'); }else{ document.write(''); } //-->
世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』の評伝作家がダ・ヴィンチの遺した全7200枚の自筆ノートをもとに執筆。その天才性と生涯のすべてを描き切った、空前絶後の決定版。「モナリザ」「最後の晩餐」――没後500年、最難関の謎が、遂に解かれる。
オールカラー・図版144点を贅沢にも収録。本作に惚れ込んだレオナルド・ディカプリオによる製作・主演で映画も決定。
(文藝春秋BOOKS『レオナルド・ダ・ヴィンチ』より)
2019年は、レオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年にあたる年だそうです。
天才といわれる数々の仕事、謎の多い姿。科学が進化すればするほど、彼の残した業績が再評価される機会は増えています。謎の多い天才の生涯を伝記として記したのが、ウォルター・アイザックソン。世界的ベストセラーとなった『スティーブ・ジョブズ』の著者としても有名です。
今回のテーマは、3月末の発売以降、書評で取り上げられ、売れ続けている『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。
レオナルド・ダ・ヴィンチはそもそも、さまざまな分野でその天才ぶりを発揮した人物で、昨今重要視されている「STEM」を体現しているといっても過言ではありません。そんな天才の伝記には、どういった方が興味を持って手に取っているのでしょうか?
まずは読者の年齢層から見ていきます。『レオナルド・ダ・ヴィンチ』上巻を購入したのは下記のとおり。
男性が読者の75%程度を占め、50~60代の男性がコアな読者層となっています。比較的高額な本ですが、10代・20代の読者も見られました。
そして、この読者が過去2年以内に購入したもののトップ10がこちら。フィクションとノンフィクションが入り交じるリストになりました。
第1位
『レオナルド・ダ・ヴィンチ(下)』(ウォルター・アイザックソン/文藝春秋)第2位
『オリジン(下)』(ダン・ブラウン/KADOKAWA)第3位
『オリジン(上)』(ダン・ブラウン/KADOKAWA)第4位
『ギリシア人の物語(3)』(塩野七生/新潮社)第5位
『FACTFULNESS』(ハンス・ロスリング/日経BP社発行、日経BPマーケティング発売)
『漫画 君たちはどう生きるか』(原作:吉野源三郎、漫画:羽賀翔一/マガジンハウス)第7位
『ホモ・デウス(上)』(ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社)第8位
『日本史の内幕』(磯田道史/中央公論新社)第9位
『ホモ・デウス(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社)第10位
『日本国紀』(百田尚樹/幻冬舎)
人気が集中した本には比較的重厚な本が多く、大物の翻訳本や、上下巻の長大な小説などが目立ちます。ジャンルとしては歴史、ミステリなどがよく読まれているようです。
『ギリシア人の物語』『ホモ・デウス』など、年末年始等の長い休みにじっくり腰を据えて読まれる本が多くラインナップされていることから、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』は、年末年始に読む本としてもおすすめできる本になりそうです(まあ、ちょっと気の早すぎる話ではありますが……)。
もう一つ興味深かったのが、『オリジン』が上位にランクインしていること。一番の理由は「ほぼ同時期に発売された」ということなのでしょうが、本作はラングドン教授を主人公としたシリーズの最新作であり、同シリーズでは第2作『ダ・ヴィンチ・コード』が有名です。
ラングドンシリーズの読者が、同作の流れから「ダ・ヴィンチの謎」に興味を持った……という流れも考えられるのではないでしょうか。
それでは最後に、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』読者の併読本から、気になる本をいくつか紹介していきます。
第161回直木賞候補にもなっている、原田マハさんの美術小説。日本に本格的な西洋美術館を作ろうと奔走した「松方幸次郎」の人生を描いています。
原田さん本人の念願かなって、国立西洋美術館60周年の記念イヤーに発売されたという想いのこもった作品でもある本作。「松方コレクション」をはじめ、登場人物に史実に即した話も多いため、ノンフィクション読者にもおすすめです。きっと国立西洋美術館に足を運びたくなるはず。
「本文批評」という学問があるそうで、現存する写本から元来の形を探るのがその内容なのだそうですが、この本がテーマにしているのが〈聖書〉。この本は、「“世界で最も読まれている本”とされる聖書にも、無数の書き換えがされてきた」ということを教えてくれています。
書き換えは、意図的であったり偶発的であったりさまざまだそうですが、写本の照らし合わせや解読によって、聖書の「元の形」を探っていく内容となっています。電子書籍隆盛の世で、「紙に定着させアーカイブすること」の意味を考えてみたくなる一冊です。
ちょうど1年前、「1922年~1923年の間に、アインシュタインが世界旅行をした際の旅行記が発見された」というニュースが報じられました。しかし、そこには人種差別的な記述があるなどの気になる話も。特に中国に関する記述が極めて差別的だということで、大きな批判も呼んでいます。
日本については比較的好意的な記述が目立つそうですが、公表の意図がなかっただけに、本書は、アインシュタインが何をどう感じたかを素直になぞれる作品になっているともいえそうです。
こちらは「パンデミック」を題材にした小説。ダン・ブラウンが扱ったテーマとの類似性からか、多くの読者が手に取っています。
表題の「サリエル」は、小説に登場する新型ウイルスの名前です。突然発生したこのウイルスは、離島の住民を全員死亡させるという大きな被害をもたらします。
いったい誰が作ったウイルスなのか? テロなのだろうか? 本州に拡大していくなか、パンデミックは回避できるのか? 近未来を思わせる注目の小説です。
今の時代に残っている歴史は、いわば「勝者の歴史」。都合が悪い真実が覆い隠されている場合も多くあるといわれています。
こういった歴史の謎に、最新の生命科学から迫ったのがこの本。歴史や謎に興味がある人、生命科学に興味がある人、どちらも楽しめる一冊となっています。
「ツタンカーメンの母親は誰だったのか」「あの人の死因は何だったのか」。このように見ていくと、まだまだ“歴史の新発見”が出てきそうでワクワクします。
誰もが知る有名人になると、「見られること」を意図していなかった手記もたやすく世にさらされてしまうのがちょっと気の毒です。でもそのおかげで、我々は天才「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の思考や苦労に触れることができるのだとも思います。
「活字離れ」という言葉に流されてしまいがちですが、上下巻のこれだけ重厚な作品を、これだけ多くの方が手に取っていること、文学や芸術に興味を持っていることを嬉しく感じました。「今年を代表するノンフィクションになるだろう」との評も多い『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。じっくり読んでみたい作品です。
※記事内の購入者クラスタ分析および併読本に関する調査は、すべて「日販 WIN+調べ」です。
※「HONZ」で2019年7月1日に公開された記事に、一部編集を加えています。