2月6日(金)、本屋大賞実行委員会より、23回目となる「2026年本屋大賞」のノミネート10作品が発表されました。
ほんのひきだしでは、これらノミネート作品の中から注目作品を短期連載形式でご紹介します。第1弾は、櫻田智也さんの『失われた貌』(新潮社)です。
本書は、「伏線回収が気持ちいい」「すべての登場人物が立っている」「これぞミステリを読む喜び!」など、発売直後から話題沸騰となり、2026年末のミステリランキングで3冠を達成した作品(※)です。これまでも異例の重版を繰り返してきましたが、累計発行部数は10万部を突破しています。

多くの書店店頭では、ノミネート作品を集めたフェアを実施していますので、ぜひ、書店店頭に足を運んで本書を手に取ってみてください。
【※】「ミステリが読みたい! 2026年版」(ハヤカワミステリマガジン2026年1月号)国内篇第1位、「週刊文春ミステリーベスト10 2025 国内部門」(週刊文春2025年12月11日号)第1位、『このミステリーがすごい! 2026年版』国内編第1位
【Vol.1】櫻田智也『失われた貌』
【本書のおすすめポイント】~担当編集者より~
櫻田智也さんの最初の本、『サーチライトと誘蛾灯』を読んでまず思ったのは、「他人から見れば取るに足らない出来事だけれど、その人にとってはとても大きな意味を持つ、というのを書くのが上手い人だな」ということでした。
実際に起きた客観的事実は大したことではないけれど、でも当人にとっては重要な意味を持ち、それがあるから今までやって来られた、とか、リベンジのために生きている、というような、あるいはそこまでいかなくとも、近い感覚の思い出を胸に秘めている人は、案外多いのではないでしょうか。
過去と切り離された今はなく、自分の人生は以前から続く道の延長線上に存在している。そして、過去の出来事は変えられないけれど、きちんと向き合うことで、その後と今は変えることができる。
櫻田智也の小説を読むと、いつもそんなことを思います。
『失われた貌』はミステリなので、「伏線回収」という言い方をしていますが、別の言い方をすれば、「エピソードの呼応」です。過去の経験によりさまざまな悩みや孤独を抱えた人たちが、それに縛られ、足掻いています。警察官も例外ではありません。
人物同士の関係性の横、現在と過去という時間軸の縦、縦横のエピソードが絡み合い、物語は複雑な様相を呈していきますが、それを少しずつ丁寧に解きほぐしていく手腕は、息をのむほどに鮮やかです。
そして、それらをほどく鍵になるのは、個々の人物の葛藤や人間関係で、ミステリとしての謎解きと、濃密な人間ドラマが、奇跡のバランスで融合しています。
300ページほどの作品ですが、「この長さで、これだけ高密度の物語が書けるのか」と唸らされることでしょう。
発売時、「ミステリに求めるすべてがここにある」と謳っていましたが、言い直させて下さい。
エンターテインメントに求めるすべてが、ここにある。
『失われた貌』

著者:櫻田智也
発売日:2025年8月
発行所:新潮社
定価:1,980円(税込)
ISBN:9784103564119
【あらすじ】
山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。事件報道後、警察署に小学生が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は十年前に失踪し、失踪宣告を受けていた。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を飲み込んで、事件は思いがけない方向へ膨らみ始める。(新潮社公式サイト『失われた貌』より)
著者紹介:櫻田智也

【プロフィール】
櫻田智也(さくらだ・ともや)。1977年生まれ。北海道出身。2013年、昆虫好きの青年・魞沢泉を主人公とした「サーチライトと誘蛾灯」で第10回ミステリーズ!新人賞を受賞しデビュー。2017年に、受賞作を表題作とした連作短編集が刊行された。2021年には、魞沢泉シリーズの2冊目『蟬かえる』で、第74回日本推理作家協会賞と第21回本格ミステリ大賞をダブル受賞。他著に、『六色の蛹』(いずれも東京創元社)がある。本書は、初の長編となる。
【ノミネート10作品(書名五十音順)】
| 書 名 | 著 者 | 出版社 |
| 暁星 | 湊かなえ | 双葉社 |
| ありか | 瀬尾まいこ | 水鈴社 |
| イン・ザ・メガチャーチ | 朝井リョウ | 日経BP/日本経済新聞出版 |
| 失われた貌 | 櫻田智也 | 新潮社 |
| エピクロスの処方箋 | 夏川草介 | 水鈴社 |
| 殺し屋の営業術 | 野宮有 | 講談社 |
| さよならジャバウォック | 伊坂幸太郎 | 双葉社 |
| 熟柿 | 佐藤正午 | KADOKAWA |
| 探偵小石は恋しない | 森バジル | 小学館 |
| PRIZE―プライズ― | 村山由佳 | 文藝春秋 |
本屋大賞
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含む)で働く書店員の投票で決定するものです。過去1年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。
今回で23回目となる本屋大賞ですが、2025年12月1日(月)~2026年1月4日(日)に一次投票が行われ、全国490書店・698人の書店員が投票しました。その集計の結果、上位10作品を「2026年本屋大賞」ノミネート作品として決定。2月6日(金)~3月1日(日)まで二次投票を受け付け、その投票の結果、大賞作が決定されます。大賞は4月9日(木)に発表されます。

