らないうちに歩幅がかなり狭くなり、いわゆる「ちょこちょこ歩き」になっているケースがよくあります。
その大きな理由は、下肢全体の筋力低下、特に「足を後ろに蹴り出す筋肉」と「足を前に引き上げる筋肉」の衰えです。

歩くとき、私たちはふくらはぎ(下腿三頭筋かたいさんとうきん)やお尻(大殿筋だいでんきん)の筋肉を使って地面を後ろに蹴り出し、体を前へ押し進める推進力を生み出しています。同時に、足の付け根の奥にある筋肉(腸腰筋ちょうようきん)を使って、足を前へと振り出します。
これらの筋肉が弱くなると、体を前へ押し出す力も、足を前に運ぶ力も弱まり、無意識のうちに歩幅が小さく(小刻みに)なってしまうのです。

ただし、これらの筋肉だけが単独で弱くなることはほとんどありません。多くの場合、太もも(大腿四頭筋だいたいしとうきん)など下半身の筋力全体が少しずつ低下しています。

その状態で、あえて歩幅を10cm広げて歩くと、最初は「少しキツい」と感じるかもしれません。でもそれは、普段あまり使っていなかった筋肉に、しっかり刺激が入っているという証拠です。

つまり、歩きながら自然に筋トレができている状態なのです。

 

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『歩幅を見れば、寿命がわかる「死ぬまで歩ける体」のつくり方』

hohaba_書影著者:安保雅博
発売日:2026年6月
発行所:アスコム
定価:1,650円(税込)
ISBN:9784776214182

 

「ほんのひとふし」とは

「ほんのひとふし」は、話題の書籍から特に関心の高いトピックや、今こそ読みたい一節をピックアップしてご紹介する「ほんのひきだし」の連載企画です。
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