人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

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「付き合う男とは、本屋に行った方がいい」エッセイスト・岸田奈美さんが選んだ人生を変えた10冊とは?「#木曜日は本曜日」プロジェクト第6弾

「#木曜日は本曜日」プロジェクト

10月6日(木)に始動した、週に1回本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指す新プロジェクト「#木曜日は本曜日」(主催:東京都書店商業組合)。毎週木曜日に本屋と本を愛する著名人やインフルエンサー、作家などの十数人が、「人生を変えた本」をテーマに実際に本屋で語るインタビュー動画を公開するとともに、彼らが選んだ人生を変えた本10冊を東京都内の約180店舗で販売するという試みです。

第1弾となる俳優・歌手の上白石萌音さんから、第5弾のTVプロデューサー・佐久間宣行さんが紹介する人生を変えた本については、特設サイトおよび東京都書店商業組合公式YouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」にて動画を公開中です。

11月10日(木)からの第6弾は、作家・エッセイストの岸田奈美さんが担当します。

岸田奈美さんプロフィール
関西学院大学人間福祉学部卒。在学中に株式会社ミライロに創業メンバーとして加入、10年にわたり広報部長を務めたのち、作家として独立。年間800万PVあるnoteの「キナリ☆マガジン」を中心に講談社「小説現代」、「ほぼ日」などで連載。世界経済フォーラムグローバルシェイパーズ、Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」「30 UNDER 30 Asia 2021」に選出される。
著書に『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』『傘のさし方がわからない』(ともに小学館)、『もうあかんわ日記』(ライツ社)がある。



 

岸田奈美さんの人生を変えた10冊

現在、京都にお住いの岸田さんは、散歩に出るたびに本屋に寄ってしまうというくらいの「本屋好き」。どんな本屋が好きかという問いには、「書店員さんが何かしらを伝えたいというエゴがあふれている棚がある」本屋が好きだとのこと。また、「本は読むだけではなく、本を通して誰かとコミュニケーションを取れるもの」と考えていて、動画の中で本屋を巡るシーンでは「付き合う男とは、本屋に行った方がいいですね」と語る場面も。

そんな岸田さんが選んだ「人生を変えた10冊」の中から、選書コメント(動画より抜粋)とともに3冊を紹介します。本棚のデザインをあしらった限定しおり(写真)も開催書店で配布しています。
※全10冊は「#木曜日は本曜日」特設サイトで閲覧できます。

 

ズッコケ文化祭事件(那須正幹)

ズッコケ文化祭事件
著者:那須正幹 前川かずお
発売日:1988年08月
発行所:ポプラ社
価格:1,100円(税込)
ISBNコード:9784591032022

三人組のクラスでは、文化祭で劇を演じることになった。タイトルは「アタック3・極道編」!? さて、猛練習の成果は?

(ポプラ社公式サイト『ズッコケ文化祭事件』より)

選書コメント:小学生が演じる劇の脚本は、シンプルでいい話が多いのですが、この物語は「いい話のなにがおもろいねん」というところから始まります。そこから三人組がオリジナルの脚本を作るために近所の作家先生に頼むのですが、それもまたつまらない。そして、その脚本をどんどんいじっていって……という話です。この本のいいところは、「子どもをナメていないところ」。子どもって大人が思うより賢いし、ごまかされないので、子どもを一人の人間として尊重したうえで、ちゃんと面白い作品になっています。

 

『波よ聞いてくれ(1)』(沙村広明)

波よ聞いてくれ 1
著者:沙村広明
発売日:2015年05月
発行所:講談社
価格:748円(税込)
ISBNコード:9784063880588

舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露する。すると翌日、録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまった。激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。この縁でラジオ業界から勧誘されるミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。まさに、波よ聞いてくれ、なのだ!

(講談社コミックプラス『波よ聞いてくれ(1)』より)

選書コメント:主人公の鼓田ミナレが、ラジオ局にスカウトされて一人で深夜番組を持つという話なのですが、彼女はむちゃくちゃなバイタリティーとスピード感を持つ人間で、面白い番組を作るために全力を尽くしていく物語です。一番好きなシーンは、ラジオの生放送で「お前は地の果てまでも追い詰めて殺す」と、元カレへの呪いの言葉を言ってしまうシーンですね。私もnoteを書いているときに、「これを言わずにはいられない」という疾走感を持つことが結構あって、実際にそういう気持ちで書いた記事が今までで一番読まれています。

 

『向田邦子 ベスト・エッセイ』(向田邦子)

向田邦子ベスト・エッセイ
著者:向田邦子 向田和子
発売日:2020年03月
発行所:筑摩書房
価格:990円(税込)
ISBNコード:9784480436597

幼いころから磨かれた観察眼と黙っちゃいられない正義感。
考え抜かれた言葉選びと胸がすくどんでん返しは、まさにエッセイのお手本。
「姉のところには何故か面白いことが押し寄せてくる」と語る末妹が選んだ、家族、食、私、仕事のことから処世術まで。ちくま文庫オリジナル・アンソロジー。

(筑摩書房『向田邦子 ベスト・エッセイ』特設サイトより)

選書コメント:会社員から独立を決める頃に、私をインターネットで見つけてくれた編集者の佐渡島庸平さんから教えてもらった作家さんです。向田邦子さんがめちゃくちゃ好きと言っていながら、期間はとても浅いんですよ(笑)。おこがましいのですが、向田邦子さんが見ていた人間の愛しさとか、どうしようもない衝動というのは、多分、今までの人生で私も経験していると思っています。ただ、向田さんが表現するような表現というのが、まだ私にはできていないんですよ。向田さんの愛しさとか、ものを見る目線の鋭さとか、人間の素晴らしさが伝わってきます。

 

動画の紹介

 

プロジェクトの背景

近年、電子書籍の台頭・書籍のネット購入率の増加などを受け全国の本屋の数が激減しています。2000年には21,495店舗存在した本屋が2020年には11,024店舗(出版科学研究所調べ)と約半数にまで落ち込み、東京都にある中小書店(街の本屋)を中心に組織する東京都書店商業組合の加盟店舗数もまた、2022年1月時点で287店とピークだった1984年の1,426店から8割程度減少しています。

こうした苦境を受け同組合では、お客様の忙しい日々の中でゆっくり本と向き合う時間として、週の真ん中に位置する“木曜日”に目を向け、週に1回本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指して「#木曜日は本曜日」プロジェクトを開始しました。

同プロジェクトは東京都中小企業団体中央会の特別支援「デジタル技術活用による業界活性化プロジェクト」として、同中央会より委託を受け、東京都書店商業組合が運営しています。

 

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