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少女にだけ見えるおしゃべりな香辛料たちが、つまらない毎日を刺激的に変えていく!『雨とおしゃべりな香辛料』

シナモンとニッキの違い、わかります?

大人になって、もはや大抵のことにビックリしなくなっていても、初めて口にするスパイスにはドキドキします。「甘い」とも「しょっぱい」とも違う刺激が、想像しない角度から想像しない勢いでやって来るんですよ。

そうそう、スパイスは「いつもの味」を変えるのがとても上手。そして種類がたくさんあって、効かせ方もいろいろ。例えばシナモンは1種類じゃないんです。

ニッキとシナモンは香りの印象が少し違うけれど、製法の違いで差が生まれるのかな〜なんて思ってた! そもそもの種類が違っていたんですね。擬人化されたシナモンたちは目元もボディラインも違います。

『雨とおしゃべりな香辛料』は、小学4年生の女の子“雨”が、雨にだけ見える“スパイスのおばけ(?)たち”と毎日を刺激的に変えていくマンガです。古今東西のいろんなスパイスが雨の前に現れて、雨や雨の周りの人たちをハッピーにしていきます。

本作は「なかよし」で連載中(第1巻の初版は天道グミ先生の描きおろしクリアカード入り。これぞなかよしのカワイイ付録!)。1話ごとに1つのスパイスがフィーチャーされます。スパイスのうんちくが楽しい。あとスパイスの姿もバリエーション豊かで、等身も顔立ちも雰囲気もみんな違います。そこもスパイスらしいんですよね。

さて、「たこ焼きに合うちょい足しスパイス」は何でしょう? 日本の山で見つかるそうです。

本作は雨と同い年くらいの子たちがちょっと試したくなる「スパイスちょい足しレシピ」も魅力。ちょっと試してみたくなるような絶妙な組み合わせなんです。

 

ハバネロのココア、シナモン香る焼き梨

雨はパパと2人で東京から愛媛の山奥に引っ越してきました。そこはパパの故郷で、過疎化が進んだ農村。パパはおじいちゃんの農業を継ぐために戻ってきたようです。おうちの近くの畑にはビニールハウスがあって、そこでスパイスを育てています。愛媛の温暖な気候と山の寒暖差を生かして、きっとおいしいスパイスが採れるはず。

いいところだなあと思いますが、雨にとってハードな新生活でした。まず、おうちから小学校までは車で25分かかります。徒歩じゃなくて車! 山奥らしい通学事情。

通学時間はパパとの大切なおしゃべりタイムだけど、学校がそもそも憂うつ! ママ譲りの髪の色を転校先の男子にからかわれたり、「東京マウントうぜ~」と言われたりで、新しい学校が全然楽しくありません。虫も多いし、タヌキも出るし、電波は弱いし、お風呂はまさかの五右衛門風呂だし、もうヤダ東京に帰りたい!

雨のストレスがピークに達したある日、雨はパパとおじいちゃんの「大事な野菜」をバクっと食べてしまいます。やけ食いです。小さなパプリカのようなそれは、唐辛子の一種“ハバネロ”でした。やけ食いには向いてない野菜ですね。で、その日から雨にだけ“スパイスのおばけ”が見えるように。

ハートのフルーツみたいな姿のハバネロさんは「かわいい」と言うと怒る俺様キャラ。『雨とおしゃべりな香辛料』は題名通り香辛料がしゃべるしゃべる! 彼らの自分語りを聞くとおなかが空いて口の奥がキュッとなります。

ところで、最近のハバネロさんには悩みがありました。激辛ブームの火付け役だったけれど、今ではハバネロさんよりも辛い唐辛子がどんどん現れて、「紅き黒船」なんて言われていたのは昔の話。

「辛いだけで食べるもんやないよ」なんていう心ない言葉に胸を痛めています。食べ物が一番聞きたくない言葉かもしれません。雨はハバネロさんを元気づけようとします。きっと、「おいしい!」と心から伝えるのがよさそうですが、さあどうすればハバネロさんをおいしく感じられる?

そこで雨が偶然見つけたのが「ココア」でした。甘いココアにハバネロさんをちょい足しすると?

ハバネロさんのフルーティーな香りが、ココアをいつもと全然違うおいしさに! ハバネロさんは辛いだけの野菜じゃなかった! パパの生産者目線の愛ある言葉もすてき。

そう、どんなスパイスにも食材のおいしさを引き出す力があります。『雨とおしゃべりな香辛料』は、雨がスパイスの本当の力を見つけていく物語です

あんなに帰りたいと思っていた山奥の田舎はスパイスの楽園でした。スパイスは、雨の毎日を今までとは全然違う楽しいものに変えていきます。

シナモンさんのちょい足しはこんな感じ。

このページの隅から隅まで幸福でおいしそう。食材への愛情深さと、食の喜びが伝わってきます。ハバネロさんいわく、スパイスは500以上いるのだとか(ハーブを足すと万を超えるそう!)。雨も私も退屈することはなさそうです。

(レビュアー:花森リド)

雨とおしゃべりな香辛料 Volume 1
著者:天道グミ
発売日:2026年05月
発行所:講談社
価格:792円(税込)
ISBNコード:9784065434864

 

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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年6月7日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。