おいしいは、正義
高級な料理の「おいしい」ももちろん幸せですが、愛情がこもった手料理の「うまい!」には、どうしたって敵(かな)わない気がします。作る側はその一言が嬉しくて、少し手間がかかってもまたキッチンに立ちたくなる。「おいしい」は、人と人をつなぐ言葉なのだと、改めて思わされます。
そんな“おいしい”の力を軸に物語が展開していく任侠グルメマンガ『兄貴!メシですよ』第1巻が、2026年1月22日に発売されました。
極道×家庭グルメという組み合わせからしてすでに気になりますが、読み進めるとその相性の良さに思わず唸ってしまいます。
アホニキの記憶を取り戻せ!
関東に拠点を置くヤクザ・沙鳥組。その若頭・橋矢丈一郎は、強くて渋く、義理人情に厚い“最高にカッケェ兄貴”。弟分の久留米牧葉が惚れ込むのも無理はありません。
ところがその兄貴が、何者かに撃たれてしまう。病院へ駆けつけた久留米が目にしたのは、緩んだ顔で「マッキー」と呼びかけてくる兄貴の姿でした。そう、兄貴は記憶を失ってしまったのです。

鬼神の丈と恐れられた面影はどこへやら、誕生したのは通称“アホニキ”。
犯人がまだ捕まっていないため、マッキーはアホニキの家で籠城生活を送ることになります。

そんな中、マッキーがたどり着いた、兄貴の記憶を取り戻す鍵は「手料理」でした。きっかけは、アホニキが駄々をこねるように言った「2日目のカレーが食べたい……!」という一言。

母に電話でアドバイスをもらい、「指3本ほどの工夫」を施して作った“出来立てなのに2日目っぽいカレー”を口にした瞬間、兄貴は一瞬だけ、あの渋くてカッコイイ姿を取り戻します。


料理が、閉ざされた記憶の扉をノックする。その展開が熱くて、そしてどこか愛おしいのです。
知恵袋的ご家庭グルメ、やってみたくなる
本作の魅力はストーリーだけではありません。マッキー母直伝の2日目カレーが、とにかくおいしそうで、読んでいると自然とお腹が空いてきます。


これは試してみるしかない、と我が家のカレー好きな兄貴(夫)のために再現してみました。「指3本ほどの工夫」を守った結果、ルーを3種類使い切り、鍋いっぱいのカレーが完成(笑)。



実際に食べてみると、たしかに「辛くて甘くてトロっとしてる」! まさに2日目のカレーの味わいです。それでいて作りたてなので、にんじんやじゃがいもが崩れすぎていないのも嬉しいポイント。

我が家の兄貴も「2日目っぽい!」とご満悦で、おかわりまでしてくれました。作る側としても、これ以上ないご褒美です。
ところで、マッキーが買い出しに行かなくてもルーが3種類、具材も揃っている兄貴の家。もしかして兄貴って料理が得意なのでは……?
さらに、カレーを教えてくれたマッキー母の「お姉ちゃんを思い出すからカレーを作ってなかった」という意味深な一言も気になります。
コメディで笑わせながらも、こうした伏線がさりげなく忍ばせてあるところが、本作の奥行きです。まるで2日目のカレーのように、じわじわと味わいが増していきます。
“おいしい”が物語を動かす
おいしそうな料理と、おいしそうに食べる表情。グルメマンガの鉄板はしっかり押さえつつ、兄貴とマッキーの掛け合いはテンポよく、まるでコントのように軽快です。マッキーに叱られて泣きそうになる兄貴や、駄々をこねる兄貴の姿が、なんとも愛おしい。

そして、アホニキや下っ端たちに振り回されながらも、みんなのために動き続けるマッキーの優しさが胸に沁みます。


なぜ兄貴は狙われたのか。犯人は誰なのか。任侠ものとしての物語も少しずつ動き始めた第1巻ですが、本作の核にあるのはやはり「おいしい」でつながる関係性です。
本作で描かれているのは、ただのグルメではありません。
「おいしい」は、兄貴とマッキーの関係をつなぎ直す言葉であり、失われた記憶を呼び戻す鍵であり、止まりかけた物語を再び動かす引き金でもあります。
ひと皿の料理が、心をほどき、人をつなぎ、未来を動かしていく。
『兄貴!メシですよ』は、“おいしい”が物語を前に進める任侠グルメマンガ。
読んだあと、きっと誰かと「うまい」と言い合いたくなる一冊です。
*
(レビュアー:Micha)
- 兄貴!メシですよ vol.1
- 著者:やじま冬美
- 発売日:2026年01月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784065415955
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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年3月1日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。
