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「鎮痛剤」で心停止…?専門医が警告する、“ある種類の薬”の長期使用に潜む最大の皮肉

突然死_鎮痛剤TOP

ちょっとした頭痛や、腰・ひざの痛みがあるとき、ドラッグストアで手軽に買える「痛み止め(鎮痛剤)」に助けられている、という方は多いのではないでしょうか。

つらい痛みを抑えてくれる頼もしい存在ですが、「なんとなく手放せないから」とお守りのように長期間飲み続けてしまうと、知らず知らずのうちに心臓や血管に大きな負担をかけているかもしれません。

※本稿は科学的に証明された 突然死を招く習慣・長生きする習慣(高橋書店)の一部を再編集したものです

 

「鎮痛剤」の長期使用で心肺停止

血圧の上昇、血液の凝固、心不全につながる恐怖

「ひざが痛くて歩けません。痛み止めをください」
「腰の痛みが引かないので、市販薬を飲み続けています」
これらは、整形外科の診察室で毎日繰り返される光景です。痛みは、本人にとって耐え難い苦痛であり、生活の質を著しく下げるもの。
「この痛みさえなければ……」という切実な気持ちは痛いほどわかります。
それに応えようと、私たち医師は「鎮痛剤(痛み止め)」を処方しますし、ドラッグストアに行けば、さまざまな種類の痛み止めが手に入ります。

 

「副作用」が怖い痛み止め

しかし、ここで整形外科医として、あえてお伝えしなければならないことがあります。

それは、「痛み止め、とくにNSAIDsエヌセイズと呼ばれる種類の薬の長期使用は、重大な心臓病のリスクを高める恐れがある」こと。これは、非ステロイド性抗炎症薬の略称で、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク(ボルタレンなど)など、みなさんがよく耳にし、使われている痛み止めです。

これらは炎症を抑え、痛みを強力にブロックしてくれます。
しかし、その裏には、心臓や血管に悪影響を及ぼす重大な副作用が潜んでいます。

デンマークの全国民を対象とした大規模な研究データがあります。この研究では、院外心停止(病院外で心臓が突然止まってしまうこと)を起こした約2万9000人と、そうでない人を比較分析しました。
その結果、心停止を起こすまでの30日間に、ジクロフェナクやイブプロフェンを使用していた人は、していなかった人よりも心停止のリスクが有意に高まっていたのです。具体的には、ジクロフェナクで約50%、イブプロフェンで約31%のリスクが増加していました。

 

心臓を止める「痛み止め」の恐怖

なぜ、痛み止めを飲むだけで、心臓病のリスクが高まってしまうのでしょうか。
そのメカニズムは、おもに「血圧の上昇」と「血液の凝固(固まりやすさ)」、そして「心不全」にあります。

NSAIDsは、痛みの原因物質である「プロスタグランジン」がつくられるのを防いで痛みを止めます。
しかし、プロスタグランジンには、血管を広げて血流を保ち、腎臓の働きを助けるという、体を守る重要な役割もあります。
薬でこれをブロックしてしまうと、腎臓からの塩分や水分がうまく排出されなくなり、体内に水分がたまってしまいます(むくみ)。同時に血管が収縮するため、血圧が上がります。

パンパンに張った血管に、水分が増えることで量が多くなった血液を流さなければならない――これはまるで、出口をつまんで狭くしたホースに、蛇口を全開にして水を流し込むようなもの。
ポンプである心臓には過大な圧力がかかり、悲鳴を上げてしまいます。これが心不全や致死的な不整脈を招くことがあるのです。

 

長く服用するほど心臓への負担が増す

ここで重要なのは「薬のリスクを知ったうえで、賢く使う」こと。さらに「用量を最少に、期間を最短に」することです。

「痛くなるのが嫌だから」「なんとなく調子が悪いから」と、お守りのように薬を飲み続けている方がいます。これは非常に危険です。
NSAIDsによる心血管リスクは、使用開始から早い段階(最初の1週間〜1か月)で上昇することが示唆されています。
「長年飲んでいるから体が慣れてきている」ことはありません。飲んでいる期間が長ければ長いほど、心臓への負担が積み重なっていると考えてください。

なかでも注意すべきは、すでに心臓に持病がある方、高血圧の方、高齢者です。こういった方は薬によるダメージを受けやすい状態にあります。

それでも、どうしても痛み止めが必要な場合は、自己判断ではなく、必ず医師に相談してください。医師は心臓や腎臓への負担を考慮し、薬の種類や量を調整してくれます。

 

【突然死を防ぐには!】心臓への負担を減らす薬に替える

心臓への負担を減らしながら痛みをやわらげる「代替案」はいくつかあります。

一つ目は「アセトアミノフェン(カロナールやタイレノールなど)」という成分の活用です。
これは「脳」に働きかけて痛みを感じにくくします。抗炎症作用(腫れを引かせる力)はほとんどないものの、胃腸障害や腎障害、血圧の上昇、心血管リスクが、NSAIDsと比べてとても低くなっています。

鎮痛効果はNSAIDsよりも弱いのですが、「弱いから効かない」と決めつけず、まずは安全性の高い薬から試してみるという選択肢もあります。
ただし、アセトアミノフェンにも肝機能障害などの副作用があります。どの薬にもなんらかの副作用があるという前提で注意しながら使いましょう。

二つ目は、「外用薬(貼り薬・塗り薬)」の活用です。
ロキソプロフェンやジクロフェナクなどの成分が入った湿布や塗り薬は、皮膚から成分を吸収させ、痛い箇所に直接届けます。飲み薬のように全身の血液に入る量はごくわずかなため、副作用のリスクを大幅に下げられます(もちろんゼロではありませんが)。
飲み薬は減らして、痛いときだけ湿布を貼るという切り替えも有効です。

そして、もっとも本質的な代替案は「薬に頼らない体づくり」です。

痛み止めは痛みを感じなくするだけで、痛みの原因は残ったままです。
たとえば、ひざや腰の痛みの多くは、筋力低下や柔軟性の欠如、体重の増加、血行不良が原因です。
体重を1キロ落とせば、歩く際のひざへの負担は3キロ減るといわれているように、痛みを減らすには「原因を改善すること」が重要なのです。
ほかにも、お風呂で体を温めたり、軽くストレッチをして血流を良くしたりすると、痛みがやわらぐこともあります。

痛み止めはあくまでも「緊急措置」として、短期間だけ助けてもらうもの。
痛みが落ち着いたら、少しずつ薬を減らし、運動や生活習慣の改善という「根本治療」にシフトしていく――この切り替えこそが、痛みのない生活と健康で長い人生につながっていきます。

 

『科学的に証明された 突然死を招く習慣・長生きする習慣』

wakutuki_突然死著者:歌島大輔
発売日:2026年5月
発行所:高橋書店
定価:1,650円(税込)
ISBN:9784471032043

 

 

「ほんのひとふし」とは

「ほんのひとふし」は、話題の書籍から特に関心の高いトピックや、今こそ読みたい一節をピックアップしてご紹介する「ほんのひきだし」の連載企画です。
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