ホス狂いの新しい担当は明智光秀
あらすじを読んで0.1秒で「読むわ!」と即決するタイプのマンガだ。あとタイトルがいい。『明智ナンバーワン』、勢いがあって、語呂がよくて連呼したくなって、「そういや明智光秀がナンバーワンだったのは何日間だっけ」と無粋なことを一瞬考えてみるけれど、やっぱり勢いに押されて愉快な気分になる。
私がベタ惚れしたあらすじを一言で紹介するなら「歌舞伎町のホス狂いが戦国時代で明智光秀を担当にして、No.1にしようとする」で、もはやこの時点で大勝利なのだが、読むともっとすごい。ホス狂いのことも戦国時代のこともゴリゴリに描いている。

ホス狂いにとって、担当への思いは「惚れている」なんて甘っちょろい言葉じゃ収まらない。けなげすぎて一語一句泣けてくる。歌舞伎町のホストクラブの常連だった“姫芽(ひめめ)”が、“明智光秀”を「一番輝いている男の子だよ」と証明したいのだ。他の男の子(織田信長や羽柴秀吉)なんかよりも、とにかく明智光秀がナンバーワン!

どうしよう、過去最高に「本能寺の変」が楽しみだ。
捨てられなかった大切なノート
歌舞伎町時代の姫芽は、担当だったホストの“麗くん”をあと一歩のところでNo.1にすることができず、心も体もズタズタの状態だった。麗くんは極太客(おカネをたくさん使う客)だった姫芽を置いてアッサリ別の店へ移ってしまい、かわいいだけの細客(おカネを使わない客)は次の店にも呼んでいるようで最悪。そろそろ潮時だと思ったのかどうか知らないが、裏切りもいいところだ。
もう限界……となったところで、姫芽は戦国時代に来てしまい、2人は出会う(ちなみに、限界を迎えた瞬間の姫芽が絞り出した言葉に胸が痛くなった)

明智光秀は姫芽のタイプど真ん中の男の子だった。愛想が悪くてツンデレなホストが好きなのだという。
なお、記念すべき出会いの日は「天正9年2月28日(1581年4月1日)」で、ちょうどあるイベントが開催されていた。

ついさっきまで散らかったアパートでゴミとゲロにまみれていた姫芽にとって、戦国時代の京都で起きているそれは、姫芽の知る限り遊園地のパレードみたいなのだが?

ちゃんと合っている。本作は歴史とホスト界隈の解説がむちゃくちゃおもしろい。しかも戦国時代と歌舞伎町とが見事に混ざっているのだ。

都内をズンドコ走るホストトラックは確かに序列と肩書きを細かく表現しがち。ホス狂いの姫芽から見たらホストも武将も似たようなもので、次第に読んでるこっちもそんな気分になってくる。ホストと武将のサンドイッチのような戦国コメディだ。
で、光秀に会いたい一心で、歌舞伎町時代と同じくらい無理をしまくった姫芽は、ついに光秀の真の野望に触れてしまう。光秀は織田信長を討ちたいのだ。そんな願いをホス狂いはどう解釈するか。

一緒にがんばる!
しかも姫芽にはとっておきの武器があった。

底辺ホストを頂点付近まで押し上げた姫芽の極秘戦略ノート! 戦国時代に来て、かわいい地雷系リュックの中身はほとんど捨ててしまったけれど、このノートだけは捨てられなかったのだ。身を削りながら必死にしたためたノートだから(本作のカバーを外すと、それがどんなに愛らしいノートかがわかる)。
担当をナンバーワンにする寸前で夢破れた姫芽は、今度こそ、今の担当(明智光秀)をナンバーワンに押し上げるぞと心に決める。史実を思い出すと、明智光秀という男は姫芽の燃えるようなホス狂いぶりとの相性がいいように思える。
私がいっちばんきらいなタイプのホスト
第1話で姫芽のことが大好きになってしまっているので、この先が楽しみ&ケガしたり悲しい目に遭わないでねとドキドキしているが、この子なら大丈夫なんじゃないかなあ……という気もしている。

自分にはカラダかおカネしかない! なんて思ってしまう日もあるが、行動そのものはバイタリティの塊で、しかも周囲の様子をとてもよく観察している。姫芽は戦国時代のあれこれを全部ホストに置き換えて把握していくが、これもなんだかイイ感じに機能しているのだ。
そんな姫芽を、明智光秀は常に自分の側に置いている。姫芽は恋人ではなさそうだし、もちろん妻でもなく、とはいえ頼りにしているし大切にもしている。どこをどう見ても立派な武将なのにだんだんホストに見えてくるから不思議だ。
さて、明智光秀にぴったりくっついて行動する姫芽は、ほどなくして“あの武将”とも出会う。そう、現ナンバーワンの織田信長だ。

いろんなホストを見てきた姫芽からすると、信長は「いっちばんきらいなタイプのホスト」らしい。本能寺を待つまでもなく一気に修羅場の予感。はやく2巻が読みたい。
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(レビュアー:花森リド)
- 明智ナンバーワン 1
- 著者:美谷尤
- 発売日:2026年02月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784065425855
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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年3月7日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。

