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拳ひとつで成り上がったヤクザの壮絶な人生! “歌舞伎町の狂王”と呼ばれた最凶の一代記|『血は争えない』深町秋生

『血は争えない』深町秋生

血族を守るため、暴力と共に生きる。“歌舞伎町の狂王”と呼ばれたヤクザの壮絶な人生

最近のエンターテインメントは、アクションはあっても、バイオレンスが足りない。そのことを残念に思っている人に、お薦めしたいのが本書だ。濃厚なバイオレンスを、たっぷりと摂取できるのである。

物語は平成22年から始まる。平成14年に起きた大事件の被告となった岡谷組の二代目組長・不破隆次が、判決を下された法廷で大暴れをする。最初から血なまぐさい暴力シーンが披露され、バイオレンス好きの期待は高まっていく。

その序章が終わると、時代は昭和45年まで遡る。癌で死んだ母親の有紀子から、父親が新宿の顔役の王大偉だと聞いて育った隆次。父を頼って、王大偉の城というべき、歌舞伎町の『新宿ブライトネスビル』にやってきた。このとき彼は15歳。幼い頃から各地を転々とし、土地の子供たちからいじめられており、石を投げられて左目の視力を失っていた。もっとも負けん気の強い隆次は、いつも相手にやり返している。

以後、異母兄で岡谷組のヤクザの近藤傑志の世話になった隆次は、王大偉に協力する岡谷組の一員になり、さらには自分を受け入れてくれた王一族のために、戦いを続けるのであった。

昭和45年、53年、62年、平成8年……と、物語は時間を飛ばしながら進行する。チンピラ・ヤクザから岡谷組の二代目になる隆次の半生と暴力の軌跡が、各時代のエピソードによって描かれていく。これが滅法面白い。その生い立ちから、過剰なまでに血族を守ろうとする隆次の行動の選択肢には、常に暴力がある。商売の才覚も持ちながら、殺人も辞さない隆次の肖像に、バイオレンス好きは、強く惹きつけられてしまうのだ。

一方、時代によって変わっていく新宿という街と、人々の関係性も、大きな読みどころ。随所に意外な展開もあり、ストーリーの興趣も抜群だ。たとえ時代遅れになろうと、己を貫いた隆次の姿は、血のように真っ赤な輝きを放っている。

 

書誌情報

血は争えない
著者:深町秋生
発売日:2026年04月
発行所:双葉社
価格:2,420円(税込)
ISBNコード:9784575248814

 

試し読み

双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」にて、『血は争えない』の試し読みが公開されています。

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著者プロフィール

深町秋生(ふかまち・あきお)

1975年、山形県生まれ。2004年、「果てしなき渇き」で第3回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、翌年デビュー。「組織犯罪対策課 八神瑛子」「ヘルドッグス」「バッドカンパニー」のシリーズのほか、『探偵は田園をゆく』『ショットガン・ロード』など著書多数。

 
『小説推理』(双葉社)2026年6月号より転載