手掛けたPOPから店頭でいくつものベストセラーを生み出し、“POP王”の異名で知られる内田剛さん。そのPOP制作の極意と、店頭で設置する際のポイントについて、教えていただきました。
1.POPの意義
POPは万能ではありません。POPを付けさえすれば売れると誤解されやすいですが、周りの本を邪魔するし棚の美観を損なうこともあるので逆に無い方がいい場合もあります。あくまでも主役は本です。POPは本の長所を伸ばして短所を補うサポーターに過ぎないのです。なぜその本にPOPが必要なのかからスタートしましょう。
2.POP作成のポイント
学校や図書館でPOPのワークショップをする際に、必ず伝える5つの言葉があります。POP作成のポイントはこれに尽きるかもしれません。
①アクセント(accent)……強調する
②インパクト(impact)……印象を与える
③ウェルカム(welcome)……作品に寄り添う
④エンジョイ(enjoy)……楽しむ
⑤オリジナル(original)……自分の言葉で書く
①~⑤をひとまとめにして、勝手ながらPOP作成のアイウエオと呼んでいます。どれも重要なのですが、一番大事なことは最初に書いてあるのです。①と②の頭文字をとってアイ=愛、つまりこの本の良さをどうしても伝えたいという愛情がもっとも大切です。
よく「POPを書きたいのですが、うまく書けないのです。どうしたらいいでしょうか?」という質問を受けますが、上手い下手よりもいかに気持ちがこもっているかが重要。それが使えるPOPの分かれ道。熱意さえあればその想いは必ず伝わります。
▼作品や作者に寄り添うだけでなく、文学作品に対する想いも伝わってくるPOP
▼印象の強い惹句で目を引き、散りばめられたキーワードがインパクトを与える
▼文字を主体にしたデザインでタイトルを強調。右側に描かれた“ピース”をひとつだけ赤くぬることで際立たせている
3.何を、どう伝えるか?
POPに正解はありません。個性の勝負。いかに自己流を見出すかがポイントです。
POPはある程度のサイズが決まっていますから、一枚の紙でできることには限界しかありません。色、カタチ、デザイン、キャッチコピー、コメントなど、ここはぜひ皆さんの得意技を活かしてください。
手書きを推奨しますが手書き以外にも方法はあります。カラフルなデザインも目立ちますが、白黒でも目立つPOPはあります。文章の部分は自分で浮かばなくとも本の中に書いてあることが多いです。その際にページ数を書いておけば、読書の気を引く立ち読みポイントともなります。
出版社作成のPOPは光らせる、めくらせる、触らせるなど五感に訴えるPOPも増えてきましたが、いかにお客様を立ち止まらせることができるかがPOPの第一目的。個性的な工夫を凝らしてみてください。
個人的な意見ですが、一冊の本には最低2枚のPOPが必要と考えています。
①シンプルなデザイン
② 凝ったデザイン
基本的に①は駅立地など顧客の足の早い店舗で、②はある程度規模のある比較的じっくり型の店舗で有効と考えられます。同じ店でも繁忙時間か否かで使い分けもできます。
小説の事例で言えば①は泣ける、笑えるなどの効能をワンフレーズで言い切ったもの。②は作品の内容、読みどころに触れたPOPです。
POP作成の際には①②の2パターンでの作成も念頭に入れておいてください。
▼シンプルなキャッチと勢いのある筆致でお客様の目を惹きつける。完全に表紙を隠してしまわないよう、棚の中では多面の1冊に付けるのもポイント
▼タイトルと著者名がパッと目に入るPOP。5色の画用紙を使い、表紙とリンクするような色鮮やかなデザインとなっている
▼2点とも、作品の内容に踏み込み、主観も交えた“じっくり読ませる”タイプ。平台の多面展開にはPOPもインパクトのあるものにして、店舗のオススメであることをしっかりアピール
4.上達のコツ
千本ノックならぬ千枚POPではありませんが、とにかく数を書いてみることをお勧めします。書こうと思えば一冊の本にも何枚ものPOPが書けます。朝昼晩、出勤日や休日など気分次第で出来映えも変化します。その違いも楽しみましょう。
注意すべきはたくさんのPOPを書くのは良いですが、店頭に並べ過ぎないこと。どれが本当のオススメか焦点がぼやけてしまいますので、厳選して掲示してください。また本と同様にPOPも生き物ですから、鮮度があります。疲れる前に定期的に取り替えましょう。売れ方が良くなればそのデザインが正解です。
最後に一言。とにかく楽しんでPOPにチャレンジしてください。書かされたPOPは一発で読者にわかります。キレイ過ぎるPOPもスルーされがちで、多少のアンバランスさはご愛嬌。むしろポジティブな勢いとなって、楽しんでいる気持ちはきっと伝わります。楽しみの連鎖をぜひ書店店頭に広げていきましょう!
(「日販通信」2020年5月号より転載)