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  • “人殺しの組合にはいられない”―「JR 歪んだ労使関係」が書籍化 『トラジャ』を買ったのは、どんな人たちなのか?

    2019年10月22日
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    古幡瑞穂(日販 マーケティング部)
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    トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉
    著者:西岡研介
    発売日:2019年10月
    発行所:東洋経済新報社
    価格:2,640円(税込)
    ISBNコード:9784492223918

    HONZメンバーをはじめ、身近なノンフィクション読みから「絶対読んだ方がいい!」とオススメされています。これからノンフィクション本のアワードやベストセラーランキングに入ってくるであろう一冊、『トラジャ』です。

    「週刊東洋経済」にて集中連載された「JR 歪んだ労使関係」をもとにした単行本で、JR労組に起こった労使問題を中心に、その裏側を暴き出したノンフィクション。なお、この前日譚である『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』で、著者は講談社ノンフィクション賞を受賞しています。

    マングローブ
    著者:西岡研介
    発売日:2007年06月
    発行所:講談社
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784062140041

    『マングローブ』の出版を巡っては、連載誌だった「週刊現代」がJR東日本の中吊り広告の掲出を拒否されるなど、大きな話題になりました。同書の刊行から10年以上が経ちましたが、『トラジャ』も今じわじわと売れだしています。

    発売から間もないため、購買者クラスタはまだ、しっかり分析できるレベルに達していません。しかし、テーマがテーマだけに団塊の世代が多いかと思いきや、40~50代の出足がいいようです。この読者層はかなりノンフィクション本を読み込んでいるとみられ、短期間に多くの本を購入している方が多いようです。

    なお、『トラジャ』購入者がここ3か月間に購入している本はこちらです。

    『トラジャ』併読本ランキング トップ10
    ・第1位『暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』(牧久/小学館)
    ・第2位『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅/岩波書店)
    ・第3位『続 昭和の怪物 七つの謎』(保阪正康/講談社)
    ・第4位『ルポ トランプ王国2』(金成隆一/岩波書店)
    ・〃『大審問官スターリン』(亀山郁夫/岩波書店)
    ・〃『ノモンハン 責任なき戦い』(田中雄一/講談社)
    ・〃『海峡に立つ』(許永中/小学館)
    ・〃『内閣情報調査室』(今井良/幻冬舎)
    ・〃『つけびの村』(高橋ユキ/晶文社)
    ・〃『新聞という病』(門田隆将/産経新聞出版)

    暴君
    著者:牧久
    発売日:2019年04月
    発行所:小学館
    価格:2,200円(税込)
    ISBNコード:9784093886659

    ダントツに売れていたのが『暴君』。

    JR東労組委員長であり、革マル派の実質的指導者ともいわれた松崎明さん。「JRの妖怪」と呼ばれ、巨大な影響力を持った男の評伝です。

    なんと『トラジャ』読者の半数が購入しているという驚異的な併読率! 定期購読者の多い雑誌でも、なかなかここまでの数字は出ません。

     

    骨太ノンフィクションがズラリ! 併読本から注目タイトルをピックアップ

    『暴君』以外にも、併読本リストには骨太のノンフィクションが勢揃い。注目したい本をいくつか紹介します。

    教養としてのヤクザ
    著者:溝口敦 鈴木智彦(フリーライター)
    発売日:2019年10月
    発行所:小学館
    価格:880円(税込)
    ISBNコード:9784098253562

    「芸能界と裏社会のつながり」が話題になったからか、元組長、元●●会系若頭……といった肩書きを持つ著者が増え、関連書の出版が相次いでいます。

    「あの芸人にも読ませたい」というフレーズが帯に踊る本書は、実際にヤクザに刺されたことでも有名な溝口敦さんと、『サカナとヤクザ』で一躍有名になった鈴木智彦さんによる集中講義。

    襲撃
    著者:大下英治
    発売日:2019年10月
    発行所:青志社
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784865900903

    「力道山刺殺事件」をはじめ数々の“襲撃事件”に注目し、その主役たちに直接取材したのが『襲撃 裏社会で最も恐れられた男たち』。こちらもチェックしておきたい一冊です。

    外国人ヒットマン
    著者:一橋文哉
    発売日:2019年09月
    発行所:KADOKAWA
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784041059296

    まだ記憶に新しい「餃子の王将」社長射殺事件や、世田谷一家惨殺事件。これら未解決事件の裏には国際的な犯罪ネットワークがあると著者は説きます。

    独自ルートでの取材により、実行犯と目される人物の足跡をたどり、アジアにのさばる犯罪組織の実態に迫った一冊。

    水道が危ない
    著者:菅沼栄一郎 菊池明敏
    発売日:2019年10月
    発行所:朝日新聞出版
    価格:869円(税込)
    ISBNコード:9784022950390

    未曾有の水害を受け、防災だけでなく、治水や水道事業にも注目が集まっています。

    このタイミングで出版された本書は、水道の危機をリポートした一冊。上水道だけでなく下水道も水道のうち。問題は過疎地だけではないようです。当たり前に存在していた「水」と「安全」について、もう一度考えてみるよい時期かもしれません。

    電源防衛戦争
    著者:田中聡
    発売日:2019年10月
    発行所:亜紀書房
    価格:1,980円(税込)
    ISBNコード:9784750516172

    これも、今こそ読みたいノンフィクション。「スイッチをつければ電気がつく」が当たり前になっている現代ですが、電気を作ることと売ることについては、長い年月にわたって多くの紛争がありました。

    高度成長期の日本に欠かすことのできなかったエネルギー、電力がどう作られ、どう拡大していったのか。それに関わった人物に焦点をあてた戦後史です。

    災害時に世の中を埋め尽くしたさまざまな思いや意見を見ていると、ファクトにもとづく検証と、それを書物の形にアーカイブしていくことの重要性をひしひしと感じます。先人たちの努力も、判断の失敗も、時代の流れにともなって評価は変わっていくでしょう。だからこそ、その時代にまとめられたノンフィクションやルポルタージュが必要だと思うのです。

    被害の全貌が未だ明らかにならない台風の大きな爪痕を見ながら、そんなことを考えています。とにかく今は、大きな被害を受けた輸送網の一日も早い正常化を祈ってやみません。

    ※記事内の売上推移は「日販 オープンネットワークWIN調べ」、購入者クラスタ分析および併読本に関する調査はすべて「日販 WIN+調べ」です。
    ※「HONZ」で2019年10月15日に公開された記事に、一部編集を加えています。




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