• ピクシブが考える「Webマンガ」の可能性――書店と作る“漫画が読まれる未来”

    2018年04月03日
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    ピクシブ株式会社 コンテンツプラットフォーム局コンテンツ事業部 プランナーリーダー 橋本千晶
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    Webマンガの今

    「本が売れない」――ここ数年、出版業界内外で繰り返し聞く言葉です。各社から発表されている資料も、その言葉を裏打ちしています。

    ここ10年ほどで、情報の取り扱いの形式は紙からデータへと急速に移行しています。手紙はメールやLINEになり、情報検索の場は図書館からインターネットへと変化しました。情報を得るために手に取る道具は、本ではなくスマートフォンになっています。そして漫画も例に漏れず、Webやアプリで読む傾向が年々強くなっています。同時にWebマンガ業界には、「読むが買わない」問題も横たわっているのです。

     

    「読むが買わない」問題とは?

    Webやアプリで何百万回も見られていて、何万人もファンがいる漫画なのに、単行本が売れない。電子書籍で売れているかといえば、それも違う。Web上での人気は、作品認知という面ではもちろん大きな武器ですが、必ずしも書籍の実売を約束するものではありません。これが、pixivコミックだけでなく他社マンガサービスも直面している大きな問題です。

    より手軽に漫画が読めるようになったからか、「読み捨て」が多くなりました。流れるツイートと同じく、たまたま出会った漫画を読んで、楽しんで、終わり。スマホでいつでもどこでも気軽に読める一方で、読者と作品との関係が刹那的になりました。

    ただ、すべての漫画がそうだというわけではありません。Webの人気以上に書籍が売れる作品もあります。私はそこに希望を見出しています。

     

    変わる単行本消費のかたち

    作画が丁寧な作品は、Webでの評価以上に単行本が売れている気がします。逆に4コマ漫画などさらっとした読み味のものは、読んで楽しんで、そこで終わってしまうからか、Webでの評価に対して単行本の実売は苦戦している印象です。作画の美しい作品が売れやすいのは、その作家に対する尊敬があり、その本を持つことが「イケてる」と感じられるからだと思います。

    読みたいから買うのではなく、作家や作品のファンだから買う。その単行本を所持している自分を想像して買う。「単行本を買う」という行為は、「読みたい」ではなく「物として欲しい」、いわば所有欲に紐づいていると私は感じます。ある意味、誰もが雑誌で漫画を読んだ時代に近いのかもしれません。

    私も「週刊少年ジャンプ」を毎週余すところなく読んでいましたし、好きな漫画がたくさんありました。でも単行本を買っていたのは、その中で本当に大好きないくつかの作品です。本棚に全巻揃っているさまを眺め、時に友人に貸し、新刊が出れば必ず買いました。読みたいという欲求のためではなく、単純に買うものだと思って買っていたのです。ストーリーをすべて覚えてしまうくらい雑誌で繰り返し読んだ漫画を、また読みたかったというより、「買う」行為を求めていました。同じような経験のある方は、少なくないのではないでしょうか。

    今はWebという広大な雑誌の中で、より強固なファンを獲得することが求められていると思います。情報量が多く、エンタメの選択肢も広がった今、先にも述べたように作品と読者の関係は希薄化してしまっています。それを強固に結び直すのが、今の私たちの課題のひとつです。

     

    ファンを獲得するためのWeb

    誰でも簡単に漫画を公開できるようになった現在、技術の高い作品はそれだけで強いファンを獲得しています。ほかにも、キャラクターが優れているもの、おしゃれなもの、ストーリーがおもしろいものなど、作品によって魅力はさまざまです。

    以前から「Webで公開していると単行本の売上が落ちる」と言われてきました。私もその部分はあると認識しています。漫画自体はWebで読めて、プラスアルファの描き下ろしエピソードを単行本で発表するかたちが良いと思います。単行本が発売されると、第1話以外はすべて掲載を終了してしまう場合が多いですが、この方法が良いかどうかは正直疑問です。果たして1話だけで、一読者をファンへと昇華できるでしょうか? 作品をたくさんの人に広く見せて、強固なファンを獲得するための場所を作ること。それがWebの使命だと私は考えています。

     

    「読む」Webと、「手に入れる」書店の連携

    Webとリアルは対立概念のように扱われがちです。事実、対立する部分もあるでしょう。ただ漫画については、Webと書店は役割分担をするべきだと思います。

    Webは情報を広げることが得意です。新しい作品との出会いの場を作り、読ませ、それを拡散できる状態を作ります。一方で、物質的な価値や体験を提供することは苦手と言わざるを得ません。その部分こそを、読者と作品のリアルタッチポイントである書店に期待しています。

    作家・出版社が作品を作り、Webが多くの読者にその作品を届け、書店は読者に体験を手渡す。出版社が提供する作品は今後も進化していくでしょうし、Webも進化を止めません。書店が提供する体験も「単行本を買う」体験から進化していくことになると思います。

    たとえばサイン会、店頭プレゼント、「くじ」なども書店で生み出される体験のひとつです。出版社と書店とWebの三者が連携を強め、進化できれば、漫画が読まれる未来を創ることは可能なのではないでしょうか。

     

    文・ピクシブ株式会社 コンテンツプラットフォーム局コンテンツ事業部
    プランナーリーダー 橋本千晶

    ※本記事は、「日販通信」2018年3月号に掲載された「特集 コミックの売り方改革! マーケットが求める売場を作る」の転載です。


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