「#木曜日は本曜日」プロジェクト
2022年10月に始動した、週に1回本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指すプロジェクト「#木曜日は本曜日」(主催:東京都書店商業組合)。毎週木曜日に本屋と本を愛する著名人やインフルエンサー、作家などの十数人が、「人生を変えた本」をテーマに実際に本屋で語るインタビュー動画を公開するとともに、彼らが選んだ人生を変えた本10冊を東京都内の約180店舗で販売するという試みです。
第1弾となる俳優・歌手の上白石萌音さんから、第13弾のNEWSのメンバーで作家の加藤シゲアキさんが紹介する人生を変えた本については、特設サイトおよび東京都書店商業組合公式YouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」にて動画を公開中です。
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1月12日(木)からの第14弾は、作家の羽田圭介さんが担当します。
羽田圭介さんプロフィール
高校在学中の17歲時に「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞し、小説家デビュー。明治大学商学部商学科卒。2015年、「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞を受賞。その他の著書に『走ル』『盗まれた顔』『メタモルフォシス』『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』『成功者K』『ポルシェ太郎』『Phantom』『滅私』などがある。
羽田圭介さんの人生を変えた10冊
「仕事の息抜きや気分転換には、書店しかない」という羽田さん。そんな羽田さんの「人生を変えた10冊」の中から、選書コメント(動画より抜粋)とともに3冊を紹介します。本棚のデザインをあしらった限定しおり(写真)も開催書店で配布しています。
※全10冊および書棚設置&オリジナルしおり配布店舗は「#木曜日は本曜日」特設サイトをご覧ください。
『リヴィエラを撃て』(髙村薫)
- リヴィエラを撃て 上巻
- 著者:高村薫
- 発売日:1997年07月
- 発行所:新潮社
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784101347141
1992年冬の東京。元IRAテロリスト、ジャック・モーガンが謎の死を遂げる。それが、全ての序曲だった――。彼を衝き動かし、東京まで導いた白髪の東洋人スパイ《リヴィエラ》とは何者なのか? その秘密を巡り、CIAが、MI5が、MI6が暗闘を繰り広げる! 空前のスケール、緻密な構成で国際諜報戦を活写し、絶賛を浴びた傑作。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞受賞。
(新潮社公式サイト『リヴィエラを撃て(上)』より)
選書コメント:中学生時代に埼玉から御茶ノ水までの通学電車の往復2時間で読んでいた本。こういう小説を書いてみたいと、小説の魅力を強く知った感じです。やっぱりバカっぽくないです(笑)。話の筋、エンターテインメントの筋だけを追う諜報物は読む気がしない。それは映画でやればいいと思う。小説ならではの面白さがないと読む気がしない。でも、これはやはり純文学です。当時はそうとは意識せずに、見事なスパイ小説として読んでいた。他の諜報物と読み比べると断然に違う。
『超男性』(アルフレッド・ジャリ、訳:澁澤龍彦)
- 超男性愛蔵版
- 著者:アルフレッド・ジャリ 澁澤龍彦
- 発売日:2017年08月
- 発行所:白水社
- 価格:3,960円(税込)
- ISBNコード:9784560095706
壮絶な自転車レースと性交ゲームの果てに待ち受けるものとは……自らも自転車愛に憑かれた奇才による1902年刊の「現代小説」
(白水社公式サイト『超男性』愛蔵版)より)
選書コメント:フランスの小説で奇怪な自転車レースの、訳の分からない話です(笑)。編集者に勧められて読んだのですが、単純に本としてすごい自由な小説だと思いました。それまでフランスの小説はあまり読んでいなかった。5人乗り自転車に乗っていて、ありえない速さで走っている間に誰かひとり死んでいるという描写があって。でも、小説って自由に動いていいんだなと。紋切型の話は僕は駄目。ストーリーの予想がつくのはいいが、2行先に書いていることの予想がつくのは駄目。この本はストーリーも2行先の表現も予想がつかない。どこから読んでも楽しめる小説で、定期的に読んでいます。
『人生は驚きに充ちている』(中原昌也)
- 人生は驚きに充ちている
- 著者:中原昌也
- 発売日:2020年07月
- 発行所:新潮社
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784104472048
キラびやかな才能を思い切り無駄遣いしてもう50歳。「私の体験した、希有な心霊現象を記す術」を探求する小説、古井由吉氏との文学問答、3・11後の福島で廃墟の声を聴き、コロナ禍で都市封鎖寸前のフランスにて無観客ライブ……多彩な顔を持つミュージシャン/作家が非情の国々を疾走し、世界を脱臼させつつ放つテキストの遊園地!
(新潮社公式サイト『人生は驚きに充ちている』より)
選書コメント:中原昌也さんの本は高校3年生の終わりに出合っています。特定の政治家の悪口などを書いたりしていますが(笑)、それがちゃんとした文芸になっている。メッセージがあるわけではなく、起承転結にもたよらず、文章を追いかけるだけで面白い。これこそ文学と思った。こんな文士はなかなかいない。日本語表現のために人生を捧げている方だと思う。純度の高い文章がすごく伝わってきます。
動画の紹介
プロジェクトの背景
近年、電子書籍の台頭・書籍のネット購入率の増加などを受け全国の本屋の数が激減しています。2000年には21,495店舗存在した本屋が2020年には11,024店舗(出版科学研究所調べ)と約半数にまで落ち込み、東京都にある中小書店(街の本屋)を中心に組織する東京都書店商業組合の加盟店舗数もまた、2022年1月時点で287店とピークだった1984年の1,426店から8割程度減少しています。
こうした苦境を受け同組合では、お客様の忙しい日々の中でゆっくり本と向き合う時間として、週の真ん中に位置する“木曜日”に目を向け、週に1回本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指して「#木曜日は本曜日」プロジェクトを開始しました。
同プロジェクトは東京都中小企業団体中央会の特別支援「デジタル技術活用による業界活性化プロジェクト」として、同中央会より委託を受け、東京都書店商業組合が運営しています。